振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

根羽村立図書館を訪れる

(写真)根羽村中心部の街並み。

2022年(令和4年)6月、長野県下伊那郡根羽村を訪れました。「根羽村の映画館」に続きます。

 

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1. 根羽村を訪れる

根羽村は長野県の最南端部にある人口約850人の自治体。長野県ではありますが(信濃川でも天竜川でも木曽川でもなく)矢作川の流域にあり、根羽村に降った雨は南西方向に流れて三河湾に注ぎます。このため愛知県西三河地方との結びつきが強く、国道153号は根羽村を通って愛知県豊田市に通じています。また、豊田市稲武地区から根羽村に対して路線バスが運行されており、路線バスで県境を越えることが可能です。

(写真)根羽村中心部の街並み。

(写真)根羽村中心部の街並み。

 

矢作川と小川川の合流点にある狭い盆地に町並みが形成されており、中心部の"坂町"以外にも坂の多い町です。豊田市側の入口にあった劇場・映画館の森盛会館の存在は興味深く、愛知県稲武町岐阜県上矢作町などからも集客したといいますが、劇場の痕跡は何も残っておらず、図書館で得られる資料にも乏しいのが残念。都市部だったら跡地に説明看板が立てられる題材かもしれません。

(写真)根羽村中心部の街並み。

(左)タバコ屋ショーケース。(右)ゴハンギョの道標。三州街道など複数が交わる三叉路。

 

高台で目立つ場所にある根羽村歴史民俗資料館は閉鎖されている状態に見えましたが、自治体公式サイト上では開館扱いになっています。実際はどうなのでしょう。バス停に時刻表すら貼られていないコミュニティバスなども含めて、田舎にありがちな情報公開の意識が低い自治体だと感じましたが、人口や職員数を考えれば仕方ないのかもしれません。

(写真)根羽村中心部の街並み。中央は根羽村役場庁舎。

 

2. 根羽村立図書館

2.1 図書館の歴史

1969年(昭和44年)には鉄筋コンクリート造の根羽村役場庁舎が完成しています。2021年度の『長野県公共図書館概況』によると、5年後の1974年(昭和49年)9月には庁舎内に図書館条例とともに根羽村立図書館が設置されたようです。長野県で公共図書館を有している自治体としては最も人口が少ないのが根羽村。人口1000人を切る自治体が約50年も前に図書館条例を定めたという点が教育県らしい。

2018年(平成30年)9月には根羽村役場の新庁舎が開庁し、図書館は役場とともに新庁舎に移転しました。中央入口を入って左手に役場があり、右手に図書館があります。部屋は施錠されていませんが消灯されており、来館者は自分で照明を付けて入るようです。

(写真)根羽村立図書館が入る根羽村役場庁舎。

 

2.2 図書館の特色

『長野県公共図書館概況』によると年間の開館日数は243日と少ないのですが、これは土日祝日を閉館日としているため。一方で開館時間は8時~17時であり、朝の開館時刻は長野県で最速です。公共図書館の貸出期間は一般的に2週間ですが、根羽村立図書館は1週間であるのも特徴です。

根羽村役場庁舎内にある根羽村立図書館の床面積は37m2。長野県内の中央館としてはぶっちぎりで小さく、分館を含めても最も小さい公共図書館です。年間の資料費は12万円と著しく少ないものの、人口1人あたりでは143円となり、長野県の平均の1/2程度です。現在の蔵書数は4,646冊であり、数年前から大幅に減少しているのが気になる。一般的な学校図書館より少ない規模だと思われますが、人口1人あたりでは長野県の平均とちょうど同じ5.5冊となります。年間貸出冊数は580冊であり、1人あたり貸出冊数は0.7冊。長野県の平均を大きく下回る数字ですが、2019年度は0.2冊だったことを考慮すると前進していると言えるか。しかし、根羽村役場に併設されている割には図書館の認知度が低そうです。

『長野県公共図書館概況』を眺めていると、佐久地方にある南相木村立ふれあい図書館が目につきました。南相木村の人口は約900人で根羽村と同程度ですが、2014年(平成26年)に開館した図書館の床面積は429m2と、根羽村立図書館の10倍以上あります。人口1人あたり資料費は2,172円、人口1人あたり蔵書数は44.5冊。人口1人あたり資料費も蔵書数も、長野県の全自治体の中で最も多い数字です。

(写真)根羽村立図書館の館内。

(左)根羽村の資料と新着図書。(右)分類番号がよくわからない一般書。

(左)ニューアーク式のブックカード。(右)絵本コーナー。

 

根羽村公式サイト上には図書館の利用案内すら記載されておらず、正確な休館日や開館時間を知ることができません。悩ましい。

(写真)郷土資料。愛知県西三河地方の自治体もある自治体史。


(左・右)郷土資料。