振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。図書館におけるウィキペディアタウンの開催を推進しています。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

東海市立横須賀図書館を訪れる

f:id:AyC:20190107134404j:plain

(写真)街角サロンから図書館入口を見る。

 

2019年1月4日、愛知県東海市東海市立横須賀図書館が開館したので、開館当日の9時の開館に合わせて訪れました。東海市では中央図書館に次いで2番目の図書館。愛知県では2019年に開館する唯一の図書館だと思われます。

横須賀図書館/東海市

 

1. 東海市を訪れる

愛知県東海市名古屋市の南側に隣接する自治体。1960年代には臨海部に鉄鋼業企業(新日鉄住金名古屋製鉄所、大同特殊鋼知多工場など)を誘致して発展し、1960年代の10年間で人口が約35,000人から約85,000人に急増しています。1969年の市制施行後も人口は増え続けており、現在は知多半島5市5町の中で半田市に次ぐ約11万人となっています。

人口が9万人を超えていた1977年、前身自治体も含めて初の図書館である東海市立中央図書館 - Wikipediaが開館。東海市役所と同じく大池公園の脇にあり、2階からは公園の木々が見える図書館です。とはいえ2019年で開館43年目。愛知県の自治体の中央館としては、蒲郡市立図書館(1969年竣工)、常滑市立図書館(1970年)、瀬戸市立図書館(1970年)、江南市立図書館(1976年)についで古いと思われます。

開館20年目頃からは、つまりこの20年間は貸出冊数がほぼ横ばいであり、建物の古さが貸出冊数の伸びを阻害しているのは間違いないでしょう。中央館の建て替えを視野に入れるべき時期の分館開館ということになります。今後の中央図書館については2017年3月に策定された「東海市公共施設等総合管理計画」でわずかに触れられていますが、当面は建て替えや大規模改修などを行わないようです。

f:id:AyC:20190107141108p:plain

f:id:AyC:20190107141109p:plain

 

東海市名鉄常滑線尾張横須賀駅前のJAあいち知多横須賀支店ビルを取得。この建物を「まなぶん横須賀」と名付け、1階と4階を東海市立横須賀図書館、2階を不登校支援施設のほっと東海、3階を東海市教員研修センターとしました。教員研修センターは図書館に先行して2018年11月から業務を開始しており、東海市立横須賀図書館は2か月遅れで開館しています。

私が横須賀図書館が開館することを知ったのは2018年8月ですが、それからこの2019年1月の開館直前まで、ウェブ上で横須賀図書館の開館を示す手がかりは東海市立中央図書館公式サイト上の1ページだけ。開館後の現在でも"まなぶん横須賀" というキーワードでの完全一致検索の結果は8件(2019年1月7日時点)であり、横須賀図書館が開館することについての周知が不足しているのではないかという気がします。

 

2. 東海市立横須賀図書館を訪れる

「まなぶん横須賀」は尾張横須賀駅に隣接しており、特急停車駅である尾張横須賀駅の利用者にとってはとても便利だと思われます。また、駅前型図書館でありながら55台分の駐車場があるらしく、これは中央図書館の60台分とほぼ同じです。

「まなぶん横須賀」の入口を入ると右手が街角サロンであり、左手が横須賀図書館です。街角サロンは図書館公式サイトで "地域の方の交流の場として利用できる、ガラス張りの開放的な雰囲気のスペース" と紹介されていますが、単なる飲食スペースとして使われそうです。
f:id:AyC:20190107134042j:plainf:id:AyC:20190107134047j:plainf:id:AyC:20190107134051j:plain

 (左)尾張横須賀駅と「まなぶん横須賀」。(中)1月4日9時の開館を待つ利用者。(右)屋外から見た街角サロン。

f:id:AyC:20190107134058j:plainf:id:AyC:20190107134101j:plain

 (左)図書館入口手前の街角サロン。(右)図書館入口付近。

 

いわゆる郷土資料コーナーである「東海市のコーナー」は、細井平洲 - Wikipedia(現東海市域出身の儒学者)関連本、中村文則 - Wikipedia東海市出身の小説家)の著書、『東海市史』、その他、の4コーナー。

中央図書館と比べると別置された目的別のコーナーが多く、カウンター脇のいきいき元気コーナー、一般書エリアのビジネスコーナー、ICTコーナー、語学コーナーなどがあります。いきいき元気コーナーは名前からすると年配者向けのコーナーにも思えますが、健康・福祉などの本に加えてウォーキングやトレッキング、旅行ガイドや料理本までさまざまでした。

f:id:AyC:20190107134107j:plainf:id:AyC:20190107134111j:plain

 (左)閲覧席。図書館でこういう形の閲覧席は初めて見た。(右)蔵書検索機とインターネット用パソコン。

f:id:AyC:20190107134116j:plainf:id:AyC:20190107134119j:plain

 (左)東海市のコーナー。(右)新着図書。

f:id:AyC:20190107134140j:plainf:id:AyC:20190107134122j:plainf:id:AyC:20190107134126j:plain

 (左)雑誌。(中)いきいき元気コーナー。(右)語学コーナー。

 

横須賀図書館の収蔵能力は4万冊、現在の蔵書数は2万2000冊とのことで、蔵書数自体は他自治体の公民館図書室と同程度です。ただ図書は総じて新しく、購入年が表示されたラベルを見ると2018年度と2019年度購入分で6割以上ある印象です。例えば「230」(ヨ-ロッパ史、西洋史)は全31冊中28冊が2019年度購入分でした。

児童書には分類に合わせたシールが貼られており、書架の上部には「ハイ(社会に関する本)」「ギン(言葉に関する本)」などとシールの色の説明が書かれているのですが、「ハイ=灰」「ギン=銀」であることに気づくまでに時間がかかりました。これで分類を覚えてもらえるのかな。

f:id:AyC:20190107134153j:plainf:id:AyC:20190107134156j:plain

 (写真)一般書。

f:id:AyC:20190107134201j:plainf:id:AyC:20190107134204j:plainf:id:AyC:20190107134208j:plain

 (左)絵本。(中)児童書。(右)読み聞かせコーナー。

 

2階と3階は他組織ですが、4階の閲覧学習コーナーも横須賀図書館という位置づけになっており、1人用机と4人掛け机が計100席あります。このフロアに図書はいっさいなく、単なる学習スペースとして使用されそうです。なお、まなぶん横須賀1階の床面積は870.63m2、4階の床面積は942.51m2とのことで、横須賀図書館の延床面積は1,813.14m2と思われます。

f:id:AyC:20190107134214j:plainf:id:AyC:20190107134218j:plain

 (写真)4階の閲覧学習コーナー。

 

東海市立横須賀図書館の開館時間は「9時-21時」。愛知県で21時まで開館している図書館は珍しく、岡崎市立中央図書館、一宮市立中央図書館、豊橋市大清水図書館に次いで4館目と思われます。一般的な図書館の利用者に加えて、特に仕事・学校帰りにさっと立ち寄って本を借りる名鉄の通勤・通学者を利用者に想定しているのではないかと思います。

駅前にあって開館時間が長く、ブラウジングコーナーを重視している図書館としては、横須賀図書館が愛知県初といえるのでは。2021年度にはこの形態の本格的な図書館として豊橋市まちなか図書館が開館する予定ですが、豊橋市まちなか図書館が目指す方向性の一つである “滞在型図書館” を目指しているわけではないようです。

 

駅前にあり開館時間が長く、2万冊規模で新しい本が多い図書館。もし地元にこんな図書館があったら入り浸ると思います。いままで愛知県になかった図書館だけに興味深いのですがく、その特徴を周知しきれていなそうなのは残念です。2019年1月7日時点では、中日新聞等に開館を伝える記事は掲載されていません。

なお館内の写真については、職員同伴のもとで撮らせてもらいました。東海市立中央図書館で撮らせてもらった時と同じ対応です。開館当日ということで、一目で行政職員とわかるスーツ姿の男性が何人も館内を見守っており、またカメラをかついだ広報担当の職員もおりました。

f:id:AyC:20190107141823p:plain

 

3. 横須賀地区をあるく

横須賀図書館がある横須賀地区にはかつて尾張藩代官所があり、知多半島西岸(西浦)の政治・経済・文化の中心となる町だったそうです愛宕神社を北端、玉林寺を南端とする横須賀地区を歩くと、愛宕神社尾張横須賀まつり - Wikipediaで曳き回される山車の蔵が4組分ありました。ただし、山車蔵以外にはその町並みは見る影もない。ウェブ検索でも横須賀地区の繁栄の歴史は見えてこないし、図書館の「東海市のコーナー」も細井平洲や中村文則といった個人を推すばかりで、まちの歴史は軽んじられているように感じました。

f:id:AyC:20190107134222j:plainf:id:AyC:20190107134227j:plainf:id:AyC:20190107134231j:plain

(左)「大門組山車蔵」。(中)「公通組円通山車蔵」。(右)太田川駅前の日本福祉大学東海キャンパス。

f:id:AyC:20190107134233j:plain

(写真)横須賀小学校南側の民家で見かけたねこ。「13歳のおばあちゃんねこ」だそう。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。