振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

天龍村図書館を訪れる

f:id:AyC:20181229200835j:plain

(写真)天龍村文化センター なんでも館。図書館が入っている。

2018年12月、長野県下伊那郡天龍村天龍村図書館を訪れました。

 

1. 天龍村を訪れる

天龍村は長野県の南端部にある自治体です。人口は約1,200人ということで、愛知県最小の豊根村とほぼ同じ。その豊根村静岡県浜松市天竜区と境界を接しています。

中心地区の平岡は天竜川左岸(東岸)の斜面に形成された集落であり、地区の標高は260m(天竜川にかかる平岡橋)から434m(地区最高所の老人ホーム)まで幅広い。天龍村役場は308m地点にあり、愛知県奥三河設楽町田口や豊根村下黒川などの諸地区よりも低いです。南信ではもっとも標高が低い地域のようで、村長のブログには「県下で最も温暖な地」とあります。

f:id:AyC:20181229201658p:plain

(地図)長野・愛知・静岡・岐阜の県境地域における天龍村の位置。©OpenStreetMap contributor。

f:id:AyC:20181229202401j:plain

(写真)天竜川沿いの斜面に形成された平岡。中央下が天竜中学校。中学校の左上の茶色い建物が天龍村文化センター なんでも館。なんでも館左の白い建物が天龍村役場。なんでも館上の白い建物が龍泉閣。右端は平岡橋。

 

JR飯田線平岡駅の駅舎と一体となった、ふれあいステーション龍泉閣という宿泊施設がありました。村営っぽい。平岡駅から100mの場所には図書館が入っている天龍村文化センターなんでも館があり、直線距離で文化センターの100m先には天龍村役場が、直線距離で村役場の100m先には天龍村天竜中学校があります。それぞれの距離はたいしたことないけれど、平岡駅天竜中学校の間には標高差50mもの高低差があります。

f:id:AyC:20181229200853j:plainf:id:AyC:20181229200854j:plainf:id:AyC:20181229200901j:plain

(左)JR飯田線平岡駅。背後は龍泉閣。(中)平岡駅と龍泉閣の外観。(右)平岡駅待合所と龍泉閣フロント。

f:id:AyC:20181229200942j:plainf:id:AyC:20181229200947j:plainf:id:AyC:20181229200949j:plain

 (左)天龍村役場。(中)天龍村天竜中学校。(右)天龍村天竜小学校。

 

JR飯田線の線路と平行に国道418号が通っており、国道に沿って商店街が形成されて今す。この国道は地区中心部を走るにもかかわらず、バイパス等は整備されていません。ダムや発電所に向かうトラックはどうしてるのかな。交通量はそれほど多くなく、天龍村には信号が1つもないそうです。

f:id:AyC:20181229201013j:plainf:id:AyC:20181229201017j:plain

(写真)天龍村中心部。国道418号線

 

フードセンター東京堂、満島食糧販売店、大西商店、尾張屋、吉澤食料品店、武川商店など、個人経営の食料雑貨店は村の規模に不釣り合いなほど多い印象。チェーンのスーパーの類はありませんでした。食堂の類も見かけませんでしたが、ふれあいステーション龍泉閣にレストランがあります。

天龍村の人口がピークを迎えたのは、8,000人を超えた1950年。映画最盛期の映画館名簿を見ると、『映画便覧 1960』では天龍村に「満島劇場」が、『映画便覧 1963』では天龍村に「平岡劇場」があったことが確認できます。おそらく同一施設でしょう。この映画館についての詳細は定かではありませんが、国道418号沿いにあった廃業したパチンコ店「新天地平岡」が怪しいと感じました。

f:id:AyC:20181229201025j:plainf:id:AyC:20181229201029j:plain

 (左)食料雑貨店「フードセンター東京堂」。(右)廃業したパチンコ店「新天地平岡」。

 

天龍村といえば平岡ダム - Wikipedia平岡駅からは2km弱であり、鉄道駅から歩いて行けるダムです。戦中に建設された際には中国人が建設に従事したそうで、ダムに向かう長野県道・愛知県道・静岡県道1号飯田富山佐久間線 - Wikipedia沿いにはひっそりと慰霊碑が建てられていました。

平岡の集落があるのは平岡ダムと平岡発電所の間ということで、集落の前を流れる天竜川の水量はほぼゼロ。水流がないので涸れ川のようにも見えます

f:id:AyC:20181229201045j:plainf:id:AyC:20181229201049j:plain

(左)県道1号。(右)平岡ダム。

f:id:AyC:20181229201153j:plainf:id:AyC:20181229201157j:plain

(左)県道1号から見た天竜川と平岡。(右)斜面の茶畑。

f:id:AyC:20181229201054j:plainf:id:AyC:20181229201059j:plain

 (写真)河岸から見た天竜川。

2. 天龍村図書館を訪れる

天龍村図書館は「公共図書館」ではありますが、図書館公式サイトなどはないし、天龍村当局がウェブ上で公開している情報は「文化センターなんでも館のなかにあります。毎週月曜日・祝日・年末年始を除き開館しています」(天龍村公式サイト)だけだと思われます。開館時間の情報はなく、年末年始の期間についての情報もありません。『平成30年度長野県公共図書館概況』によると開館時間は開館時間は「10時-18時」だそう。年末年始の期間について天龍村教育委員会に電話して確認したところ、「12月29日~」だそうで、「年内最終日の12月28日は短縮営業で10時-17時15分開館」とのことでした。

f:id:AyC:20181229201442j:plain

(写真)左 : 新着図書、中 : 「飯田線80周年記念特設コーナー」、右 : 地域資料。

『平成30年度長野県公共図書館概況』によると、2017年度末の蔵書数は18,898冊(14.8冊/人)とのことで、1人あたりでは南相木村(38.9冊/人)、阿南町(24.5冊/人)、下條村(23.1冊/人)、南牧村(16.1冊/人)に次ぐ高水準。しかし2017年度の個人貸出冊数は1,327冊(1.0冊/人)。長野県では根羽村(0.1冊/人)に次ぐ低水準のようです。

一般的な公共図書館と同じ週6日開館、村の中心部に立派な施設を持ちながら、これだけ数字が低いのはどうしたことかと思います。1994年の開館から20年以上経っている図書館ではありますが、その存在自体が認知されていないのかな。「高齢化率は全国2番目の高さ」というのも関係してそうですが。私がいた時間には、お話コーナーに来た年配の女性と孫、一般書を探しに来た女性がいました。

職員に館内の写真を撮りたいというと、同一施設内の教育委員会で上司に聞いてから「いいですよ」とのこと。撮影申請書のようなものはありませんでしたが、名前と住所を申告しています。

f:id:AyC:20181229201232j:plainf:id:AyC:20181229201240j:plainf:id:AyC:20181229215507j:plain

 (左)カウンター脇のソファ席。(右)地域資料。天龍村関連の新聞記事を集めたスクラップブックとかもあった。(右)中日新聞南信州新聞。この辺では中日新聞が読まれてるんですね。

f:id:AyC:20181229215546j:plainf:id:AyC:20181229215549j:plain

(左)書架の奥がおはなしコーナー。館内ではWi-Fiも使えるらしい。(右)閲覧席。右奥が一般書。
f:id:AyC:20181229201245j:plainf:id:AyC:20181229215404j:plain

 (写真)一般書の書架。文芸書の書架は作家見出しが横長。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

つぐグリーンプラザ図書室を訪れる

f:id:AyC:20181226215629j:plain

(写真)つぐグリーンプラザ図書室の入口。

 

1. 設楽町津具(旧・津具村)を訪れる

2018年12月、愛知県北設楽郡設楽町津具(旧・北設楽郡津具村)にあるつぐグリーンプラザ図書室を訪れました。設楽町に2館ある図書室のひとつで、もう片方の設楽町民図書館は設楽町の中心地区である田口地区にあります。

大学時代以外の期間はずっと愛知県で暮らしてるのに、2016年まで愛知県北東部の北設楽郡設楽町東栄町豊根村)を訪れたことがありませんでした。しかし2017年秋には設楽町田口を、2017年冬には豊根村を、2018年夏には東栄町を訪れており、北設楽郡を訪れるのはこの2年間で4度目です。以下のブログエントリーや、私が作成したWikipedia記事も参照してください。

設楽町民図書館を訪れる - 振り返ればロバがいる - 2017年11月投稿

豊根村ふれあいセンター内図書コーナーを訪れる - 振り返ればロバがいる - 2018年1月投稿

設楽町民図書館 - Wikipedia - 2017年11月作成

東栄町体験交流館のき山学校 - Wikipedia - 2018年6月作成

f:id:AyC:20181226224050p:plain

(地図)愛知県における設楽町津具の位置。©OpenStreetMap contributor。

 

東三河地方の河川といえば豊橋市三河湾に注ぐ豊川 - Wikipediaであり、設楽町田口は豊川の上流部に位置します。しかし、旧・津具村静岡県浜松市/磐田市遠州灘に注ぐ天竜川 - Wikipedia水系の流域にあり、豊根村の上流にあたります。さらに、設楽町の中でも名倉地区は西三河地方の河川として知られる矢作川 - Wikipedia水系の流域にあり、設楽町は3つの大河川の分水界となっています。平成の大合併では分水界を超えた合併が行われたことで、このようなややこしい状況になりました。

f:id:AyC:20181226232935p:plain

(地図)奥三河の水系図と主要地区の標高。©OpenStreetMap contributor。

 

上の図を見るとわかるように、旧・津具村北設楽郡の主要な地区の中で最高所にあります。下には津具盆地、設楽町田口、豊根村の色別標高図を示しました。北設楽郡の中心地は設楽町役場がある設楽町田口ですが、津具盆地は設楽町田口や豊根村とは段違いに広く、広々とした農地が広がっています。こちらの個人サイト「津具村」に掲載されている航空写真がわかりやすい。豊根村には “山間の狭い谷に形成された貧しい山村” という印象を抱いてしまったのですが、旧・津具村にそのような印象はまったくありません。

f:id:AyC:20181226224117p:plain

(地図)津具盆地、設楽町田口、豊根村の盆地の大きさの比較。同スケール。地理院地図 色別標高図に文字追加。

 

なお、北設楽郡域のOpenStreetMapは2011年から2012年に集中的に編集されたようであり、建物の形状が表示されないGoogle mapとは雲泥の差です。「キラッと奥三河観光ナビ」のサイト内にはOpenStreetMapを紹介するページもありました。誰が主導していたのでしょうか。

f:id:AyC:20181226224900p:plain

(地図)設楽町津具におけるGoogle map(左)とOpenStreetMap(右)の比較。©OpenStreetMap contributor。

2. 設楽町津具(旧・津具村)を歩く

下津具地区

津具盆地は津具総合支所を境にして、南東の下津具地区と北西の上津具地区に分かれます。バスの終点である「下津具」停留場から下津具地区を歩き、次に上津具地区を歩き、最後につぐグリーンプラザ図書室を訪れました。

下津具地区の農地にはビニールハウスが多い。農作業をしていた方に「ビニールハウスでは何を栽培しているのか」と聞いたら「トマト」とのこと。村松農園ウェブサイト愛知県による特産品紹介によると、北設楽郡にある標高500-800mの高原では「奥三河高原トマト」というブランド名の夏秋トマトを生産しているようです。この時期は農閑期なので作物は植わっていません。

かつては下津具地区と上津具地区それぞれに小学校がありましたが、1974年に統合されて中間地点に津具村立津具小学校が開校しました。下津具小学校の校舎は半世紀近くも取り壊しを免れ、丸満産業株式会社津具工場として使われました。赤い屋根が印象的な木造平屋建ての校舎で、近年にはご当地映画『Ben-Joe』のロケ地としても使用されたそうです。旧・津具村有数のインスタ映えするスポットだったと思われますが、2018年第二四半期に取り壊されてしまったらしく、更地になっていました。残念。

f:id:AyC:20181226215738j:plainf:id:AyC:20181226215742j:plainf:id:AyC:20181226215750j:plain

(左)下津具のビニールハウス。(中)下津具小学校跡地。更地。2018年12月。(右)下津具小学校跡地。校舎取り壊し前の2011年9月。出典 : Wikimedia Commons。作者 : ESU

 

津具基幹集落センターの玄関前には「県立田口高等学校津具分校跡」の碑がありました。現在の北設楽郡にある高校は設楽町田口にある愛知県立田口高校だけですが、かつては津具村の田口高校津具分校(1965年閉校)に加えて東栄町に県立新城東高校本郷校舎(2008年閉校)がありました。

f:id:AyC:20181226220303j:plainf:id:AyC:20181226220307j:plainf:id:AyC:20181226220309j:plain

(左)津具基幹集落センター。右手前に田口高校津具分校跡の碑。(中)設楽町立津具中学校。(右)設楽町立津具小学校。

f:id:AyC:20181226220318j:plainf:id:AyC:20181226220322j:plain

(写真)寒いのでビニールハウス内でくつろぐねこ。

 

津具総合支所近くの県道沿いにはバスを待つ方が多数。重宝するサイト「東三河を歩こう」によるとこの方々が設置されたのは2016年頃のようですが、2年間で人形がまるっきり変わってるのがおもしろい。消防団の法被を着ている男性3人組が持っているのは手筒花火。飲んべえの男性が抱えている一升瓶は鹿児島の焼酎「田苑」。農作業着の女性が持っているのは五平餅。

手筒花火って東三河地方平野部だけかと思ってたら、奥三河の文化でもあるんですね。三遠南信の山間部ではよく見られる五平餅は、愛知県の山間部では飯田のような眼鏡型ではなく小判型です。観光客にちゃっかりこの地域の文化を紹介してて、このかかしの企画者はどういう方なんだろうと想像させられます。

f:id:AyC:20181226220339j:plainf:id:AyC:20181226220344j:plainf:id:AyC:20181226220348j:plain

(写真)バスを待つ村民。

 

上津具地区

上津具地区は伊那街道沿いにある集落であり、下津具地区よりも規模が大きい。上津具地区の中心部、「下町」交差点には「細野芳江記念碑」があります。この個人ブログによると、賀川豊彦の小説『一粒の麦』に登場する架空の記念碑「細野芳江のために嘉吉が建てた記念碑」を再現した、ということでしょうか。よくわからない。「下町」交差点から100mほどの場所には柳田国男の歌碑も。「海にゐて み山恋しと いふ人に つげばや津具の 旅寝がたりを」。1906年正月、静岡県の興津で詠んだ歌だそうです。柳田は奥三河が好きですね。

上津具を歩いていると、県道だけでなく町道にも丁寧に道路標識が建っているのが目に付きます。農道にも、路地のような道にも。家の裏にあるから家裏線なのかな。

f:id:AyC:20181226220751j:plainf:id:AyC:20181226220756j:plain

(左)細野芳江記念碑。(右)柳田国男の歌碑。

f:id:AyC:20181226220800j:plainf:id:AyC:20181226220802j:plain

(左)設楽町道470号寿計田線。(右)設楽町道450号家裏線。

 

1974年には津具村立上津具小学校も廃校となりました。こちらの学校敷地は工場ではなく津具スポーツ広場に転用されています。グランド脇には「上津具小学校跡」の石碑が建っていました。記憶は薄れるもの。目に見える形で痕跡が残っていることにほっとします。

津具スポーツ広場から山側に歩くと津具八幡宮があり、離れた場所からもスギの社叢が目立ちます。その中の1本「津具八幡宮の杉」は樹齢350年以上とされ、愛知県指定天然記念物となっています。

f:id:AyC:20181226220811j:plainf:id:AyC:20181226220815j:plain

(左)津具スポーツ広場。(右)石碑「上津具小学校跡」。

f:id:AyC:20181226220820j:plainf:id:AyC:20181226220828j:plain

(左)津具八幡宮。(右)「津具八幡宮の杉」。

 

上津具中心部には豊橋から飯田や伊那に向かう伊那街道が通っており、道路看板には「豊根」や「稲武」など愛知県内の地名に加えて「根羽」「飯田」など長野県内の地名もありました。現在の人口は1,200人を下回っていますが、戦後すぐの最大時には4,000人を越えており、伊那街道の拠点のひとつだったと思われます。食彩広場津具店は現在の津具唯一のスーパー、隣のファミリーファッションマルユウは津具唯一の衣料品店です。

この辺りで目立つ山といえば碁盤石山(標高1189m)と井山(1195m)。碁盤石山の山名の由来は、「この山に住む天狗は碁の技量にうぬぼれていたが、村人に負けたことで怒って碁盤をひっくり返した」という伝承だそうです。井山の向こうは40万都市豊田市自治体域。平成の大合併豊田市編入された旧・稲武町です。

f:id:AyC:20181226220733j:plainf:id:AyC:20181226220742j:plainf:id:AyC:20181226220744j:plain

上津具中心部。(左)伊那街道の交差点「下町」。(中)伊那街道沿いにある酒屋。(右)食彩広場津具店とファミリーファッションマルユウ。

f:id:AyC:20181226220831j:plainf:id:AyC:20181226220837j:plain

(写真)上津具からは並んで見える碁盤石山(左)と井山(右)。井山山頂の左側には面ノ木風力発電所風力発電機が見える。

3. つぐグリーンプラザ図書室を訪れる

下津具地区と上津具地区は約2.5km離れていますが、その上津具地区寄りに設楽町役場津具総合支所があり、総合支所の隣に図書館と文化ホールを併せ持つつぐグリーンプラザがあります。津具村時代の1998年に公共施設を集約する目的でこれらの公共施設が完成。当時の中日新聞では「“ミニ遷都” 構想実現へ」と表現されました。

総合支所の脇には「津具村偉人の像」として津具村出身の7人の銅像が建っていました。教育者・裁判官・陸軍中将などさまざまな人物がおり、6人が明治生まれ、1人が大正初期生まれ。4人いる旧制中学卒業生の出身校を見ると、名古屋の愛知一中(愛知県立旭丘高校)が1人、西三河地方の愛知二中(愛知県立岡崎高校)が1人、浜松一中(静岡県浜松北高校)が2人でした。県外ではありますが浜松との関係も深いのですね。東三河地方の愛知四中(愛知県立時習館高校)出身者はゼロでした。

f:id:AyC:20181226221811j:plainf:id:AyC:20181226221822j:plainf:id:AyC:20181226221824j:plain

(左)つぐグリーンプラザ。(中)津具総合支所。(右)「津具村偉人の像」。

 

設楽町はいわゆる「図書館未設置自治体」であり、田口地区の設楽町民図書館も津具地区のつぐグリーンプラザ図書室も “図書室” の扱いです。利用者用蔵書目録(OPAC)はなく、文献で簡単に調べた限りでは蔵書数もわかりませんでしたが、職員用のデータベースによると「つぐグリーンプラザ図書室19,357冊、設楽町民図書館17,568冊」とのことでした。

複合施設全体の延床面積は4,085.72m2。図書館部分の延床面積はわかりませんが、閉架書庫以外だけで600m2 (20×30m)を超えているのは確実であり、235m2の設楽町民図書館の3倍はあるのではないかと思われます。ソファ席6席、キャレル席4席、4人がけ机4脚、畳コーナーの4人がけ机4脚と閲覧席の種類も豊富。

1998年の開館時点で津具村の人口は約1,800人。蔵書数の絶対数こそ多くないけれど、現時点の人口で換算すると蔵書数は16冊/人という高水準です。館内を見渡す限りでは、施設面では1万人-3万人規模の自治体の公共図書館と同格に見えます。自治体規模を考えると不相応にも見える立派な施設がありながら「図書館未設置自治体」と呼ばれ続けるのは不可思議です。

 

この日は休日でしたが、館内にいた1時間ほどの間に他の利用者はいませんでした。そんな中で館内をふらふらしながら居座る怪しい利用者に見えたでしょうが、逆に職員さんにはいろいろ質問でき、また写真撮影も「利用者が映らなければOK」と自虐的に答えてくれました。

『したら図書館だより』2018年12月号によると、11月の月間利用者数は284人、貸出者数は119人、貸出冊数は321冊です。同一施設内の文化ホールでイベントがあった際に図書室に入館する方が多いとのことで、設楽町民図書館と利用者数は同等ながら貸出者数や貸出冊数は少ない。学校の定期試験前などには図書室内で勉強する中高生も一定数いるとのことでした。

 

f:id:AyC:20181226223138j:plain

(写真)図書室内中央部。中央の柱に見えるのは最近話題の豊根村のポスター「チョウザメが、村の人口を超えましたので、食べに来てください」。

f:id:AyC:20181226221907j:plainf:id:AyC:20181226221911j:plainf:id:AyC:20181226221914j:plain

(左)窓際の閲覧席。(中)畳コーナー。(右)AVコーナー。開館当時に購入したテレビかな。

 

1998年の津具村における公共施設集約の際には、つぐグリーンプラザや津具村役場(現・津具総合支所)の前に津具村立津具保育園(現在は設楽町立)も建設されています。2014年には設楽町中心部でも公共施設が集約されて、設楽町民図書館に隣接して設楽町子どもセンターが建設されています。同じ北設楽郡豊根村東栄町と比べると、設楽町は子どもが本に接しやすい環境と言えそうです。

f:id:AyC:20181226221922j:plainf:id:AyC:20181226221926j:plainf:id:AyC:20181226221930j:plain

(左)児童書。(中)絵本。(右)紙芝居。

f:id:AyC:20181226221939j:plainf:id:AyC:20181226221943j:plainf:id:AyC:20181226221948j:plain

(左)新着図書。(中)漫画本。規模の割に多い。(右)雑誌。

 

カウンター前には各種の文庫が。2015年の奥三河ロータリークラブ解散の際の寄付金を元に設置した「奥三河ロータリー文庫」、2016年に “父・篠宮久雄の遺志を継いだ設楽町出身の徳升美智子・篠宮雄二” からの寄付金を元に設置した「しのみや文庫」(児童書メイン)などがあります。

また設楽町民図書館や東栄町図書室「のき山文庫」などと同じように、愛知県図書館が図書館未設置自治体に設置している愛知県図書貸出文庫もあります。自前で購入できる新着図書の数が限られているだけに、約100冊とはいえ県図書館による新刊は貴重です。

地域資料は『津具村誌』や『設楽町誌』はもちろん、長野県下伊那郡の『根羽村誌』などもあります。同じ北設楽郡でも 豊根村ふれあいセンター内図書コーナーは行政資料や自治体広報の類を置いていませんでしたが、こちらには行政資料などの灰色文献も多数ありました。

f:id:AyC:20181226221959j:plainf:id:AyC:20181226221953j:plainf:id:AyC:20181226222003j:plain

(左)奥三河ロータリー文庫。(中)しのみや文庫。(右)愛知県図書貸出文庫。

f:id:AyC:20181226222006j:plainf:id:AyC:20181226222010j:plain

(写真)地域資料。(右)『津具古文書』など。

 

4. まとめ

設楽町当局によるつぐグリーンプラザの紹介はこんな感じ。6,000人弱という設楽町の人口規模を考えれば、当局によるPRが不十分なのは仕方ないとは思います。でも、こんな立派な施設なのにウェブ上に館内の写真の1枚もないのはもったいない。

今更ですが本ブログ「振り返ればロバがいる」で重視しているのは、「写真を公開して図書館を “ひらく” こと。それも二次利用可能なライセンスで」。文章は添え物です。

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

豊田市中央図書館を訪れる

f:id:AyC:20181212183734j:plain

(写真)名鉄豊田市駅。左上は大型商業施設のT-FACE B館。

 

愛知県豊田市豊田市中央図書館が開館したのは1998年11月3日。2018年には開館20周年を迎え、数々の20周年記念イベントが開催されました。記念イベントの目玉企画として、11月3日には著作家椎名誠の講演会を開催しています。頻繁に訪れている図書館ですが写真で館内を紹介します。

 

1. 愛知県豊田市を訪れる

愛知県豊田市 - Wikipediaは人口約43万人の自治体。愛知県内では232万人の名古屋市に次いで2番目であり、歴史的に西三河地方の中心都市である岡崎市(約39万人)、尾張地方の中心都市である一宮市(約38万人)、東三河地方の中心都市である豊橋市(約37万人)を上回っています。「中部地方」という枠組みで見ると、名古屋市新潟市浜松市静岡市金沢市に次いで第6位だそうです。

豊田市トヨタ自動車を中心とする自動車産業によって発展した町であり、図書館に関する各種統計でも財政の豊かさをうかがうことができます。総蔵書数は全国の中核市の中で第1位の176万冊であり、市民1人あたり蔵書数は4.16冊。豊田市の一般会計予算は1783億円ですが、うち図書館費は7億3000万円、図書購入費は8300万円だそうです。(数字はいずれも2017年度事業年報より)

平成の大合併で4町2村を編入したことで、豊田市は愛知県でもっとも面積の大きな自治体となりました。公共図書館豊田市中央図書館の1館のみですが、中学校区ごとにネットワーク館という呼び名の公民館図書室が設置されています。中央図書館の蔵書数は115万冊ですが、ネットワーク館31館の蔵書数は計59万冊。ネットワーク館31館の総貸出冊数は中央図書館の貸出冊数を上回ります。

 

愛知県の公共図書館(中央館)の延床面積 ※名古屋市を除く。

1 12,567m2 豊田市中央図書館

2   7,895m2 岡崎市立中央図書館

3   6,808m2 安城市図書情報館

4   6,702m2 一宮市立中央図書館

5   6,102m2 日進市立図書館

 

愛知県の公共図書館の蔵書冊数 ※名古屋市を除く。

1 1,762,706冊 豊田市

2    893,255冊 岡崎市

3    784,900冊 春日井市

4    735,760冊 刈谷市

5    722,724冊 西尾市

 

愛知県の公共図書館の開架冊数 ※名古屋市を除く。一宮市春日井市は不明。

1 880,281冊 豊田市

2 494,175冊 岡崎市

3 449,510冊 安城市

 

f:id:AyC:20181221215947j:plainf:id:AyC:20181221215949j:plain

ネットワーク館の例。(左)逢妻交流館。(右)若林交流館図書室。手前に頭と耳だけ見えている人形は、皆さんもご存じのアレですね。
 

2. 豊田市中央図書館を訪れる

豊田市中央図書館は名鉄豊田市駅の再開発ビル「とよた参合館」(さんごうかん)にあり、13階建ての巨大なビルの3階から7階を占めています(7階は閉架書架)。なお、豊田市の図書館の歴史についてはWikipedia記事「豊田市中央図書館」にまとめてあります。

f:id:AyC:20181212183726j:plain

(写真)豊田市中央図書館が入っているとよた参合館。名鉄豊田市駅からペデストリアンデッキで直結。

 

3階 「人文科学・洋書・新聞・本多兄弟文庫・障がい者サービス・ティーンズ」

豊田市中央図書館のメイン入口は3階。2000万円で購入したという噂の彫刻『文化の種 ミューズ達』を横目に自動ドアを通ると、正面には2018年初頭に設置された予約本棚があります。3階の総合案内カウンター前には6台もの自動貸出機も。2017年4月の指定管理者制度導入後に全蔵書にICタグが貼付され、これらの予約本棚・自動貸出機・自動返却などが設置されました。

指定管理者制度が導入されたことで、約100人(うち司書2人=2%)だった職員数は約80人(うち司書44人=55%)になりました。人件費は削減されているはずでなので、驚くほどの司書率の増加は悩ましい変化でもあります。

3階の総合カウンター正面にはメインのテーマ展示「年末年始を楽しく過ごそう」。その背後には20周年記念展示「豊田市中央図書館のあゆみ」が貼られています。そのわきには小規模なテーマ展示の書架があり、裏側は市民がお薦め本を紹介する「まちなかライブラリー」となっています。

豊田市に所在するスポーツチームを紹介する書架もあり、名古屋グランパス(サッカー)、トヨタ自動車ヴェルブリッツラグビー)、トヨタ自動車硬式野球部(野球)の3チームが紹介されています。他の大企業が企業スポーツチームを相次いで廃部させる中でもトヨタ自動車は “切らなかった” ことで知られており、日本トップリーグ連携機構(球技の全国リーグ組織)内のチームだけでもまだまだあるのですが。

 

f:id:AyC:20181212183742j:plainf:id:AyC:20181212183747j:plain

 (左)3階の図書館入口。(右)予約本棚。

f:id:AyC:20181212183800j:plainf:id:AyC:20181212183803j:plain

 (左)メインのテーマ展示「年末年始を楽しく過ごそう」。(右)20周年記念展示「豊田市中央図書館のあゆみ」。

f:id:AyC:20181212183816j:plainf:id:AyC:20181212183821j:plainf:id:AyC:20181212183825j:plain

 (左)市民の推薦図書「まちなかライブラリー」。(中)テーマ展示「ゆ」「あったかフード」。(右)スポーツチームの紹介。

 

3階の奥には本多兄弟文庫があります。実業家の本多静雄と文芸評論家の本多秋五から寄贈された図書の展示室であり、この図書館の目玉のひとつだと思うのですが、子の展示室の中だけは時間が止まっているよう。うまく活用できているのかどうかは知りません。

f:id:AyC:20181212183840j:plainf:id:AyC:20181212183842j:plain

 (写真)本多兄弟文庫。

 

豊田市自動車産業関連企業では多くの外国人/日系人が働いています。人口42万人のうち13,000人が外国人だそうで、保見団地は外国人居住者が多い団地の例として挙げられることが多いです。3階には2列にわたって洋書の書架があり、英語書籍約7,000冊、ポルトガル語書籍約850冊、スペイン語書籍約350冊、ドイツ語書籍約120冊がありました。

壁面には「多言語で育つ子どもとその家族のためのおはなし教室」のチラシが貼ってありました。英語・ポルトガル語スペイン語・中国語・韓国語・ベトナム語・日本語の7言語のチラシが並べられています。主催は図書館ではなく市内のNPO法人だそうです。購読している外国語新聞にはThe New York Timesアメリカ・英語)、The Japan Times(アメリカ・英語)、Sao-Paulo Shinbun(ブラジル・ポルトガル語)、人民日報(中国・中国語)などがありました。

f:id:AyC:20181212183859j:plainf:id:AyC:20181212183904j:plain

洋書コーナー。(右)ポルトガル語図書とスペイン語図書。

f:id:AyC:20181212183915j:plainf:id:AyC:20181212183950j:plain

 (左)「多言語で育つ子どもとその家族のためのおはなし教室」のチラシ。(右)外国語新聞。

f:id:AyC:20181212184041j:plainf:id:AyC:20181212184049j:plain

ティーンズコーナー。(右)図書館文芸部員募集のチラシ。

 

4階 「自然科学・自動車資料・郷土資料・児童コーナー」

3階からエスカレーターで4階に上がると正面は児童コーナー。この図書館はワンフロアがとても広いので、児童コーナーの周囲には透明な柵が設置されており、入口は木製のアーチがある1か所のみです。この入口は4階の総合カウンターからも見える場所にあります。この図書館では各階に大きなカウンターがあり、その正面には自動貸出機や蔵書検索機が設置されています。

f:id:AyC:20181212184101j:plainf:id:AyC:20181212184107j:plainf:id:AyC:20181212184109j:plain

 児童書コーナー。(左)入口。(中)絵本。(右)ティーンズ向け文庫本。

f:id:AyC:20181212184124j:plainf:id:AyC:20181212184127j:plain

 4階総合案内。(左)カウンター付近。(右)自動貸出機。

 

4階には自動車資料コーナーがあります。自動車資料の図書と雑誌バックナンバーは約61,000冊、カタログは約11,000冊を所蔵しており、雑誌は約200誌を購読しています。自動車資料だけで公共図書館の分館1館分くらいあるでしょうか。雑誌は『カーグラフィック』や『F1速報』などの一般向け雑誌はもちろん、『豊田自動織機技報』や『いすゞ技報』などの技術論文誌、『Motor Sports』(イギリスの一般向け雑誌)、『Journal of Transportation Engeneering』(アメリカの学術雑誌)などの英語雑誌も新着雑誌書架に置かれていました。

展示コーナーではテーマ展示「Anniversary Car」を行っていました。70周年のポルシェ・356 - Wikipedia、60周年のオースチン・ヒーレースプライト - Wikipedia、50周年の日産・ローレル - Wikipedia、50周年のトヨペット・コロナマークII - Wikipediaなどが、発売当時の雑誌とともに紹介されています。

f:id:AyC:20181212184141j:plainf:id:AyC:20181212184147j:plainf:id:AyC:20181212184150j:plain

(写真)自動車資料コーナー。

 

せっかくなので、イギリスの雑誌『Autocar』の創刊号=1895年11月号、イギリスの雑誌『Motor』の創刊号=1902年2月号、日本の雑誌『モーターマガジン』の創刊号=1955年8月号、日本の雑誌『カーグラフィック』の創刊号=1962年4月号を書庫から出してもらいました。

1902年時点の「Motor」とはモーターバイクのことだったみたいで、雑誌名はまだ『Motorcycling and Motoring』です。日本で現存最古の自動車雑誌『モーターマガジン』が創刊された1955年は、トヨペット・クラウンが発売された年だそうです。『モーターマガジン』の創刊号にはトヨタ自動車工業のカメラルポが掲載されていますが、第2号のカメラルポは日本電装でなんだか嬉しくなります。

 自動車資料コーナー。(中)「C31.1 自動車製造 トヨタ」の棚。分類が細かい。(右)自動車資料の展示。

f:id:AyC:20181220001448j:plainf:id:AyC:20181220001453j:plain

(左)『モーターマガジン』の創刊号と第2号。『カーグラフィック』『Autocar』『Motor』の創刊号を含む製本。(右)『Motorcycling and Motoring』(『Motor』の前身誌)1902年3月号。パブリックドメイン(PD)。

f:id:AyC:20181220001501j:plainf:id:AyC:20181220001506j:plain

(写真)『モーターマガジン』創刊号と第2号のカメラ・ルポルタージュ。左から豊田市トヨタ自動車工業、刈谷市日本電装。いずれもパブリックドメイン(PD)と判断した。

f:id:AyC:20181220001516j:plainf:id:AyC:20181220001522j:plainf:id:AyC:20181220001528j:plain

(写真)『モーターマガジン』創刊号から第3号までの巻頭カラー。左からトヨペット・クラウン - Wikipediaダットサン・コンバーチブル - Wikipediaプリンス・セダン - Wikipedia。いずれもパブリックドメイン(PD)と判断した。

豊田市中央図書館は全国の自治体史を多数所蔵していることも売りだったはずです。北海道から沖縄まで約2,000自治体の約8,200冊を所蔵しており、愛知県内の公共図書館ではダントツで多いはずですが、愛知県以外の自治体史は数年前に書庫送りになってしまったようだし、各年版『事業概要』の「特色ある資料」にも登場しなくなってしまいました。

 

5階「人文・社会科学・AVコーナー・企画展示コーナー」

3階同様に5階にも図書館入口が設けられています。5階の総合カウンター脇のテーマ展示「ほぼここにしかない本展」では、愛知県図書館を除く愛知県内の公共図書館豊田市しか所蔵していない資料を展示していました。ここしか所蔵していない図書は少なからずあるし、豊田市中央図書館のOPACには多くの内容が登録されているようで、例えば「海士町」と検索すると17件もヒットします

 

5階の総合カウンター前ではイオンシネマ豊田KiTARAとのタイアップが行われていました。大型ディスプレイが設置され、常に上映作品の予告編が(音声付きで)流されています。

この時は公開直前の『ドラゴンボール超 ブロリー』の予告編が繰り返されており、「素晴らしい~! なんという戦闘力~」などという声が数分おきに聞こえてくるので、カウンターのスタッフはうんざりしてるだろうなと思いました。

上映作品のチラシを設置しているほか、上映作品に合わせた図書の紹介も行っています。例えば11月30日公開の『くるみ割り人形と秘密の王国』に合わせてドイツのクリスマスに関する図書が展示されていました。

f:id:AyC:20181212184202j:plainf:id:AyC:20181212184206j:plain

 (写真)テーマ展示「ほぼここにしかない本展」。

f:id:AyC:20181212184220j:plainf:id:AyC:20181212184223j:plain

 (左)AV家族ブース。(右)試聴コーナー。

f:id:AyC:20181212184234j:plainf:id:AyC:20181212184239j:plain

 (写真)イオンシネマ豊田KiTARAとのタイアップ。

 

6階「インターネット・多目的ホール・閲覧室」

6階は学習する高校生が多いフロア。エスカレーターから学習席に向かう通路には「家庭教師のトライ」の広告が設置されていました。“広告のお問い合わせは 株式会社宣通 052-XXXX-XXXX” とあり、図書館は広告に関与していないようです。2018年から図書館内で豊田市フリーWi-Fiが使えるようになったため、持ち込みパソコン席の利用者が増えているのではないかと思います。

f:id:AyC:20181212184313j:plainf:id:AyC:20181212184316j:plainf:id:AyC:20181212184319j:plain

 (左)閲覧室(学習席)。(中)インターネット席。(右)広告用スペース。「家庭教師のトライ」。

f:id:AyC:20181212184256j:plainf:id:AyC:20181212184259j:plain

 (写真)4階の閲覧席。(右)5階の書架。

f:id:AyC:20181212184331j:plainf:id:AyC:20181212184334j:plain

(左)図書館内移動用エスカレーターと書架。(右)撮影許可札。背後は図書館内移動用エレベーター。

 

3. まとめ

私が図書館に興味を持ち始めた2016年、豊田市中央図書館には1度しか訪れていません。2017年に指定管理者制度が導入される前、直営時代の豊田市中央図書館は岡崎市安城市などの周辺自治体と比べて魅力のない図書館でした。蔵書数が多いけどそれだけ。愛知県でここにしかない図書は少なからずあって、その圧倒的な蔵書数が役に立つことは稀にあるんですが。

これほどの大規模館なのに、2016年に訪れた際にはオンラインデータベース類が一切ありませんでした。それはなぜかと聞いて「財政難で聞蔵Ⅱの契約を打ち切った」と言われた時は唖然とし(今となってはギャグみたいで笑える)、市長の顔が見てみたいと思ったほどです。2018年には聞蔵Ⅱとの契約が復活しています。

 

なお、直営時代の2016年に館内を撮影したいと伝えた際には、“正規職員が撮影に同行した上で、SNS等へのアップロードをしない” という約束で撮影させてもらいました。スタッフの目が行き届きにくい大規模館であることを考えると、これ自体は悪いわけではない対応だと思います。しかし、今回(2018年11月)は撮影申請書に記入したうえで「撮影中」のネームプレートを渡され、自由に撮影ができました。

豊田市指定管理者制度の導入を検討しだしたときには「豊田市の図書館を考える会」が設立されて反対運動を行ってきましたが、あっという間に導入が正式決定してしまったようです。私のように図書館の指定管理者問題に疎い一般市民からすれば、指定管理者制度が導入されたことで何もかもが改善したように見えますが、本当にこれでよかったのだろうか、という気もします。

f:id:AyC:20181212185148p:plain

 (写真)太田稔彦市長(2012年就任)。豊田市公式サイト「市長の部屋」より。

f:id:AyC:20181220000601j:plain

(写真)2019年のラグビーワールドカップに向けてイルミネーションが設置された豊田市駅前。

Wikimediaの「全言語版対象オンライン執筆コンテスト」

 本エントリーはWikimedia Advent Calendar 2018に登録しています。

qiita.com

 

1. ウィキメディア財団「国別・地域別協会」とは

Wikipediaを運営するウィキメディア財団には約40の「国別・地域別協会」があります。ウィキメディア財団 - Wikipediaによると、“企業・学校・他の社会団体と現地ユーザとの連携を図ると共に、また独自の資産をもち、財団の活動の支援を行う” のが「国別・地域別協会」だそうです。

「国別・地域別協会」は具体的には行政や学校や図書館と連携してWikimediaWikipedia)の理念の普及や利用の推進を行っており、日本で言えばウィキペディアタウン - Wikipediaなどのアウトリーチ活動がそれに近いと思われます。しかし、日本のウィキペディアタウンは各地の主催者が個別に活動しているだけに過ぎないことからわかるように、ウィキメディア財団日本支部は存在しないし、現状では設立に向けた動きもありません。

f:id:AyC:20181219193326p:plain

(画像)国別・地域別協会の設立状況。青が活動中。その他は議論中・計画中。

 

2. 「全言語版対象オンライン執筆コンテスト」とは

各地の「国別・地域別協会」は自国内での活動が主となるわけですが、他国のウィキペディアンに向けた活動を行うこともあります。その一例が「全言語版対象オンライン執筆コンテスト」です。

WLE執筆コンテストを振り返って - 振り返ればロバがいる - 2015年11月・12月

ウィキ・ラブ・オリンピック - 振り返ればロバがいる - 2016年8月・9月

城チャレンジ(Castles Challenge)に参加する - 振り返ればロバがいる - 2016年9月

カタラン・カルチャー・チャレンジ2017 - 振り返ればロバがいる - 2017年3月

私が過去に参加した「全言語版対象オンライン執筆コンテスト」は約15回。うち4回分のブログに貼りました。その目的・意義・ルール・参加方法などについては、2016年夏のリオデジャネイロ五輪の際に参加した「ウィキ・ラブ・オリンピック」(Wiki Loves the Olympics - Meta)のエントリーが詳しいです。ざっくり説明すると以下のような感じです。

 

主催者はウィキメディア財団イベロアメリ支部です。世界各国のウィキペディアンの皆さん、スペイン語圏やポルトガル語圏のオリンピック関係記事を作成しましょう。「南米のオリンピック選手」や「他国のパラリンピック選手」の記事なんて、こんな機会に誰かが意識して作成しないと増えません。どの言語版に記事を作成してもよいです。リオ五輪に出場した選手だけでなく、過去のオリンピック選手の記事でもよいです。もちろん日本語版に作成してもOK。ポイントは自分で申告してくださいね。ポイント上位には何かプレゼントします。

 

私はリオデジャネイロ五輪に関係する以下のようなオリンピック関係記事を作成しました。

ミレイア・ベルモンテ - Wikipedia - スペインの競泳選手。女子200mバタフライ金メダル。

カロリーナ・マリン - Wikipedia - スペインのバドミントン選手。女子シングルス金メダル。

ルート・ベイティア - Wikipedia - スペインの陸上競技選手。女子走高跳金メダル。

サウル・クラビオット - Wikipedia - スペインのカヌー選手。男子K-2 200m金メダル。

2016年リオデジャネイロオリンピックのスペイン選手団 - Wikipedia - 選手やメダルの一覧。

 

「ウィキ・ラブ・オリンピック」には14言語版から45人が参加しました。主催者に近いスペイン語版やポルトガル語版に多くのオリンピック選手記事が作成されたのは当然として、英語版・ポルトガル語版・ブルガリア語版・ポーランド語版・アルメニア語版・ドイツ語版・フランス語版・アラビア語版・日本語版・カタルーニャ語版・アストゥリアス語版・パンジャブ語版・オリヤー語版にも記事が作成されました。

スペイン語ポルトガル語しかわからない主催者でも、世界各国のウィキペディアンをおだてることによって、さまざまな言語版で目的の分野の記事(ここでいえばオリンピック関係記事)を増やすことに成功したのです。

ウィキペディアンは基本的に “自分が作成したい記事” を編集しますが、「全言語版対象オンライン執筆コンテスト」では “誰かが作成を望んでいる記事” を編集することになります。簡単なルールを読める英語力があれば参加でき、自言語で自言語版に編集できます。

 

3. まとめ

私はこれまでに約15の「全言語版対象オンライン執筆コンテスト」に参加してきました。Wikipedia利用者ページ下部に一覧を掲載しています。その主催者はさまざまで、ウィキメディア財団スペイン支部カタルーニャ支部、イベロアメリ支部アルメニア支部スウェーデン支部など。Wikipedia日本語版で活動するウィキペディアンの皆さんも参加してみませんか。

将来的にはウィキメディア財団日本支部ができ、日本支部が主催して「全言語版対象オンライン執筆コンテスト」を主催できればと思います。