振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

川之江の映画館

(写真)JR予讃線川之江駅

2024年(令和6年)8月、愛媛県四国中央市川之江市街地(旧川之江市)を訪れました。

かつて川之江市街地には映画館「川之江新栄館」「川之江栄館」「川之江大劇」があり、同じ旧川之江市の金生市街地には「川之江松竹館」「金生映画劇場」がありました。「伊予三島の映画館」に続きます。

 

1. 川之江を訪れる

1.1 川之江の商店街

川之江商店街

川之江市街地には「T」字型に全蓋式アーケード商店街が形成されています。JR予讃線川之江駅を東端として、約280mに渡って東西に延びているのが川之江商店街です。

駅の正面に全蓋式アーケードが構築されているのは地方都市では珍しいように思われます。全蓋式アーケードを通らずに川之江駅にアクセスするのは難しく、川之江商店街は車も通行することができるようになっています。

(写真)川之江商店街。

(写真)川之江商店街。奥は川之江駅

 

川之江栄町商店街

川之江商店街の途中から、約370mに渡って南北に延びているのが川之江栄町商店街です。川之江商店街のアーケードは合掌型(山型)ですが、川之江栄町商店街のアーケードはドーム型(かまぼこ型)です。現在のアーケードは1994年(平成6年)に完成した2代目であり、両商店街のデザインには統一感があります。

(写真)川之江栄町商店街。

(写真)川之江栄町商店街。

(地図)1962年の航空写真における川之江の映画館。地図・空中写真閲覧サービス

 

1.2 四国中央市川之江図書館

2003年(平成15年)11月には川之江市立図書館(現・四国中央市川之江図書館)が開館し、直後の2004年(平成16年)には合併によって四国中央市川之江図書館に改称しています。

設計者は松田平田設計であり、図書館としては沖縄県那覇市沖縄県立図書館(2018年開館)、東京都板橋区板橋区立中央図書館(2021年開館)、新潟県長岡市米百俵プレイス(2023年開館)なども手掛けています。

(写真)四国中央市川之江図書館。

 

四国中央市大王製紙企業城下町であり、紙・パルプ製品の製造品出荷額は合併時から20年近く全国第1位を続けています。

また、映画『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』で知られる書道パフォーマンス甲子園の発祥地&開催地でもあることから、四国中央市では「紙のまち」という言葉をよく目にしました。

川之江図書館は紙を想起させる白くて軽やかな外観であり、東側開口部には和紙入り合わせガラスが採用されています。書道パフォーマンス甲子園で製作された作品は市内の公共施設に展示されており、川之江図書館入口近くの雑誌コーナーには八千代松陰高校書道部の作品が展示されていました。

(写真)書道パフォーマンス甲子園の作品が展示された雑誌コーナー。

(写真)一般書の書架。奥は郷土資料コーナー。

 

2. 川之江の映画館

1960年の映画館名簿

(写真)川之江市に4館が掲載されている『映画便覧 1960』時事通信社、1960年。

 

1977年の映画館名簿

(写真)川之江市に2館が掲載されている『映画館名簿 1977』時事映画通信社、1977年。

 

2.1 川之江大劇(1959年頃-1966年頃)

所在地 : 愛媛県川之江市川之江町2040(1966年)
開館年 : 1959年頃
閉館年 : 1966年頃
1959年の映画館名簿には掲載されていない。1960年・1963年・1966年の映画館名簿では「川之江大劇」。1967年の映画館名簿には掲載されていない。

 

2.2 川之江栄館(戦前-1977年頃)

所在地 : 愛媛県川之江市駅前通(1977年)
開館年 : 1936年以後1941年以前
閉館年 : 1977年頃
『全国映画館総覧 1955』には開館年が掲載されていない。1936年の映画館名簿には掲載されていない。1941年・1943年・1947年・1950年・1953年・1955年・1958年・1960年・1963年・1964年の映画館名簿では「栄館」。1966年・1969年・1973年・1975年・1976年・1977年の映画館名簿では「川之江栄館」。1978年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は川之江駅北西140mにある駐車場など。

(写真)川之江栄館跡地。

(写真)川之江栄館跡地(左)と川之江栄町商店街のアーケード北端部。

 

2.3 川之江新栄館(八千代館、1911年-1983年頃)

所在地 : 愛媛県川之江市新栄町2026-1(1983年)
開館年 : 1911年
閉館年 : 1983年頃
『全国映画館総覧 1955』には開館年が掲載されていない。1950年の映画館名簿には掲載されていない。1953年・1955年の映画館名簿では「八千代座」。1958年・1960年・1963年の映画館では「川之江東映」。1964年・1966年・1969年・1973年・1975年・1978年・1980年・1982年・1983年の映画館名簿では「川之江新栄館」。1984年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「広島銀行川之江支店」北東30mの「丸福商店」が入る建物。

(写真)昭和20年代の八千代館。『目で見る 川之江伊予三島・宇摩の100年』郷土出版社、2004年。

(写真)時期不明の新栄館。真鍋照男『ふるさと今昔』真鍋照男、1993年。

(写真)川之江新栄館跡地(左)と川之江栄町商店街のアーケード南端部。

 

川之江の映画館について調べたことは「愛媛県の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、跡地については「消えた映画館の記憶地図(愛媛県版)」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

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