振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

おおぶ文化交流の杜図書館を訪れる

2017年5月、愛知県大府市の「おおぶ文化交流の杜図書館」の貸出数が全国の同規模(人口6-10万人)自治体180自治体中1位になったという新聞記事が出た。貸出数ランキングというものは首都圏の自治体が上位を独占しているイメージがあるので、そして前年までランク外だった大府市が突然1位となったのに驚いた方も多いかもしれないけれど、近くの自治体に住んでいる者にとっては驚きではないのでした。

 

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 (写真)図書館が入っているおおぶ文化交流の杜。

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 3.0 非移植 ライセンスの下に提供されています。写真の一部はObu culture communication library - Wikimedia Commonsにアップロードしています。

 

www.trc.co.jp

https://mainichi.jp/articles/20170524/k00/00e/040/205000c?ck=1

「おおぶ文化交流の杜図書館 貸し出し図書の冊子数日本一に」毎日新聞、2017年5月24日

www.asahi.com

 

大府市の図書館の歴史

知多半島の付け根にある大府市は人口約9万人の自治体。名古屋市中心部とは約20km離れているが、日中でも毎時4本の快速系統が約15分でJR東海道線大府駅名古屋駅を結んでいるうえに、刈谷市安城市岡崎市などの西三河地方へのアクセスも良い。

1970年に約5万人だった人口は、1990年に約7万人となり、2016年に9万人を超えた。知多半島の多地域とは違って醸造業は栄えなかった。他県の方にとってはそれほど知られていない自治体かもしれない。

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(画像)愛知県における大府市の位置。作者 : Lincun

 

おおぶ文化交流の杜図書館 - Wikipedia

図書館の歴史についてはもうウィキペディア「おおぶ文化交流の杜図書館」に書いた。大府市には長らく図書館法における「図書館」がなかったが、1980年に大倉会館内に大府市中央図書館が開館。貸出数は1978年度の13,969冊が1980年度には96,038冊(約7倍)に増えた。新築時の大倉会館はいくつかの建築系雑誌にも掲載されており、中部建築賞を受賞している。

1980年の人口は約6万人だった。床面積1,137m2の大府市中央図書館は人口の増加とともに狭隘化が進み、末期には「近隣の大府市立大府小学校の空き教室を書庫代わりに使用」していたらしい。2008年のリーマン・ショックでは愛知県の他自治体同様に法人税収入が激減し、2012年に開館予定だった新館の建設は約2年間遅れた。

建設・運営にはPFI方式を採用し、2014年におおぶ文化交流の杜が開館。その中に入るおおぶ文化交流の杜図書館の指定管理者には図書館流通センターが選ばれた。2013年度に514,154冊だった貸出数は2015年度に1,356,446冊(約2.6倍)まで増え、全国の同規模自治体(人口6万人-10万人)180自治体の中で総貸出数・1人あたり貸出数ともに最多となった。 

 

立地や施設

旧館の大倉会館は大府駅から徒歩10分の好立地にあり、市役所や中心商業地にも近かった。一方でおおぶ文化交流の杜は大府駅共和駅それぞれから約2.5kmの距離があり、駅から歩くと30分程度かかる。大府駅共和駅のどちらから赴いても、図書館の手前で約15mの高低差がある坂を上る必要があり、自転車などでも行きづらい。公共交通機関では1時間1本の間隔でコミュニティバスが走っているが、基本的なアクセス手段は自動車しかないといっていい。

施設内は1階に図書館やホールや多目的スタジオが、2階に会議室や学習室がある。図書館内は和やかな雰囲気を感じる。そもそも立地が災いして中高生の図書館利用者は少なく見えるし、勉強する学生は上階に隔離されている。他自治体の図書館よりは(車を持たない)高齢者も少ないのだろう。この結果、自家用車で来るファミリー層にとってとても居心地の良い図書館になっている。貸出冊数が日本一になった背景には自家用車で来るファミリー層が20冊の制限いっぱいまで借りていくことも大きいのだろう。

近隣自治体の中では唯一導入している自動貸出機は、2015年時点ですでに貸出の96%を担っていた。即座に返却処理がされる自動返却機は子どもに好評らしい。ICタグによる自動貸出や自動返却のおかげで図書館員が本来の業務に力を注げているのがわかる。よく考えられた書架の配置や展示、つねに入館者に目を配っている総合受付の職員、声をかけやすいレファレンスカウンターの司書。この図書館はもっと注目されてほしい。

 

 施設全体のロビー

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(写真)おおぶ文化交流の杜のロビー。文化の発信拠点という雰囲気がうらやましい。

 

図書館の中央部

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(写真)総合カウンター前。「祝 貸出図書数 全国一位」の幕が見える。

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 (写真)新刊コーナー。帯で内容を紹介。

 

ICT関連

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(左)4台並んだ自動貸出機。(右)図書館入口にある自動返却機。

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(左)インターネット用PCは9台。(右)存在感のある予約本コーナー。

 

郷土資料コーナー

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 (写真)テーマ展示。

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  (左)レファレンスカウンター。(右)大府市関連の図書の棚。棚の上では新聞記事のスクラップ。

 

グループ学習室

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 (写真)この図書館のウリになるはずだっただろう、図書館のフロア中央部で存在感を放つグループ学習室。左は通常時。右は学習室としての使用時。大府市民と図書館がこの部屋を使いこなせているようには見えない。

 

児童書エリア

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 (写真)児童書エリア。児童書は見るべきポイントがわからない全体の様子でごまかす。天井のアールが醸し出してる近未来っぽさが好き。

 

カフェスペース

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(写真)2017年4月から営業している「健康カフェ」。

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(写真)2017年4月で閉店したイタリアンレストラン「エルベッタ」。