振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

清須市立図書館を訪れる

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(写真)「日本一ビールに詳しくなるための図書コーナー」。

 

愛知県清須市を訪れる

愛知県清須市名古屋市のすぐ北側にある人口約8万人の自治体。2005年に西春日井郡西枇杷島町清洲町・新川町が合併して発足し、2009年には西春日井郡春日町編入した。合併前には清洲町や清洲駅清洲ジャンクションのように「清洲」という漢字が当てられることが多かったが、新自治体名には「清須」が当てられている。こんなわけで “清須市清洲中学校” のような厄介な組織名も生まれた。

4町が合併したといってもその面積は17.35km2しかない。その中にJR東海道本線名鉄名古屋本線名鉄犬山線東海交通事業城北線(、東海道新幹線)の4鉄道路線が走っているし、国道はないものの愛知県道が縦横に走っている。一見すると自治体内の移動は楽に見えるが、新川や五条川などの河川、豊和工業三菱重工業などの工場、鉄道線路などが邪魔をして、他市よりもずっと移動がしづらい。

鉄道で清須市立図書館を訪れる場合は、JR東海道本線清洲駅から徒歩15分。旧4町の中でもっとも北側にあった春日町域に、図書館・美術館・公園からなる清須市夢広場はるひが整備されている。

合併前の4町には公共図書館がなかった。合併後の2012年時点では、愛知県の37市の中で唯一図書館を持たない市だった。保健福祉センターの建物を全面改修し、2012年7月7日に清須市立図書館が開館した。開館時から図書館流通センターが指定管理者となっている。2016年9月に作成した清須市立図書館 - Wikipediaも参照してください。

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(左)愛知県における清須市の位置。(右)清須市の旧4自治体と図書館の位置。出典 : OpenStreetMap。作者 : OpenStreetMap contributor。

清須市立図書館を訪れる

2016年夏にも清須市立図書館を訪れ、館内の写真を撮らせてもらった。この図書館の取り組みやイベントは、中日新聞や図書館情報サイトのカレントアウェアネスにたびたび登場する。2017年以後に設置されたビール図書コーナーや御園座のプログラム棚などに興味を持ち、また表紙が目を引く魅力的な図書館だよりにも惹かれて、2018年11月には2年ぶりに清須市立図書館を訪れた。図書館だより2018年12月号(最新号)では、“清須市立図書館に来館した漫画家・鳥山明へのインタビュー” という、図書館だよりらしからぬ特集記事が掲載されている。

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(写真)図書館だよりの表紙。2018年7月号・11月号・12月号。公式サイトより

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(写真)清須市立図書館。2016年8月撮影。

 

カウンターの手前にはビール図書コーナーや御園座のプログラム棚があるが、さらにその前には巨大なイラストのポスターが展示されている。これは「さがし絵クイズ挑戦状」というイベントのためのイラストで、小学生が毎月図書館に来るための仕掛けになっている。イラストレーターのまつやまたかしは鳥山明のアシスタント時代に清洲町に住んでいたらしく、図書館だより2018年9月号にはまつやまのインタビュー記事が掲載されている。
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(写真)イベント「さがし絵クイズ挑戦状」。イラストはまつやまたかし。

 

カウンターの手前右側には、赤く塗られた壁紙が目立つ御園座プログラム棚がある。御園座の元営業部長である長谷川勝彦が清須市在住である縁で寄贈を受けたらしい。2017年11月・2018年1月・3月には長谷川による講演会「歌舞伎・御園座語り」も開催されている。「さがし絵クイズ挑戦状」にしても御園座プログラム棚にしても、市民と地域をつなぐ意識を強く感じる。2018年4月に開館した御園座の新劇場には、旧劇場時代と同じく演劇図書館が設けられているらしい。まだ訪れていない。

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(写真)御園座プログラムコーナー。

 

カウンターの手前左側には、黄色く塗られた書架が目立つ「日本一ビールに詳しくなるための図書コーナー」がある。このコーナーは2017年7月6日に開設された。清須市にある「キリンビール名古屋工場」、隣接する北名古屋市にある「名古屋芸術大学」、「清須市立図書館」の3者による産学官連携事業の一環だそう。2,000冊を収蔵できる書架のデザインは、名古屋芸術大学デザイン学部の学生が担当した。ビールのみならず、アルコールやその他飲食関係の書籍が集められているほか、ビールの製造工程や名古屋工場の取り組みなどが紹介されている。2017年の設置時点の蔵書数は約400冊。

開設時には清須市立図書館長・清須市長・キリンビール名古屋工場長・名古屋芸術大学長らが参加してテープカットを行ったらしい。中日新聞はもちろんのこと、毎日新聞産経新聞などにも報じられている。メディアや市民からの注目を集める取り組みをしている点に好感が持てる。なお清須市立図書館では、キリンビール名古屋工場の見学、名古屋工場醸造部長によるビールのレクチャーなども開催されている。2016年7月に開催された「ビールの楽しみ方講座」はビールを飲みながら行ったイベントで、申し込み受付開始日に定員に達したという。

このコーナーには漫画本もある。『神の雫』(ワイン)、『バーテンダー』(酒)、『クッキングパパ』(料理)、『美味しんぼ』(グルメ)、『もやしもん』(菌)などがあった。図書館としての歴史が浅いために蔵書数は少ないが、5年後・10年後にはこのコーナーがどうなっているのか楽しみ。棚板が地面と平行ではなくうねうねしているこの書架、近づいてみると書架のせいで配架が汚なく見えなくもない。図書館員はどう感じるのだろう。個人的にはデザイン性と実用性のさじ加減がうまいと思うけれど。

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 「日本一ビールに詳しくなるための図書コーナー」。(左)2階から。(中)外側から。(右)内側。

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  「日本一ビールに詳しくなるための図書コーナー」。(写真)ビールの製造工程の紹介。

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  「日本一ビールに詳しくなるための図書コーナー」。(左)棚板が斜めになった書架。(右)漫画本。

 

なお、図書館東側の公園には宮重大根 - Wikipediaのモニュメントが生えている。宮重大根とは青首大根のルーツになった品種で、清須市春日町宮重が発祥の地なんだそうだ。清須市立図書館は利用者と一緒に宮重大根を育てるプロジェクト(日々の水やりは図書館職員)も行っており、2018年は今週末の12月8日が収穫日だそうだ。

 図書館としては愛知県最後発の自治体だけあって、大規模自治体と比べると蔵書数は少ないけれど、館内を歩いているといろんなコーナーに目がいく。センスがいいんだろうな。遊び心も忘れない。地道に地域の著名人や大学や産業を巻き込んでいるイベント/プロジェクトの数々も含めて、もっと多くの方に知られてほしい図書館だと思う。

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 (写真)新着図書コーナー。説明書きがいいですね。

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 一般書のテーマ展示。(左)表側「懐古趣味〈平成〉」。(右)裏側「懐古趣味〈昭和〉」。

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児童書のテーマ展示。いちいち凝ってる。(左)「日本の伝統文化」。2018年11月。(右)「おしり」。2016年8月。うんちとかおならって書いてあるよ。

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 (写真)新聞・雑誌コーナー。ピアノを使って定期的にミニコンサートを開催。

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 (左)郷土資料コーナー。図書館の歴史が浅いので少なめ。(右)図書館と同一建物内の歴史資料展示室。

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(左)はるひ夢の森公園に生えてる宮重大根。奥が図書館。(右)時計塔にも大根の葉っぱ。

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
OpenStreetMapを除き、このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。ただし図書館だよりは清須市立図書館の著作物です。