振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。図書館におけるウィキペディアタウンの開催を推進しています。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「Wikipedia新潟ローカルタウンプロジェクト」に参加する

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(写真)新潟市立中央図書館。

 

2019年4月13日(土)、新潟県新潟市新潟市立中央図書館で開催された「Wikipedia新潟ローカルタウンプロジェクト」に参加しました。新潟県初のウィキペディアタウンです。

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名古屋=新潟線の夜行バスで新潟市を訪れ、新潟島や沼垂を3時間ほど散策してから会場入り。新潟市内の桜はこの週末に満開を迎えており、冒頭の写真のとおり新潟市立中央図書館の前に植わっている桜も見事でした。私は2018年7月にも新潟市を訪れており、新潟市立中央図書館を訪れるのは今回が2回目です。

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(左)旧新潟税関庁舎。(右)旧新潟税関庁舎の桜。

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(写真)新潟市立中央図書館。

 

Wikipediaの講義

この日のスケジュール

10:30-10:50 オリエンテーション
10:50-11:55 Wikipediaの講義
12:00-13:00 昼休み兼まちあるき/図書館見学ツアー
13:00-16:00 Wikipediaの編集ワークショップ
16:30-17:00 成果発表・まとめ

 

河野知樹さんと目黒幸恵さんを中心とするWikipedia新潟ローカルタウンプロジェクトが今回のイベントの主催者。Code for Niigataが共催、Code for Japanが協賛、新潟市立中央図書館「ほんぽーと」が協力しています。会場は新潟市立中央図書館の3階にある多目的ホールです。

まずは河野さんと目黒さんが主催者としてあいさつ。ウィキペディアの編集を通じて、『調べること』『知ること』『表現すること』『伝えること』の楽しさを体験してもらいたくて開催したとのこと。会場正面のメインスクリーンの脇にはサブスクリーンが置かれており、会話を視覚化するアプリ「UDトーク」を使ってリアルタイムの字幕作成が行われています。

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(写真)Code for Niigataの河野知樹さん、新潟県中越図書委員会(仮)の目黒幸恵さん。

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(左)この日のスケジュール。(右)UDトークで講義を実況中のスクリーン。誤字が多い場面を切り取っちゃったみたい。本当はもっと正確に字幕化されます。

 

主催者の挨拶の後は講師の海獺(らっこ)さんによる講義。YouTubeの「ウィキペディア:事実が重要」の動画を見た後、ウィキペディアウィキペディアタウンの説明がありました。「ウィキペディアを信頼してはいけない」と言ってから、過去と現在のティラノサウルスの想像図を例に挙げて「信頼できる情報とは何なのか」という話をされました。

今回は他地域でのウィキペディアタウン開催に興味のある参加者や図書館関係者もおり、ウィキペディアタウンを開催することにおける参加者/図書館のメリットの話もありました。参加者側のメリットとしては、地域の価値や弱点を再認識できること、世代間交流ができることなど。図書館側のメリットとしては、地域資料の活用という図書館本来の使われ方ができることや、司書のレファレンス能力が向上することなどがありました。講義の後には質疑応答の時間が設けられ、参加者から質問が多数出てよい意見交換の場となりました。

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 (写真)講師である海獺さんの講義。

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(左)ゴジラティラノサウルスの想像図。昔はこの姿が「正しい情報」だった。Wikimedia Commonsより。パブリック・ドメイン。(右)現在のティラノサウルスの想像図。Wikimedia Commonsより。作者 : DerHexer


 

まちあるきと図書館見学ツアー

今回のイベントではWikipedia編集ワークショップの内容として、「Wikipedia記事の新規作成」と「既存のWikipedia記事への加筆・出典追加」の2つが用意されました。海獺さんによる講義の後には参加者がそれぞれの希望によって各グループに分かれ、神社への見学ツアーか図書館見学ツアーに向かいました。

新規作成の対象となったのは新潟市立中央図書館 - Wikipedia白山神社 (新潟市中央区沼垂東) - Wikipedia蒲原神社 (新潟市) - Wikipediaの3記事。私(かんた)、京都府で学校司書をする伊達深雪さん、Code for ふじのくに/Numazuの市川博之さん・市川希美さんが各グループのテーブルファシリテーターを務めています。

私は新潟市立中央図書館のグループに入ったため、新潟市立中央図書館の副参事(館長補佐)である辰口裕美さんの案内で図書館見学ツアーに参加しました。図書館内の写真撮影については、「申請をした方には首から下げる撮影許可証を渡す」という対応を取っているそうです。

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(写真)今回の編集対象記事。

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(地図)今回の会場と編集対象記事の場所。地理院地図

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 (写真)バックヤードの自動出納書庫。開架には35万冊、閉架には45万冊を収蔵可能。

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 (写真)2階の特別コレクション室。会津八一鷲尾雨工吉屋信子中田瑞穂坂口安吾がメイン。

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(写真)1階の「こどもとしょかん」(児童図書室)。

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(左)「こどもとしょかん」名誉館長である黒井健の紹介。(中)ファミレスの席みたいな親子コーナー。(右)児童図書研究室。

図書館見学ツアー後には1階のカフェで昼食。冒頭の写真中央にある円柱形のスペースがカフェであり、窓の外の桜を見ながら食事ができます。

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(写真)1階のカフェ「カーブドッチ」。

Wikipedia編集ワークショップ

午後のスタートは、かつて学校司書をしていた目黒さんによるミニ講座「図書館で地域資料を調べるには?」。私は図書館で調べものをすることが多いのですが、情報の探し方は体系的な理解に基づくものではありません。図書館での情報の調べ方については深く聞いてみたい。

話をする目黒さんの背後では、テーブルファシリテーターでもある市川希美さんが話をグラフィックレコーディングで視覚化しています。前述のUDトークも含めて、シビックテック団体が持つ技術や知識に触れると何か新しいことができそうという気分になります。

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(左)目黒さんによる地域資料の調べ方ミニ講座。(右)グラフィックレコーディング中の市川希美さん。

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(左)図書館が準備してくれた文献。(右)今回のイベントで海獺さんが参加者に求めたこと。

 

今回の私の役目はテーブルファシリテーターであり、約2時間30分の編集時間でWikipedia記事「新潟市立中央図書館」を新規作成することが求められました。まずは海獺さんの講義の補足として、百科事典たるWikipediaにおける歴史の記述の重要性を説明し、今回の場合は開館の経緯について記述することが重要ではないかと伝えました。

次は私がかつて作成した岡崎市立中央図書館 - Wikipediaの記事を見てもらい、「新潟市立中央図書館」の記事にはどんなことを書くべきか話し合ってもらいました。「歴史」に加えて「特色」を記述することも大事だという意見が出たため、8人の参加者に2チームに分かれてもらい、それぞれ「歴史節」と「特色節」の文章の作成を担当してもらいました。参加者に文献を読みこんでもらう時間を使って、私は最低限の情報のみを記した状態で「新潟市立中央図書館」の初版を作成(この状態)。その後は各チーム1台ずつのノートパソコンを使って、空っぽの「歴史節」と「特色節」に文章を追加してもらいました。

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(写真)新潟市立中央図書館の敷地内にある「長嶺小学校跡」の石碑。ここに碑がある理由は「新潟市立中央図書館 - Wikipedia」の歴史節を参照。

 

海獺さんが参加者に求めたことの中で、「今日できることを優先すること」という言葉が印象に残りました。

記事「新潟市立中央図書館」の質の高さを優先するのであれば、図書館が毎年作成している『図書館要覧』の沿革部分をうまく要約することに専念すればいいのです。でも、それではとてもつまらないし、『図書館要覧』はウェブで公開されているので自宅でもできます。「今日できること」(≒今日しかできないこと)は何だろうと考え、何か興味を持ったことについて掘り下げてもらいたいと思いました。その結果として、書かれるべき重要なことが書かれないこともあります。参加者が取り組んでいることを把握して、私は書かれるべき重要なことを埋める作業も行いました。

 

2階の郷土資料コーナーでは新潟日報の記事データベースや国立国会図書館デジタルコレクションが使えます。郷土資料コーナーの隣にはレファレンスカウンターがあり、司書が常駐しています。ある参加者はイベント中に郷土資料コーナーまで出かけ、新潟日報の記事をデータベースからプリントアウトして持ってきました。別の参加者は新潟日報の縮刷版を探し、データベースに収録されていない時代の新聞記事をコピーして持ってきました。紆余曲折あった開館までの経緯に興味を持った方もおり、新潟市立図書館に長く勤める辰口さんの話を聞きながら文献を探していました。

図書館でないと新聞データベースや新聞縮刷版は閲覧できないし、図書館の方がいないと開館の経緯について正確に理解するのは難しいです。それぞれの参加者が自発的に「今日できること」(今日しかできないこと)に取り組んでいたと思います。

 

その一方で、「沼垂白山神社」と「蒲原神社」のグループは「新潟市立中央図書館」のグループより苦労していたように思えます。その理由にはWikipediaの題材としての小ささ(≒文献の少なさ)もあるだろうし、まちあるき時に歴史や特色を説明できるガイド役がいなかったこともあるだろうと思います。単純に「新潟市立中央図書館」のグループより参加者の人数が少なかったことも理由かも。知識のあるガイドがいるのが理想ですが、準備が大変だし連携が複雑になるので難しいところです。

今回のイベントには『にいがた経済新聞』(新潟県の地域情報を発信する月刊紙)の記者さんが参加してくださり、その日のうちに「県内初のWikipedia新潟ローカルタウンプロジェクトが開催される」という記事が掲載されました。

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 (写真)文献調査 & Wikipedia編集中の会場。

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(写真)成果発表。文献調査で使用した情報カードを紹介している。

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(写真)新規作成した「新潟市立中央図書館 - Wikipedia」。

 

まとめ

主催者であるCode for Niigataの河野さんにお会いしたのは今回が初めてですが、目黒さんには2016年3月の「WikipediaLIB@信州 #01」で初めてお会いしてから今回で3回目。WikipediaLIBの際には挨拶しそびれたのですが、超かっこいいイベント参加報告を書いてくださったのを読んで気になっていたのでした。

ウィキペディアタウンを図書館が主催する場合、図書館は講師から一歩引いた立場にとどまり、ウィキペディアタウンを開催する目的やウィキペディアの意義について多くを語らないことが多いです。しかし今回の主催者は、その点を講師の海獺さんに任せっきりにせず自分たちの言葉で明快に説明され、「参加者に伝えたいことがある」という意志を強く感じました。

今回の私はいち参加者ではなくテーブルファシリテーターという立場でしたが、過去に60回以上参加したウィキペディアタウンでこれだけ楽しいと思ったのは久々でした。夜行バスで名古屋=新潟を往復するのは大変でしたが、このような主催者だから参加したいと思ったのだし、参加してよかったと思ったのでした。

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(写真)会場設営中のロバ。

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章・写真のうち、「海獺さんのWikipedia説明スライドの写真」と「地理院地図」以外は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。