振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

美馬市脇町の映画館

(写真)脇町劇場 オデオン座。

2022年(令和4年)8月、徳島県美馬市脇町を訪れました。かつて脇町には映画館「脇町劇場」と「脇町会館」がありました。

 

1. 美馬市脇町を訪れる

2005年(平成17年)、脇町・美馬町穴吹町木屋平村の3町1村が合併して美馬市が発足しました。2022年(令和4年)4月には美馬市営バスが廃止され、JR徳島線穴吹駅と脇町市街地を結ぶ公共交通機関はなくなってしまいました。

(写真)吉野川

 

1.1 美馬市立図書館

脇町南町重伝建地区には脇町立図書館を継承した美馬市立脇町図書館がありました。1986年(昭和61年)に建てられた鉄筋コンクリート造の建物ですが、本瓦・うだつ・虫籠窓などで周囲の町屋に溶け込むデザインとなっています。明治時代に建てられた農業用倉庫が閉架書庫として使用されていたそうですが、湿度などの点で蔵書への影響はなかったのでしょうか。

(写真)2017年に閉館した美馬市立脇町図書館。

 

大谷川を挟んで脇町南町重伝建地区の対岸にはショッピングコアパルシーというスーパーマーケットがありました。2014年(平成26年)の閉店後には美馬市が土地と建物を購入し、2018年(平成30年)5月13日に美馬市立図書館を含む美馬市地域交流センター「ミライズ」を開館させました。これに伴って2017年(平成29年)12月20日には脇町図書館が閉館しています。

なお、2005年(平成17年)の美馬市発足時には脇町図書館のほかに美馬市立穴吹図書館もありましたが、穴吹図書館は2013年(平成25年)に廃止されています。

(写真)美馬市立図書館が入る美馬市地域交流センター「ミライズ」。2018年開館。

 

2. 美馬市脇町の映画館

2.1 脇町会館(1950年12月-1977年頃)

所在地 : 徳島県美馬郡脇町(1977年)
開館年 : 1950年12月
閉館年 : 1977年頃
『全国映画館総覧 1955』によると1950年12月開館。1950年の映画館名簿には掲載されていない。1953年・1955年・1958年・1960年・1963年・1966年・1967年・1969年・1973年・1975年・1976年・1977年の映画館名簿では「脇町会館」。1978年の映画館名簿には掲載されていない。

(写真)美馬郡脇町に脇町会館と脇町劇場が掲載されている『全国映画館名簿 1955』時事通信社、1955年。

 

2.2 脇町劇場(1934年2月-1995年)

所在地 : 徳島県美馬郡脇町(1996年)
開館年 : 1934年2月
閉館年 : 1995年
Wikipedia脇町劇場
『全国映画館総覧 1955』によると1949年8月開館。1950年の映画館名簿には掲載されていない。1953年・1955年・1958年の映画館名簿では「脇町劇場」。1960年の映画館名簿には掲載されていない。1963年・1966年の映画館名簿では「脇町劇場」。1967年・1969年・1973年・1975年・1976年・1977年の映画館名簿には掲載されていない。1978年・1980年・1985年・1988年の映画館名簿では「脇町劇場」。1990年の映画館名簿には掲載されていない。1992年・1995年・1996年の映画館名簿では「脇町劇場」。1998年の映画館名簿には掲載されていない。建物は現存。

昭和初期には美馬郡脇町の有志によって劇場の建設が計画され、町内の事業家の協力を得て1934年(昭和9年)に脇町劇場が開館しました。

(写真)1955年頃の脇町劇場。『保存版 三好・美馬・阿波・吉野川の今昔』郷土出版社、2008年。

 

1932年(昭和7年)には美馬郡貞光町に貞光劇場も開館しており、巨大な箱形の外観、看板建築ではない下見板張りのファサードファサードから数メートル奥まった場所にある入口などの点で共通点が見られます。

(写真)脇町劇場 オデオン座。

(写真)脇町劇場 オデオン座。

(写真)脇町劇場 オデオン座。

 

脇町劇場は1995年(平成7年)に閉館。この年の吉野川流域には美馬郡脇町(脇町劇場)、美馬郡貞光町(貞光劇場)、麻植郡鴨島町(シネマコレクション)に1館ずつあり、美馬郡の2館はいずれも藤本一二三の経営でした。

(写真)徳島県の全16館が掲載されている『映画館名簿 1995』時事映画通信社、1995年。

(写真)脇町劇場 オデオン座。

 

1996年(平成8年)には山田洋次監督が "映画館を守り続ける男" を題材とする『虹をつかむ男』を製作し、"オデオン座" として劇中にも登場したことで、解体予定だったのが一転して保存の機運が高まりました。1998年(平成10年)には脇町有形文化財に指定され、1999年(平成11年)には修復工事が完了して一般公開が開始されています。

四国に残る芝居小屋建築は愛媛県喜多郡内子町内子座香川県仲多度郡琴平町の金丸座(旧金毘羅大芝居)、脇町劇場の3棟のみだそうで、内子座と金丸座は重要文化財に指定されています。

(写真)脇町劇場 オデオン座。

(写真)脇町劇場 オデオン座。

(写真)脇町劇場 オデオン座。

(写真)脇町劇場 オデオン座。手前は水無川の大谷川。

 

美馬市脇町にあった映画館について調べたことは「徳島県の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、その所在地については「消えた映画館の記憶地図(徳島県版)」にマッピングしています。

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