振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「福井ウィキペディアタウン in福井市東郷」に参加する

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(写真)晴天日の堂田川。2017年8月29日。出典 : Wikimedia Commons。作者 : KaoLee

 

2017年11月18日(土)、福井県立図書館が主催した「福井ウィキペディアタウン in福井市東郷」に参加した。午前中は東郷地区でガイドの説明を聞きながらまちあるきを行い、午後には福井県立図書館に移動して、講師による説明を聞いた後にウィキペディアの編集を行った。

今回の対象となった東郷 (福井市) - Wikipediaという地区は、1955年までは足羽郡東郷村 (福井県足羽郡) - Wikipediaという単独の自治体だった。その後足羽郡足羽町 - Wikipediaとなり、1971年に福井市編入合併された。山間を流れてきた足羽川が平地に出た場所に築かれた在郷町で、宿場町としての性格もあったらしい。足羽川用水を生かした稲作が盛んで、「ふくい東郷米」というブランド米を生産している。

11/18 「福井ウィキペディアタウン in福井市東郷」 - 福井県立図書館・文書館・文学館

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(地図)東郷地区の位置。出典 : OpenStreetMap。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

集合場所となったのは、JR越美北線越前東郷駅から徒歩1分の定食屋「こびり庵」。東郷地区のアンテナショップでもあり、2016年1月にリニューアルオープンしたばかりらしい。参加者は関西や長野県から来た図書館員もいれば、地元でメガネ店を経営してる方もいた。ガイドを務めてくださったのは東郷ふるさとおこし協議会の高嶋了一さん。

 

スケジュール
10:00-10-15 開会・概要説明 [こびり庵]
10:15-12:15 東郷まち歩き[福井市東郷地区]
12:15-13:40 昼休み[こびり庵]
~各自で福井県立図書館まで移動~
13:40-14:10 Wikipediaについての説明[福井県立図書館]
14:10-16:30 資料調査、Wikipediaの編集[福井県立図書館]
16:30-17:00 成果発表・講評・まとめ[福井県立図書館]

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(写真)集合場所・昼食場所の「こびり庵」。

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(写真)ガイドの高嶋了一さん。

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(地図)まちあるきコース。出典 : OpenStreetMap。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

まちあるき開始。こびり庵を出ると200メートル南の白崎豆腐店(旭屋)へ。商品は豆腐と厚揚げだけ、作る日も限られているらしい。厚揚げって楽だし栄養があるから一人暮らししてた時はよく買ってたけど、作ってる光景は初めて見た。

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 (写真)古い建物が残る東郷地区中心部。

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 (写真)白崎豆腐店

 

 白崎豆腐店の南側には、500メートルに渡って堂田川(どうでんがわ)という小川の両岸に道路が走る、東郷地区のメインストリートがある。両岸が一方通行になっているが、県道に指定されてて交通量が多い。

歩道は道路の外側ではなく内側にあり、40メートルおきくらいに架かってる橋を境に川の北側と南側を行ったり来たりする。この日は雨だったのできれいな風景ではなかったけれど、水面や植え込みを見るときちんと整備された川なのがよくわかる。夏の晴れた日にもう一度来たいけれど、雪のある冬場も雰囲気がいいだろうな。河岸にはかっぱの置き物があったり、稲荷神社の常夜燈があったりした。東郷地区でもっとも古い地蔵院にも寄る。

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 (写真)堂田川沿いを歩く参加者。(中)かっぱの置き物。

 

堂田川が道路中央から外れると、目的地のひとつである安本酒造がある。安本酒造の店舗兼主屋、土蔵、仕込蔵、米蔵、煙突などの建物群は、2015年に登録有形文化財に登録されている。道路を挟んで安本酒造と向かい合っているメガネの今村の建物もよく見るとかなり古そう。メガネの今村の3軒西隣には、大きな間口で2階が妻入屋根という風変わりな今村呉服店があった。今村呉服店の向かいは長い塀を持つ今村家。航空写真で見ると敷地の広さや主屋の大きさがよくわかる。

メガネの今村のすぐ西側にある敷地は映画館「東郷文化会館」の跡地らしい。時事通信社の『映画館名簿』などの文献で調べた限りでは「1960年頃に存在した」としかわからなかったけれど、高嶋さんやメガネの今村さんに聞いたりして場所を判明させられた。(昭和の大合併以前の自治体ベースで)映画館がなかった町に住む者としては、この街には “かつて映画館があった” という歴史は大切にしてほしいと思う。

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 (左)毛利酒造。(右)映画館「東郷文化会館」跡地。

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(写真)安本酒造。

 

 安本酒造の東側、町の中と外を分ける場所にも和風建築があった。福井市が作成したパンフレット「在郷暮らし東郷」の地図にも掲載されているこの民家は「増山家」というらしい。東郷地区にある建造物の文化財は安本酒造だけみたいだけど、目を引く建物はたくさんある。

その後は東郷地区の南側にある槇山のふもとの三社神社へ。神社の鳥居を見るといつも思うけど、こんなに巨大でお金も労力もかかりそうなものをいつ頃誰が建てたんだろう。

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(左)三社神社の鳥居。(中)晴天日の三社神社。2017年8月29日。出典 : Wikimedia Commons。作者 : Suomi3。(右)三社神社前の長命地蔵。2017年8月29日出典 : Wikimedia Commons。作者 : Suomi3

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(写真)こびり庵でおひるごはん。

 

こびり庵でおひるごはんを食べた後、車に乗り合わせるなどして東郷地区から福井県立図書館に移動。以下の5記事を新規作成しました。私は講師のくさかきゅうはちさんのアシスタントとして、会場の会議室内をうろうろしていました。

 

地蔵院 (福井市) - Wikipedia

三社神社 (福井市) - Wikipedia

安本酒造 - Wikipedia

槇山 - Wikipedia

足羽川用水 - Wikipedia

 

「福井ウィキペディアタウン in福井市東郷」の半年後、2018年5月には「 福井ウィキペディアタウン in足羽山 」にも参加した。まちあるきをガイドに、ウィキペディア編集を講師に任せて、主催者は場所と文献の提供に徹するウィキペディアタウンも多い。福井の場合はそうでない。自分たちでも事前にまちあるきをして、その題材の面白みを理解したうえでウィキペディア編集の準備をしている。ウィキペディアに書くことを意識して文献を準備するから、参加者がほしい文献を集められる。

 

東郷地区は福井市中心部から約8キロメートルの距離がある。昭和の大合併(もしくは1971年)まで単独自治体だっただけあって、小学校も郵便局も銀行も駐在所も鉄道駅もあって、いろんなものが地区内で完結している。こういう町についてガイドや地元の方の話を聞きながら歩くのは楽しい。
とはいえ、Wikipediaで編集対象となったひとつひとつの題材を見ると、ややパンチ力が弱いのも確か。それぞれの神社や寺や山は東郷地区にとって重要な存在ではあっても、福井市の外にまで知られているような題材ではない。東郷地区をまちあるきして得たストーリーをWikipediaにうまく組み込むには、「東郷 (福井市) - Wikipedia」を全員で加筆する方法もいいんじゃないかと思った。つまり、ある班は地蔵院や三社神社や稲荷神社を題材に歴史節を加筆、別の班は安本酒造や毛利酒造などを題材に経済節を加筆、また別の班は堂田川や槇山を題材に地理節を加筆……とする方法。これは主催者に伝えた。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
OpenStreetMapを除き、このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。