振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

小樽市の電気館ビルを訪れる

(写真)裏側から見た電気館ビル。

2024年(令和6年)10月、北海道小樽市の電気館ビルを訪れました。1939年(昭和14年)竣工の映画館建築が現存しています。

 

1. 小樽電気館

所在地 : 北海道小樽市稲穂6丁目(1982年)
開館年 : 1914年7月10日、1939年11月(建て替え)
閉館年 : 1982年2月15日
『全国映画館総覧 1955』によると1939年11月開館。1925年・1927年・1930年・1934年・1936年・1941年・1943年・1947年・1950年の映画館名簿では「電気館」。1953年の映画館名簿では「小樽電気館」。1955年・1958年・1960年・1963年の映画館名簿では「電気館」。1966年・1969年・1973年・1975年・1978年・1980年の映画館名簿では「小樽電気館」。1985年の映画館名簿には掲載されていない。建物の電気館ビルは「長崎屋小樽店」南東70mに現存。

 

1.1 電気館ビル(1939年11月-1982年2月15日)

小樽都通り商店街には衣料品店ぎんざが入る電気館ビルがあります。1914年(大正3年)から1982年(昭和57年)まで2代に渡って存在した電気館に由来し、2代目電気館の建物が電気館ビルとして現存しています。

初代電気館が1939年(昭和14年)1月に火災で焼失した後、同年11月に同一地点で2代目電気館(電気館ビル)が再建されました。2代目電気館は1982年(昭和57年)に閉館したものの、40年以上経過した現在も1939年(昭和14年)竣工の建物が残っています。

(写真)アーケード内から見た電気館ビル。

(写真)電気館ビルの案内。

 

アーケード商店街に面する表側から見るとただの現代的なビルですが、裏側に回ると北海道らしいトタンの個性的な屋根が見えます。小樽市には文化財級の近代建築が山ほどあるので目立ちませんが、電気館ビルも立派な近代建築です。

(写真)裏側から見た電気館ビル。

(写真)小樽電気館が最後に掲載されている『映画館名簿 1982年』時事映画通信社、1982年。

 

1.2 初代電気館(1914年7月10日-1939年1月)

初代電気館が建てられたのは1914年(大正3年)7月であり、地上6階建ての塔屋が周辺のシンボルだったようです。戦前の小樽市にあった映画館としては、文献に最も多く登場するのが電気館です。

(写真)大正から昭和初期の初代電気館。『小樽なつかし写真帖』小樽市総合博物館、2008年。

(写真)大正から昭和初期の仲見世通りと初代電気館。『写真で辿る小樽』北海道新聞社、2014年。

(写真)現在の仲見世通り。奥が電気館ビル。

 

1930年の『日本映画事業総覧 昭和5年版』には小樽市の映画館として8館が掲載されています。他都市では函館市が10館、札幌市が8館、旭川市が4館、釧路市が4館、室蘭市が2館などでした。

(写真)『日本映画事業総覧 昭和5年版』国際映画通信社、1930年。

 

日本の映画館数がピークに達したのは1960年(昭和35年)であり、『映画便覧 1960年』には小樽市の映画館として24館が掲載されています。他都市では札幌市が51館と圧倒的ですが、函館市が24館、旭川市が19館、室蘭市が17館、釧路市が16館、夕張市が15館と、小樽市は札幌市に次ぐ映画館数を有する都市でした。

(写真)『映画便覧 1960年』時事通信社、1960年。

 

都通り商店街にアーケードが完成したのは1966年(昭和41年)のことであり、現在のアーケードは2002年(平成14年)にリニューアルされた2代目です。

(写真)アーケード建設中の都通り。『写真アルバム 小樽・後志の昭和』いき出版、2015年。

(写真)小樽都通り商店街のアーケード南端部。