振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

安曇野市の図書館を訪れる

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8月19日(土)に開催された「WikipediaLIB@信州 #02 【小諸編】」の前日、JR大糸線沿線にある安曇野市豊科図書館、松川村図書館、安曇野市中央図書館を訪れた。

 

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(地図)OpenStreetMapより。松本市の北西方向にある安曇野の図書館。

 

安曇野市の図書館

安曇野市 - Wikipedia

3町2村が合併して2005年に誕生した安曇野市の人口は約9万6000人。長野県の自治体の人口は、長野市(37万人)、松本市(24万人)、上田市(16万人)、飯田市(10.0万人)、佐久市(10.0万人)、安曇野市(9.6万人)とつづく。安曇野市となった3町2村の人口は、Wikipediaによると穂高町(3.2万人)、豊科町(2.8万人)、三郷村(1.8万人)、明科町(0.9万人)、堀金村(0.9万人)の順で、旧穂高町と旧豊科町はそれなりに大きな町だったらしい。

 

合併後の安曇野市は旧穂高町・旧豊科町・旧三郷村の3か所に交流学習センターを建設しており、それぞれ安曇野市図書館の本館または分館が入っている。2009年には穂高交流学習センター「みらい」に安曇野市中央図書館が、2011年には豊科交流学習センター「きぼう」に安曇野市豊科図書館が開館し、2018年には三郷交流学習センターに安曇野市三郷図書館が開館する予定。

 

 

安曇野市豊科図書館

豊科駅から安曇野市豊科図書館へは徒歩15分。閑散とした駅前から古びた旅館「八千代館」「あづみ館」を横目に駅前通りを歩く。駅から5分ほど歩いて横切る千国街道糸魚川街道)沿いが中心市街地らしく、銀行や飲食店などがひしめく中に「まちづくり会館」という建物があった。観光案内所的な建物かと思って訪れたが、そうではないみたい。

 

法蔵寺の脇にある路地を抜けると、橙色の屋根で統一された文化施設群が見えてくる。芝生広場を囲むように豊科交流学習センター「きぼう」と安曇野市豊科近代美術館がある。「きぼう」には中世ヨーロッパの修道院を思わせるようなロマネスク風の回廊(陳腐な表現)があるが、この外観は単なるイメージの演出であって、館内はありきたりな複合施設のそれだった。

安曇野市による交流学習センターの紹介文を読むと、「きぼう」の建設費は約12億円。全体の床面積は3,200m2、図書館部分の床面積は956m2。開架に6万冊、閉架に6,000冊を収蔵できるとのこと。

https://www.city.azumino.nagano.jp/uploaded/attachment/5338.pdf

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(左)左が安曇野市豊科近代美術館、右が豊科交流学習センター「きぼう」。(右)豊科図書館の入口。

 

合併前の旧豊科町と旧穂高町にはほとんど人口に差がない。中央図書館をどちらに建設するか議論があったのでは。結局安曇野市役所は旧豊科町に、安曇野市中央図書館は旧穂高町に建設されている。豊科図書館の床面積は中央図書館の約半分、開架収蔵能力は中央図書館の40%。数値だけ見ると差を感じるものの、豊科図書館は人口3万人という町の規模に見合った施設に見える。

特設コーナーには映画監督の「熊井啓」コーナー、山岳写真家の「田淵行雄」コーナー、山岳関連門コーナーなどがあった。山岳コーナーの本には表紙が茶色く変色している本が多く、旧館時代には書庫から出されることもなかった本ばかりなのだろうと思った。新着本コーナーは面展示が中心で、他館の新着本コーナーよりもずっと存在感があった。

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(上左・上中)書架。(上右・下左)閲覧席。(下中)新着本。(下右)自動貸出機と蔵書検索用PC。

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文化施設群の手前には安曇野市役所があるが、壁面が赤と橙で塗られた外観は福祉施設みたい。合併から10年後の2015年に開庁したばかりらしい。交流学習センター3館と市役所には合併特例債を惜しみなく使っていそう。

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(写真)穂高交流学習センター「みらい」に隣接している安曇野市役所。

 

 

安曇野市中央図書館

安曇野市豊科図書館の後には松川村図書館を訪れたあと、大糸線を引き返して安曇野市中央図書館を訪れた。穂高駅はWikipediaに「安曇野観光の拠点駅」とあるように、駅前には飲食店や観光案内所が建ち並んでいて人通りも多い。豊科町とは違って穂高町は鉄道駅が街の中心にある。穂高交流学習センター「みらい」は穂高駅と柏矢町駅の中間付近にある。

穂高駅から「みらい」までは約1.5km、徒歩20分を歩くつもりだったが、駅前の自転車店「しなの庵」がレンタサイクルをやっていたので利用した。「ふつうの」自転車と「クロスバイク」があるとのことだったのでクロスバイクを選ぶと、こちらの身長も聞いたうえでCorratecの立派なのを出してくれた。小売価格では7万円くらいの自転車だと思うけれど、1時間200円(今回は2時間利用した)、補償金なし、身分証などの確認もなし、という驚きのサービス。「レンタサイクルを利用したい」というだけですぐに自転車を出してくれて、料金は返却時に支払う。盗難などのリスクがあるのではないかと聞いたら「(利用者は)だいたいちゃんと返してくれる」とのことだった。

 

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(左)レンタルしたクロスバイクと「しなの庵」。(右)穂高駅前のカフェ「ひつじ屋」。

 

「きぼう」とは異なり「みらい」は市街地から離れている。安曇野市による交流学習センターの紹介文を読むと、「みらい」の建設費は約16億円。全体の床面積は4,100m2、図書館部分の床面積は1,761m2。開架に15万冊、閉架にも15万冊を収蔵できるとのこと。地方の都市で1,761m2のワンフロア型図書館は数値以上に広く感じる。

安曇野市中央図書館では地域資料の充実ぶりが印象に残った。地域ゆかりの著名人についての棚はどこの図書館にもあるとはいえ、図録など収集しにくい文献も多かったし、ひとりひとりについて新聞記事スクラップが用意されていた。図書館の歴史について調べているものとしては、「安曇野市図書館」についての新聞記事スクラップがあったことはポイントが高い。その大部分は市民タイムスの記事だった。

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(写真)穂高交流学習センター「みらい」。右は芝生広場に面したブラウジングコーナー。

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(左)書架。(右)地域資料コーナー。

 

豊科図書館でも中央図書館でも公衆無線LANサービスが利用でき、ICタグを導入しているので自動貸出機があった。AVコーナーには都市規模に不釣り合いなほどたくさんのPCが置かれている。ただ、図書の貸出は依然としてカウンターが中心に見えたし、無線LANが使いこなされているのかはよくわからない。

中央図書館のブラウジングコーナーは公園に面しており、大きなガラス窓から芝生広場を眺めながら本を読むことができる。ブラウジングコーナーは書架部分に比べてかなり照明が抑えてあり、静かに文芸書を読むにはとてもよい図書館だと思う。

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(左)自動貸出機。(右)AVコーナー。

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(左・右)児童書。

 

新館なのに後付けの案内表示をベタベタ貼っているのは見苦しいと思った。利用者からの意見に真摯に対応した結果、なのだろうけれど。

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(写真)蔵書検索用PC。