振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

新宮市立図書館を訪れる

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(写真)新宮市立図書館。

2021年(令和3年)10月、和歌山県新宮市新宮市立図書館を訪れました。

10月3日に丹鶴ホール(たんかくホール、新宮市文化複合施設)がオープンしたばかり。4階には図書館の新館が開館しています。「新宮市を訪れる」からの続きです。「新宮市の映画館」に続きます。

ayc.hatenablog.com

 

1. 新宮市立図書館を訪れる

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(地図)和歌山県における新宮市の位置。©OpenStreetMap contributors

 

1.1 図書館の歴史

新宮市立図書館の歴史については新宮市立図書館 - Wikipediaが詳しい。1900年(明治33年)に和歌山県で3番目の図書館として丹鶴同窓会付属図書館が開館し、新宮市出身の作家である佐藤春夫 - Wikipediaもこの図書館について記しています。開館当初から開架式図書館だったというのは本当でしょうか。

戦後の1948年(昭和23年)には新宮市による公民館図書部が発足し、1953年(昭和28年)には初代新宮市立図書館が開館。初代館長が郷土資料の収集とともに郷土史研究を重視したとのことで、図書館内に設置された熊野文化会(現・熊野地方史研究会)は今日まで続く雑誌『熊野誌』を刊行しています。

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(写真)1953年から1973年まで使用された初代図書館。『紀南の昭和』樹林舎、2017年。※著作権は切れていません。

 

1973年(昭和48年)には2代目図書館が開館し、1998年(平成10年)には図書館内に中上健次資料収集室が設置されました。2010年代には多目的ホールや図書館が入る複合施設の建設が計画され、プロポーザルから6年が経ちましたが2021年(令和3年)に開館しています。

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(写真)1973年から2021年まで使用された2代目図書館。

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(写真)古そうな図書返却ポスト

 

1.2 丹鶴ホール

丹鶴ホールは新宮市立丹鶴小学校と新宮市民会館の跡地に建設されており、徒歩での入館者は小学校の校門を模した門をくぐって入ることになります。

建物は4階建ての複合施設であり、1階から3階には主に多目的ホールが、4階には図書館が入っています。2階の外周部にはかなり中途半端な「熊野学」コーナーがありますが、もともとは「熊野学」を多目的ホール・図書館と並ぶ3本目の柱とする計画だったようです。

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(写真)丹鶴ホール(奥)。

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(左)丹鶴ホールと「丹鶴小学校跡」の門。(右)「熊野学」コーナー。

 

丹鶴ホールの総事業費は62億5000万円とのこと。2017年(平成29年)には7階建ての新宮市役所新庁舎も完成していますが、市役所の総事業費は約37億円だそうです。

丹鶴ホールも市役所も角ばった躯体の巨大さが印象的です。周辺の街並みに溶け込んでおらず、見栄えだけはよい箱物行政の匂いを感じてしまいます。新宮市は人口減少が著しい自治体の一つで、2万6000人を切っています。これほど大きな施設が必要なのでしょうか。

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(写真)新宮市役所。

 

1.3 図書館の館内

ざっくりいえば北側に児童書などが、南側に一般書・郷土資料・中上健次コーナー・事務室などがあると言えますが、フロアはほぼ正方形であるため方角を意識しづらいし、フロアマップも見やすいとはいえません。その代わりに "内側"(30番台の書架の内側)と "外側"(30番台の書架の外側)を意識することになりますが、似たような構造の図書館が思い当たりません。

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(写真)図書館のフロアマップ。

 

もっとも特徴的なコーナーは新宮市出身の作家である中上健次 - Wikipediaのコーナー。中上の略年譜や書斎風の椅子・机・本棚などが設置されています。中上が生前に使っていた原稿用紙も置いてあり、旧館時代から(一人1枚に限って)持ち帰り可能だったようです。

郷土資料といえる書架が北・西・東の3面の "外側" に分散しているのは厄介。和歌山県三重県南部のものがある自治体史は、フロアマップに記された「郷土資料」ではなく「熊野あれこれ」の書架にありました。

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(写真)"外側"。中上健次コーナー近くの閲覧席。中上健次コーナーは基本的に撮影禁止。

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(写真)中上健次の原稿の複製。

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(左)「熊野ゆかりの人々」。(右)図書館も創刊に関わった雑誌『熊野誌』。

 

ふだん自身が使わないコーナーでは、絵本などがあるおはなしのへやはフロア中央部にあり、その入口はカウンターから見える場所にあります。児童書の書架はカウンターの正面にあり、この図書館では絵本や児童書が主役のようです。

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(写真)"内側"。児童書。

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(写真)"内側"。児童書。

 

1.4 館内の写真

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(写真)"外側"。雑誌コーナーと閲覧席。

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(写真)"内側"。文芸書。

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(写真)"内側"。文芸書。

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(写真)"内側"。文芸書や髙文庫。

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(写真)"内側" の閲覧席。奥はおはなしのへや。

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(写真)"内側"。236 スペイン史の本。3冊。いまいち。

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(写真)"外側"。マンガコーナーや閲覧席。

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(写真)"外側"。木製書架。熊野材なのかどうかは不明。

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(写真)"外側"。髙文庫。髙郁代さん・髙美智代さんからの寄贈された書道関係図書とのことだけど、ぐぐっても2人の情報が全然出てこない…

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(写真)"外側"。展示コーナーにある「追悼コーナー」。立花隆さいとう・たかを

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(写真)屋外テラス。新宮城や熊野川対岸の三重県紀宝町がよく見える。