振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

芦屋市立図書館本館と打出分室を訪れる

2016年8月に芦屋市立図書館を訪れた。本日(2017年5月8日)、JP-28207-3さんという方が芦屋市立図書館 - Wikipediaという記事を作成してくださったこともあり、この図書館を訪れた時のことを記録に残しておく。

 

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(写真)芦屋市立図書館本館。OSM以外の写真はいずれもAsturio Cantabrioが撮影。

 

 

芦屋市と芦屋市立図書館の概要

西宮市と神戸市東灘区に挟まれた縦に長い自治体が芦屋市。鉄道では北から順に阪急神戸線JR神戸線阪神本線が、道路では国道2号線阪神高速神戸線が市域を横切っている。市街地北部と市街地南部の標高差は激しく、六甲山地から芦屋川や宮川が滝のように落ちてくる。3本の鉄道路線を境にして街の雰囲気が違うのを感じ取ることができる。

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 2枚の地図はOpenStreetMapを基に作成。

 

1949年に開館した初代芦屋市立図書館は、JR芦屋駅の西側にある芦屋仏教会館の一角を間借りしていたらしい。道路を挟んで芦屋川が迫っており、一見すると水害に遭いやすそうな場所にあるものの、目でも足でもはっきりとわかる自然堤防上にあり、1938年の阪神大水害でもこの場所は浸水しなかったらしい。

1954年から1987年までは阪神打出駅の北にある建物が第2代芦屋市立図書館となり、1987年からは市街地南端部に第3代芦屋市立図書館(現行館)を新築した。

 

 

芦屋市立図書館打出分室(第2代芦屋市立図書館、旧松山家住宅松濤館)

第2代芦屋市立図書館は明治期の建築物。大阪市逸見銀行として使われていたものを、1930年に芦屋市に移築した。その後は民間人(松山さん)の住宅として使用されていたとも、美術品収蔵庫の「松濤館」として使用されていたとも。まあ結局松山さんの私有地だったことには変わりないんだろう。

1954年に第2代芦屋市立図書館となった。村上春樹はこの図書館に足しげく通っていたらしく、図書館は『風の歌を聴け』にも登場する。1987年には現行の第3代芦屋市立図書館が開館したため、第2代の建物は取り壊される予定だったものの、建築研究会や市民団体からの声で解体を免れ、1990年には芦屋市立図書館打出分室として再開館した。1995年の阪神・淡路大震災では門が倒壊したらしい。2009年には国の登録有形文化財となった。

今では観光スポットのひとつにもなっているほど。明治期の銀行建築ということで、この打出分室だけでウィキペディアの単独記事になりうる。JP-28207-3さんによる芦屋市立図書館 - Wikipediaの現行版では打出分室がかつて本館だったことすらわかりづらいので、少しばかり加筆したい。

 

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(写真)ツタで覆われた打出分室。これでも現役の図書館。

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 (左)かつての正面玄関。現在は封鎖中。(右)建物側面にある登録有形文化財のプレート。

 

 

芦屋市立図書館本館(第3代芦屋市立図書館)

芦屋市立図書館の現行館は芦屋中央公園などがある埋立地に隣接している。1960年代にはまだこの埋立地は存在しておらず、ちょっとした砂浜が広がっていたらしい。現在は落ち着いた雰囲気の一角に図書館・芦屋市立美術博物館・谷崎潤一郎記念館が集まっている。

図書館に入る。弧を描く壁面と吊り下げられた照明が合わさって、とても1987年竣工とは思えない洗練された雰囲気を感じる。延床面積は約3,000m2で、若い頃の村上春樹みたいな少年が多そうな(※イメージです)この街の特性を考えると狭い。他都市より財政に余裕があったから1987年時点でこんな図書館がつくれたんだろうけど。

参考調査室だけは静かで人も少なかったが、それ以外の部分は平日でもかなり利用者が多く、圧迫感を感じる。館内の写真撮影はNG。もし許可されていても撮れる場所はかなり限られていた、とはいえ、1987年当時の豪華な図書館の例として人に伝えたいと思ったので残念。なお、芦屋市立図書館公式サイトは一見の価値があります。

 

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改めて現行館(本館)の建物を見ると、建物とつながっていない不思議な壁がある。現在基準ではそれほど広くない閲覧室を考えると、壁の向こうに見える中庭部分も閲覧室にしていたら、と思う。

宮津市立図書館とその周辺を訪れる

4月28日の金曜日には「オープンデータ宇治の歴史・文化」プロジェクトのキックオフミーティングにおじゃまさせてもらい、是住さんと森田さんが大学院の授業の一環として取り組んでいるおもしろいプロジェクトの話を聞いた。翌日には丹後地方にでかけるという話をしたら、是住さんから「2017年中に宮津市立図書館が移転する」という話を聞いたので、図書館の訪問を急きょ予定に組み込んで移転前の姿を確認しに行った。

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(写真)宮津市役所。本エントリーの写真撮影者はすべてAsturio Cantabrio。

宮津市立図書館を訪れる
宮津市立図書館単独のウェブサイトはなく、自治体ウェブサイト内の1ページが図書館に充てられている(本当に1ページ分しかない)。GW中ということでこの日に開館しているかどうか不安だったが、ウェブサイト内にカレンダーは見当たらない。電話しないとわからないらしい。
土曜日の朝に京都市を出て、JR山陰線で丹後地方に向かう。福知山駅で京都丹後鉄道の特急に乗り換えると車内には中国人観光客が多かった。天橋立駅まで行かずに宮津駅で降りる。10分ほど歩くともう図書館が見えてくる。何度となく来ている宮津市街地は歩きなれている。
 
図書館はやはり休館していた。外観の写真を撮っていたら、車でやってきた方がいた。この方も休館中なのを知らずに来たらしく、休館中の張り紙をみて嘆いていた。入口横にはウェブサイトになかった開館カレンダーが貼ってあった。
カレンダーだけではない。ウェブサイトになかった移動図書館のステーションや運行日の情報も、図書館の入口横に貼りだしてあった。この街では図書館サービスに占める移動図書館のウェートは大きいはず。ウェブサイトでわかる情報は増やしてほしい。移動図書館の利用者はウェブサイトなんて見ないのかもしれないけれ。(なおウェブOPACもない)

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 (上)休館日の宮津市立図書館。図書館としては“府内で3番目に古い”建物らしい。
(下2枚)裏側に回ると味のある「としょかん」の文字が。脇の大手川にはボートが係留されてる。

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京都新聞毎日新聞の記事を読むと、2017年7月末には中心市街地にある複合商業施設「ミップル」3階・4階部分のテナントが撤退。その4階部分に図書館を移転させて、2017年中には業務を開始するらしい。となると10月末くらいには現図書館は閉館となるはずだけど、ウェブサイト上では移転や長期休館に関する情報は確認できなかった。
「ミップル」の隣には2015年にできたばかりの観光交流センター(観光案内所)もある。付近は道の駅に登録されていて、すぐ裏手は観光船のりばになっている。ひっそりとしていた図書館前と比べるとかなり人の流れがある。
しんぶnミップル
新聞記事によると、4階フロア3,500m2の大部分が図書館に充てられるらしい。現行館が557m2なので、5-6倍程度に増える。2016年9月に移転が報じられてから実際に移転するまで1年しかないけれど、どれだけ練られた図書館ができるだろう。

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OpenStreetMapから作成した図。施設の位置関係。

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(左)9月の移転先の複合商業施設「ミップル」。(右)「ミップル」の裏側はすぐ日本海

(下)「ミップル」4階フロア。売り尽くしセール中。

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宮津市立前尾記念文庫を訪れる

宮津市立図書館の隣には「宮津市立前尾記念文庫」なる建物があった。宮津市出身の政治家(元衆院議長)である前尾繁三郎から蔵書35,000冊と建設費の寄贈を受けて、宮津市立図書館の11年後の1981年に開館したらしい。
この文庫だけで図書館として成り立つんじゃないかと思うくらい、いろんな分野の本がある。公共図書館だと書庫にも置いてなさそうな本が多い。1981年に亡くなった方なので古いのは確かだけれど、使い方次第では役に立ちそう。ただウェブOPACはないらしい。
通常時でも金・土・日の週3日しか空いていないが、GW中も通常通り開館しているということだった。つまりこの日は開館していた。市民が開けててほしいのは前尾記念文庫ではなく図書館だろうに、なんだかちぐはぐしている。
 
内部は下のような感じ。開館時から蔵書数は変わってないはずなのに、通路脇にまで本がはみ出していて窮屈そう。ただ宮津市立図書館より建物は新しく、床面積も広い。1階部分は改装中なのかまっさらな状態だった。

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記事「柳窪」について その1

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Copyright © 「国土画像情報(カラー空中写真) 国土交通省」。カラー航空写真を使用する場合は、Wikimedia Commonsだけでなくウィキペディアの本文中にも「国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)を基に作成。」と入れなくてはならない謎仕様。

 

 

記事「柳窪」の歩み

2017年2月25日、ウィキペディア柳窪 (東久留米市) - Wikipediaという記事が作成されました。作成者はこの柳窪が初編集の方(Harwell1212さん)。とても完成度の高い記事を初心者が作成したということで、2ちゃんねるではこの方は別アカウントの生まれ変わりではないかと疑われていたそうです。

2月27日夜にはWikipedia:メインページ新着投票所 - Wikipediaに推薦されました。約24時間で7票を集め、2月28日夜から3月1日夜まではメインページに掲載されました。24時間での選考通過は「とても早い」部類。この記事の通常時の閲覧回数は10-15/日ですが、2月28日は281回、3月1日には637回に跳ね上がっています。3月2日から3月10日にはWikipedia:月間新記事賞 - Wikipediaの選考にかけられ、5票を得て月間新記事賞を受賞しました。月間新記事賞を受賞したことでWikipedia:良質な記事/良質な記事の選考 - Wikipediaに自動推薦され、最終的に選出には至りませんでしたが、その過程で他者の編集も入って記事の質が大きく向上しています。

 

なぜ記事「柳窪」がすばらしいか

ウィキペディアには新しく作成された記事が一覧できるページがあります。2月27日に柳窪が作成されて半日後くらいにはこの記事の存在に気づき、「第1回ウィキペディアタウンin東久留米」の参加者の誰かであることを確信しました。

第1回で一緒のグループにいたNさん、もしくはふじいさん本人がHarwell1212さんなのではないかと推測しましたが、ごにょごにょしたメッセージで別の方だということが判明しました。第1回ウィキペディアタウンの際の懇親会で私の正面に座っていた方(仮に「ハーウェルさん」らとします)でした。

私がこの記事に引き込まれたのは主に2点、「初版から完成度が高かった点」、「『柳窪』でググってもほとんど情報が出てこない点」です。

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 ・東京から川を越え林を抜けるとそこには東久留米の町が!

 

完成度が高い初版

いわゆるウィキ記法を使いこなすのには慣れが必要です。各地のウィキペディアタウンではウィキペディアを初めて編集する方を何人も見てきましたが、初編集からマークアップを自在に使いこなせる人はいません。

この記事は初版から、出典の付け方、箇条書き、数字の半角化、外部リンクやカテゴリなどが整っていました。いくつか修正したい点はあったものの、大多数の初心者との違いは歴然としていました。

 

それぞれの節には文章を解説するのに効果的な写真が添えられています。1枚目の写真がアップロードされたのは2016年12月30日であり、記事が作成されたのは2017年2月25日です。何か月もかけて1つの記事を作成していたのだということがよくわかります。いずれもきちんとした構図で撮られており、説明写真として申し分ないものばかりです。(ただし写真のサイズが小さい点とメタデータが失われている点は気になり、ハーウェルさんが撮影者ではないのではないかと思いました)

この記事の初版のバイト数は19,000バイト。能力のある方ならこのくらいの文章を書くのは難しくないです。ちらっと聞いたハーウェルさんの現在の肩書や過去の経歴を考えると、このくらいは余裕だったでしょう。とはいえ、「簡潔に短く書かれているのが百科事典」「箇条書き主体、どうでもいい部分だけは冗長に書かれているのがウィキペディアの地誌」(例:東久留米市 - Wikipedia)という思い込みを外すのは容易ではありません。どんな記事をお手本にしたのかが気になりました。

 

ウェブ検索しても出てこない情報

「有志が市街化調整区域への逆線引きを申請」した出来事など、この柳窪という記事には興味深い歴史が書かれています。Googleマップ地理院地図と見比べながら記事を読み進めました。空中写真を眺めると「緑の島」がはっきりと見えます。「ウィキペディアタウンin東久留米」で南沢湧水群を訪れ、東京にも自然豊かな地域があることは理解していたのですが、柳窪の歴史と現代の保護活動まで合わせて、東久留米にはこんな地域があるのかと驚きました。

他の情報を得ようとウェブ検索してみたものの、単に「柳窪」と検索するだけではほとんど情報は得られません。これほど特色がある地域であれば、市民団体なり個人ブログなりで情報発信されていてもおかしくありません。所在地が東京都ということで埋もれてしまっているのでしょうか。ハーウェルさんはいままでウェブ上に出てこなかった紙の文献の存在を示してくださいました。

 

良質な記事の選考

新着投票所(メインページへの掲載)、月間新記事賞、良質な記事というのはウィキペディアコミュニティが内輪で行っている選考ごっこにすぎないのですが、メインページに掲載されることで閲覧数が跳ね上がったり、選考で隅から隅まで読んで的確なコメントを付けてくださる方がいたりと、記事を書く動機付けになります。

4月11日に始まった良質な記事の選考でも、質の向上の助けとなるコメントが付けられています。選考開始時点ではいくつか改善すべき点が残っており、おそらく選出されないだろうと思っていました。4月22日には三重県の地誌記事(志摩町和具 - Wikipediaはいつも私のお手本)を書いているMiyuki Meinakaさんが歴史節を加筆し、地理節や交通節を付け加える大幅加筆を行いました。さかおりさんは航空写真を貼付し、完成度の高い記事となりました。……

その2につづくかも。

 

ayc.hatenablog.comhttp://ayc.hatenablog.com/entry/2016/09/27/0832

 

 

 

 

 

 

 

小布施町立図書館まちとしょテラソを眺める

Library of the Yearを受賞した図書館

2016年3月にWikimedia TOWN×INA Valleyに参加する前、伊那市立図書館について検索してみた。2013年に「Library of the Year」という賞を受賞しているすごい図書館らしい。どうすごいのかはググってもよくわからなかった。

実際に高遠町図書館と伊那図書館を訪れてみると、いろいろな点に目を見張った(ただしそれは「Library of the Year」の受賞理由とは違う部分だと思う)。コピーして持ち帰った文献からは深い歴史が見えてきた(それも受賞理由とは違う部分だと思う)。自分の目で伊那市立図書館を見て、伊那市立図書館についての文献を読むことで、確かにこの図書館はいい図書館だと思った。

 

2016年8月には、前年に「Library of the Year」を受賞している多治見市図書館を訪れた。まとまった量の陶磁器資料コーナー以外で分かりやすい「ウリ」はないように見えた。「Library of the Year」でどんな点が高く評価されたのはわからなかったけれど、家に帰ってから小嶋智美さんによるプレゼンのPDFを読んで、少しだけ納得した。

同じく8月には、2011年に「Library of the Year」を受賞している小布施町立図書館まちとしょテラソ - Wikipediaを訪れた。中も外も印象的な建物で、居心地の良さを感じたが、やはり「Library of the Year」の受賞理由はわからない。「まちづくり」とのかかわりが評価されているようなので、図書館に入って2時間過ごしただけでわかるものではないのかもしれない。

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まちとしょテラソを訪れる

8月に現地を訪れる前から、ウィキペディアのまちとしょテラソの記事を加筆しようと考えていた。初夏には文献を集め始めており、まずは地元の愛知県図書館で『はなぼん』や『明日をひらく図書館』などの書籍を、『新建築』や『図書館雑誌』などの雑誌記事を確認した。そして8月には現地で建物と館内の写真を撮影し、その日の午後に県立長野図書館を訪れて『小布施町立図書館 図書館のあゆみ』をコピーした。

ただ、長野県には『愛知県図書館史年表資料考察: 愛知県における図書館のあゆみ』のような文献がないらしい。頼みの綱の『近代日本図書館のあゆみ 地方編』にも言及がない。『-図書館のあゆみ』はOPACで検索するとヒットする唯一の文献だったが、ただのパンフレットだったのでがっかりした。核となる文献がみつからないので加筆を取りやめていた。

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まちとしょテラソが加筆される

2017年3月20日には県立長野図書館でウィキペディアタウン「WikipediaLIB@信州」が行われた。平賀館長の推薦でまちとしょテラソも加筆対象となった。イベントに参加していたAncorone3さんはイベント終了後にも加筆を続け、「WikipediaLIB@信州」までとはまったく別の記事になった。

書籍、雑誌記事、新聞記事、町史、町報、ウェブサイトと、いろんな種類の文献が使われている。私は町報や町史などを手に取る前に文献集めをやめていた。『月刊社会教育』、ビッグイシュー 、『関東地区公共図書館協議会研究集会報告書』などにはそもそもたどり着けなかったと思う。

 まちとしょテラソ以前には小布施町に図書館がなかったのではないかという先入観があった。WikipediaLIB開催前のページには2006年以前の歴史が一行も書かれていない。ところが、Ancorone3さんの加筆で長い歴史が見えてきた。小布施町の図書館サービスは1923年からずっと続いているらしい。2006年まで図書館があった場所や、まちとしょテラソが建つ前にあった施設のこともわかるようになった。沿革節の小節タイトルは悩んだのではないかと思う。「小布施町立図書館まちとしょテラソ」という記事名なのに、まちとしょテラソができる前の歴史のほうがずっと長い。

Library of the Year受賞の要因となる「取り組み」節も充実した。「まちじゅう図書館」、「デジタルアーカイブ」、「花の童話大賞」の三本立てになっている。

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まちとしょテラソを読む

加筆された文章を読むと、現地を訪れた時のことを思い出す。

サクラの老木を避けるようにして作られた光庭がある

敷地には何本かのサクラの老木が植わっており、建物に向けて張り出している。この老木の枝を避けて壁が窪んでいる一角はとても印象的だった。外に出て写真を撮ろうと思っていたが、どうやら撮り忘れたらしい。

 

室内の気配を感じ取れる

小布施町の人口は2万人に過ぎない。まちとしょテラソの延床面積はわずか1,000m2。ワンフロアのうえにバックヤード部分が少ない。館内の人の動きを感じ取れるような雰囲気がある。

 

まちじゅう図書館

「主な取り組み」節にはまちじゅう図書館のイメージ画像が使われているが、この画像は図書館内の展示を撮っただけであって、実際のまちじゅう図書館ではないのが申し訳ない。いつか本物のまちじゅう図書館の写真を撮りに行きたい。

 

外壁の薄黄色は小布施町の名産である栗や土壁などから選ばれた

Infobox内のメイン画像はプロの写真家が撮ったものらしく、この場所の雰囲気をよく表しているけれど、外壁の色はわからない。「主な取り組み」節には昼間の外観の画像が使われていて、この薄黄色にもきちんと理由があったことは初めて知った。

 

布施正倉・小布施人百選・花の童話大賞

デジタルアーカイブ事業や花の童話大賞については、図書館を訪れただけではわからない。その意義が伝わりにくい事業にも思えるので、公式サイトの紹介ページ以外でネット上に残すのは重要なことだと思う。

 

 

昨秋にMiyuki Meinakaさんが飛騨市図書館 - Wikipediaを加筆された時には、現地を訪れて撮ってきた写真を追加した。まちとしょテラソでも何か援護射撃したい。

『長野県史』、『長野県教育史』、『長野県社会教育史』には何か言及があるだろうか。東京や愛知の図書館から相互貸借することは可能とはいっても、書棚から手に取って調べたい。

OPACで検索しても、小布施町立図書館単体での事業年報はみつからない。ということは町の社会教育施設全体の事業年報があるのだろうか。これは小布施町立図書館に対してレファレンスを行ってみないとわからない。

信濃毎日新聞データベースで検索するとどんな記事が見つかるだろう。全国紙にも取り組みが取り上げられるような図書館なので、何も見つからないことはないと思う。新聞記事データベースは現地在住でないと利用が難しい。

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※写真の撮影者はいずれもAsturio Cantabrio。Category:Machi tosho terrasow - Wikimedia Commonsにオリジナルサイズの画像があります。