振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

美濃白鳥の映画館

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(写真)郡上市図書館が入る白鳥ふれあい創造館。

2019年(令和元年)夏、岐阜県郡上市の美濃白鳥(旧郡上郡白鳥町)を訪れました。

かつて美濃白鳥には「白鳥劇場」「スワン劇場」「大島座」という3館の映画館がありました。

※2024年2月には本記事から「美濃白鳥を訪れる」を分割しました。

 

ayc.hatenablog.com

1. 美濃白鳥を訪れる

美濃加茂市美濃太田駅から長良川鉄道郡上市を訪れましたが、鉄道で郡上市を訪れる観光客はそれほど多くないと思われます。東海地方と北陸地方を結ぶルートとして東海北陸自動車道があり、白鳥インターチェンジを降りればすぐ美濃白鳥市街地だからです。長良川鉄道で美濃白鳥に向かう列車はわずか11-12往復/日であり、1-2時間に1本という運行頻度はスケジュールの制約が大きい。

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(左)長良川鉄道越美南線美濃白鳥駅。(右)美濃白鳥駅前広場にある白鳥おどりの像。

 

2. 郡上市図書館本館

2.1 郡上市の図書館

郡上市図書館は美濃白鳥駅の北東にある白鳥ふれあい創造館にあります。郡上市図書館は郡上市発足前の1994年(平成6年)に開館した図書館であり、当時は白鳥町立図書館という名称でした。緑色の屋根とピンク色/ベージュ色の壁は1990年代の図書館によくみられる色彩。人口1万5000人弱の町としては大きな施設であり、この時代だからこそ建設できた施設であるとも感じました。

組織としての郡上市図書館は、施設としての郡上市図書館(本館)を含む7施設(1本館1分館5分室)からなります。総称としての組織名と単独の施設名は分けてほしい。本館の蔵書数は約11万冊、はちまん分館の蔵書数は約6万冊。延床面積でも本館のほうが広いと思われますが、規模にそれほど大きな差があるわけではありません。「郡上市しろとり図書館」と「郡上市はちまん図書館」の並列ではダメだったのか気になりました。

 

郡上市図書館(組織)を構成する7施設

本館 郡上市図書館・・・・・・・・旧白鳥町(郡上市第2の町)

分館 郡上市図書館はちまん分館・・旧八幡町(郡上市最大の町、郡上市役所所在地)

分室 郡上市図書館やまと分室・・・旧大和町

分室 郡上市図書館たかす分室・・・旧高鷲村

分室 郡上市図書館みなみ分室・・・旧美並村

分室 郡上市図書館めいほう分室・・旧明宝村

分室 郡上市図書館わら分室・・・・旧和良村

 

2.2 図書館の特色

私が乗車した長良川鉄道越美南線は、岐阜県福井県を結ぶ越美線の一部として建設された路線です。美濃白鳥市街地から岐阜県福井県境までの距離はわずか3km。長良川鉄道の終着点である北濃駅はさらに福井県に近く、岐阜県庁までの距離と福井県庁までの距離がほぼ等しい(約60km)。

結局越美線は全通せずに終わりましたが、郡上市図書館は福井県奥越地方の『大野市史』や『勝山市史』などを所蔵しており、私が訪れた際にも司書と一緒に福井県に関する文献を探している方がいました。

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(左)郡上市図書館が入る白鳥ふれあい創造館。(右)郡上市図書館の入口。

 

3. 美濃白鳥の映画館

映画館名簿によると、郡上郡白鳥町にはかつて3館の映画館があり、うち2館が美濃白鳥市街地にありました。旧市街地で50年以上営業していそうな店舗を探しましたが、メインストリートには気軽に入れる店舗が見あたらなかったため、新栄町商店街にある「白鳥まんじゅう」(店名)に入り、70歳になるという店主に話を聞きました。

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(写真)新栄町通り。中央左が「白鳥まんじゅう」(店名)。

 

3.1 白鳥劇場(1951年4月-1972年)

所在地 : 岐阜県郡上郡白鳥町1055
開館年 : 1951年4月
閉館年 : 1972年
1947年の映画館名簿には掲載されていない。1950年の映画館名簿では「白鳥劇場」。1953年・1955年の映画館名簿には掲載されていない。1960年・1963年・1966年・1968年の映画館名簿では「白鳥劇場」。1969年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「角忠旅館」西南西30mの「サンテック株式会社」敷地内。

 

1966年の映画館名簿には白鳥劇場の所在地として、「郡上郡白鳥町1055」と番地まで掲載されています。Google mapsでこの番地が指し示す地点は角忠旅館の裏手であり、現在はサンテック株式会社の敷地や道路(私道?)用地になっているようです。白鳥まんじゅうの店主によるとこの地点で間違いないとのことで、店主は白鳥劇場のことを「ハクゲキ」(白劇)と呼びました。

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(左)手前が白鳥劇場跡地と思われる地点。中央奥に角忠旅館。(右)白鳥劇場の東側を流れる水路。

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(写真)西側奥に白鳥劇場があった角忠旅館。

 

3.2 スワン劇場(1955年頃-1964年11月)

所在地 : 岐阜県郡上郡白鳥町121-2(1965年)
開館年 : 1955年頃
閉館年 : 1964年11月
1955年の映画館名簿には掲載されていない。1956年・1958年・1960年・1963年・1965年の映画館名簿では「スワン劇場」。1966年の映画館名簿には掲載されていない。

1965年(昭和40年)の映画館名簿によるとスワン劇場の所在地は「郡上郡白鳥町121-2」。郡上市図書館での文献調査では「美濃白鳥駅前」にあることもわかりました。

白鳥まんじゅうの店主によると「スワン」は新栄町商店街の山田薬局の位置にあったようです。また、白鳥まんじゅうのおかみさんは美濃白鳥出身ではないそうですが、道路に出てスワン劇場の場所を説明してくださいました。白鳥まんじゅうからの距離はわずか70mであり、白鳥まんじゅうからも山田薬局の緑色の看板が見えます。

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(写真)スワン劇場跡地の山田薬局。

 

3.3 大島座(1959年頃-1962年頃)

所在地 : 岐阜県郡上郡白鳥町大島(1962年)
開館年 : 1959年頃
閉館年 : 1962年頃
1958年の映画館名簿には掲載されていない。1960年・1962年の映画館名簿では「大島座」。1963年の映画館名簿には掲載されていない。

美濃白鳥市街地から2km南の大島地区には大島座があったようですが、白鳥町にあった3館の中ではもっともはやく閉館しています。今回は大島地区を訪れていません。

 

美濃白鳥の映画館について調べたことは「岐阜県の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、また映画館の所在地については「消えた映画館の記憶地図(岐阜県版)」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

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