振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

Wikipedia記事におけるOpenStreetMapの活用(Template:Infobox mapframe)

本エントリーはOpenStreetMap Advent Calendar 2018に登録しています。画像はいずれもWikipedia日本語版の各記事です。

qiita.com

 

1. Template:Infobox mapframeとは

私はWikipediaの編集を行うウィキペディアンですが、OpenStreetMapの編集を行うマッパーでもあります。2018年後半にWikipedia各記事に使われるようになった「Template:Infobox mapframe - Wikipedia」 を紹介します。

Template:Infobox mapframeでは、Wikipedia各記事の右上にあるInfobox内で使うmapframe地図を生成します。元となる地図にはOpenStreetMapが使用されています。

 

紙の百科事典はその事物の所在地の情報に弱いという欠点がありました。Wikipedia各記事にはその事物の座標が登録されていることは多かったのですが、座標からGeoHackの画面に飛んだうえで地図サービスを指定して地図を閲覧するのは面倒でした。「Template:Location map - Wikipedia」を使って地図を表示することもできますが、この方法は必ずしもわかりやすい図が作成できるわけではありませんでした。

 

2018年8月2日にK-icznさんがWikipedia英語版から翻訳してから、Wikipedia日本語版記事にTemplate:Infobox mapframeが多用されるようになりました。Wikipedia英語版でも普及したのは2018年になってからではないかと思います。ズームレベルや中心点を自由に指定できることもあり、Wikipediaにおける地図の表現の幅が大きく広がりました。

 

2. Template:Infobox mapframeの導入事例

これまでのWikipedia記事に掲載されていた地図の例

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(左)地図に手書き。(右)Template:Location mapを使用。


 Template:Infobox mapframeを用いた地図の例

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(画像)Wikipedia「片瀬江ノ島駅」。ズームレベル14。

 

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(画像)アルカサバ山 - Wikipedia。ズームレベル5。アフリカ大陸に近いこともわかる。

 

Template:Infobox mapframeでは特定の地点ではなく範囲を示した図を作成することもでき、河川や道路などの経路を示した図を作成することもできます。私は河川の記事を作成することも多いので、これまでは難しかった経路を示せることには魅力を感じます。

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(画像)北区 (京都市) - Wikipedia。範囲を示している。

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(画像)名阪国道 - Wikipedia。経路を示している。

 

Template:Infobox mapframeでは複数地点を示した図を作成することもできます。複数地点を示す場合はTemplate:Location mapよりはるかに使いやすいです。愛知県内の図書館記事には順次Template:Infobox mapframeを導入しようと思っています。

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(画像)愛知サマーセミナー - Wikipedia。会場の変遷を図化。

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(画像)蒲郡市立図書館 - Wikipedia。本館と分室の所在地を図化。

 

3. なし崩し的な設置への懸念

Template:Infobox mapframeの導入事例をいくつか見てきましたが、このTemplateが導入された2018年8月以後、Wikipedia各記事になし崩し的に設置されてしまっているのではないかとも感じています。

例えば、下の「豊田市」や「北秋田市」や「愛知県立時習館高等学校」の記事に設置されたInfobox mapframeは読者の理解に役立っていると言えるのでしょうか。元から設置されていた基礎自治体位置図だけで十分ではないかという気もします。設定したズームレベルのせいでわかりにくくなっているのかもしれません。

また、「市川一家4人殺人事件」の事件現場を地図で示すことは適切でしょうか。“地図を掲載しない” という判断をすべき記事もあります。

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(左)豊田市 - Wikipedia。(中)北秋田市 - Wikipedia。(右)愛知県立時習館高等学校 - Wikipedia。本当にわかりやすくなった?

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(画像)市川一家4人殺人事件 - Wikipedia

 

ズームレベルを大きくする場合、地名が入っていないと “道路だけが描かれているよくわからない地図” になってしまいがちです。しかし地名が入っていると “必要以上に地名の存在感が大きくて主題が不明確になってしまう地図” にもなりかねません。

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(左・右)刈谷市の映画館のマッピング。左より右のほうがわかりやすいのでは。

 

4. まとめ

現在でもWikipedia日本語版の2,000記事弱に使用されていますが、10,000記事を超えるのは時間の問題です。Wikipedia内でどんな地図を掲載するのが適切か議論したうえで、Template:Infobox mapframeの設置が進んでいくことを期待しています。