名古屋市に隣接している愛知県春日井市は県内第6位の人口30万人を有する自治体。図書館は春日井市図書館の1館だけですが、10の分室があり、ひときわ規模の大きな分室として東部市民センター図書室があります。高蔵寺ニュータウンにあるこの図書室はこの2018年3月19日をもって閉室となり、4月1日には500mほど離れた多世代交流拠点施設「グルッポふじとう」に「図書館」が開室します(名称は「図書館」だが条例上の位置づけは図書室のままと思われる)。
1か月後の閉室を前にして、初めて東部市民センター図書室を訪れました。また、春日井市図書館は何度も訪れたことがあります。図書館/図書室のことを書く前に、まずは春日井市の映画館を取り上げます。
このブログにおける文章は クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。
春日井市の映画館
映画黄金期の春日井市には5館の映画館があったが、成人映画館のユニオン劇場を除けば1970年代までに閉館した。1980年代前半に開館した春日井コロナシネマは初期にできたシネコンのひとつだったが、2017年2月26日をもって閉館した。2008年には直線距離で1kmしか離れていない西春日井郡豊山町にミッドランドシネマ名古屋空港が開館しており、コロナグループはよく10年近くも閉館を遅らせたと感心する。
映画館の場所を特定する
映画館の情報はウェブに残したい。現役のユニオン劇場と閉館したばかりの春日井コロナシネマを除く4館はいずれも、ウェブ検索だけでは場所すら特定できないので、春日井市図書館にある住宅地図で探した。春日井市図書館が所蔵している春日井市域の住宅地図のうち、もっとも古いのが1965年版、次いで1983年版である。春日井市域であっても愛知県図書館のほうが年代の網羅性が高いと思われる。
鳥居松劇場と五月座と2館は1965年の住宅地図で所在地が判明した。
鳥居松東映は鳥居松商店街と愛知県道25号の交差地部に近い場所にあった(消えた映画館の記憶地図での座標)。13階建のマンション「マストスクエア春日井鳥居松」から道路を挟んで南東側、現在は林永興行株式会社(外観は住宅)がある位置にあった。
鳥居松商店街は名古屋城下と中山道を結ぶ下街道(したかいどう)の一部だった。下街道を約7km下ると旧東春日井郡坂下町の坂下市街地がある。坂下市街地中心部にある坂下町2丁目交差点でから北東に折れると、現在は坂下区公会堂の南側にある農地に五月座があった(消えた映画館の記憶地図での座標)。勝川キネマがあった勝川も下街道沿いに発展した町である。
春日井市の映画館に関する文献
春日井市にあった映画館のうち、坂下の五月座は『写真集春日井 明治・大正・昭和』(創文出版社・1989年)や『坂下小創立百周年記念誌』(春日井市立坂下小学校・1973年)といった文献に登場する。なお、ユニオン劇場は港町キネマ通りに詳細な記事が掲載されている。
しかし、春日井の二大商業中心地にあったはずの鳥居松劇場と勝川キネマや、繁栄していた頃の高蔵寺商店街にあったはずの高蔵劇場については、各年版の『映画館名簿』にしか登場しない。勝川キネマと高蔵劇場は1965年の住宅地図にも掲載されておらず、場所の特定ができなかった。
『春日井市史』などに掲載されていないのは仕方ないとしても、『勝川商店街史』『勝川今昔ものがたり』などの“それらしい”文献にも登場しない。現在の春日井市は愛知県第6位の人口30万人を擁するが、1940年時点では勝川町が人口11,000人、鳥居松“村”が人口6,000人でしかなく、一宮や瀬戸はもちろん小牧よりも小さな町だったらしい。現在の自治体規模を考えると、中心市街地にあった映画館の情報が驚くほど少なく見えるが、これは仕方ないのかもしれない。
(地図)春日井市にある/あった映画館の地図。上が春日井市役所周辺。下が春日井市全域。この2枚の出典はOpenStreetMap。作者はOpenStreetMap contributor。
(写真)春日井市にただひとつ残る映画館「ユニオン劇場」。
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「春日井市図書館を訪れる」に続く予定。