振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

北勢町阿下喜を訪れる

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2021年(令和3年)8月、三重県いなべ市北勢町阿下喜(あげき)を訪れました。「北勢町阿下喜の映画館」に続きます。

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1. 阿下喜を歩く

1.1 阿下喜の通り

いなべ市三重県北部にある自治体であり、2003年(平成15年)に員弁郡北勢町員弁町大安町・藤原町の4町が合併して発足しました。北勢町の前身は阿下喜町であり、阿下喜町は員弁郡で最も早く1929年(昭和4年)に町制を敷いた町です。

かつての中心市街地には見栄えのする近代建築や商店街が残っており、いなべ市は昭和の面影をテーマとするまちづくりを検討しているようです。本町通りにあるのが1939年(昭和14年)竣工の旧阿下喜郵便局。外観からは郵便局だったことがわからず、巨大な建物が廃墟として残っているだけです。周辺のランドマークだった建物なので活用しないのは惜しい。

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(写真)本町通りにある旧阿下喜郵便局。

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(左)本町通りの街路灯。(右)北町通り。

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(写真)1963年の阿下喜市街地。地図・空中写真閲覧サービス

 

古居和風建築や商店が最も多いのは西町通り。本町通りや北町通りほど道幅が広くないため商店が残ったのかもしれません。 

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(写真)西町通り。左はあげき美容室、右は小寺薬品。

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(左)西町通り。(右)西町通り。

 

本町通り・西町通り・北町通りに挟まれたエリアには、2016年(平成28年)には旅館の建物を改装して上木食堂がオープン。本町通りにある岩田商店、北町通りにあるフランス料理店のノールなども同系列のようで、歩行者の少ない阿下喜の町でこれらの店舗はにぎわっています。近年の阿下喜には移住者が増えているとのことです。

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(写真)上木食堂。

 

三岐鉄道北勢線阿下喜駅付近には「いなべ市商工案内図」がありました。"いなべ市" や "近鉄阿下喜駅" の文字が見えます。いなべ市の発足は2003年12月1日、阿下喜駅三岐鉄道移管は2003年4月1日なので矛盾が生じていますが、2003年頃の地図なのでしょうか。

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(写真)いなべ市商工案内図。



1.2 桐林館

阿下喜市街地にある唯一の登録有形文化財が桐林館(とうりんかん)。1937年に建設された「桐林館(旧阿下喜小学校校舎)」、校舎竣工前の1921年(大正10年)に建設された「旧阿下喜小学校門及び石柵」が登録有形文化財に登録されています。保存されたのは3棟の校舎のうち1棟のみであり、北側に数十メートル移築されているそうです。

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(写真)桐林館。

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(写真)桐林館の内部。

 

2020年(令和2年)8月には「桐林館喫茶室」がリニューアル。この日は満席だったため入りませんでしたが、注文も含めて会話がNGの "筆談カフェ" というコンセプトがあるようです。上木食堂と桐林館喫茶室は観光客が多いみたい。

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(左)「筆談カフェ」。(右)校長室。

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(写真)校門及び石柵。

 

1.3 旧阿下喜駅

2021年(令和3年)7月には阿下喜市街地に鉄道資料館「旧阿下喜駅」が開館し、毎月第1・第3日曜のみ開館しています。外観は15年前に取り壊された阿下喜駅の駅舎を模しており、建築関係を本業とするオーナーが図面もない状態から建てたそうです。オーナー夫妻は北勢線の存続運動を推進した方であり、阿下喜駅近くの軽便鉄道博物館を運営している方でもある。

※2021年8月1日時点では公式サイトはないようであり、また正式名称が「旧阿下喜駅」であるかどうかもわかりません。

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(写真)旧阿下喜駅

 

内部の展示物は主に "蒸気機関車" や "鉄道模型" や "北勢線" であり、真鍮で自作した鉄道模型、実際に阿下喜駅で使用されていた切符販売窓口やたばこケースなどがありました。館内には複数のNゲージジオラマがありますが、建物の外周にもレールが敷かれており、また子供が乗れるサイズの模型もありました。

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(写真)展示。写真に見える柱や「おみやげ・キャラメル・たばこ」のプレートなどは阿下喜駅で実際に使用されていたもの。

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(写真)展示。行先板や車名板。

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(写真)展示。観光地のペナント。左上から熱海、博多、銀閣寺、天橋立、右上から長崎、榛名湖、蔵王摩周湖金閣寺