振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

堺市立中央図書館と大阪市立住之江図書館を訪れる

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(写真)堺市大阪市を隔てる大和川

2019年(平成31年)1月初頭、堺市立中央図書館と大阪市立住之江図書館を訪れました。

 

1. 堺市立中央図書館を訪れる

1.1 堺市立中央図書館堺市駅前分館

まず訪れたのは堺市立中央図書館堺市駅前分館。JR阪和線堺市駅前の商業施設「ベルマージュ堺」の3階にあります。開館は20年前の1999年4月1日ということで新しいわけではなく、駅前にある従来型の図書館といった感じです。なお、堺市立図書館は7図書館5分館2室の計14施設からなります。館内の写真撮影は不可と言われましたが、堺市立図書館の統一見解ではなく対応してくださった職員の判断かもしれません。

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1.2 堺東商店街・堺東映シネマ跡地

JR堺市駅から西に約1.5km歩き、南海高野線堺東駅前の堺東商店街へ。途中では2018年7月14日に「厄払い!オープンデータソン in さかい」でWikipedia & OpenStreetMapの編集対象となった方違神社を通っています。にぎわいのあるアーケード商店街の西側、「パーターさかもと第1ビル」には堺東映シネマ跡地があります。

東映シネマは2010年12月26日に閉館したそうですが、エレベーター前のフロア案内には「3階 堺東映シネマ」の文字がそのまま残っていました。試しにエレベーターで3階に上がってみると3階フロアに降りることができるのですが、真っ暗でこわい。

堺市立中央図書館では2000年の住宅地図を確認しましたが、堺東商店街の商業ビル「ヤングタウン103」4階に堺東宝が、「ヤングタウン103」2階に堺シネマ1・2が、商業ビル「パーターさかもと第2ビル」2階に堺東銀座ニューシネマが、同じく「パーターさかもと第2ビル」2階に堺東AVシネマがあったことが確認できました。これらは消えた映画館の記憶地図(大阪府版)マッピングしています。

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 (写真)2010年まで堺東映シネマがあったパーターさかもと第1ビル。

 

1.3 堺市立中央図書館

堺東商店街から南に約2km歩き、堺市立中央図書館へ。長方形の町割りに一条通から七条通りまで名付けられた街を通りました。戦後の町ではないと思いましたが、今昔マップで確認すると昭和初期にはもうこの町割りができているようです。

堺市立図書館は1916年に大阪府初の市立図書館として開館。現行館の堺市立中央図書館は1971年竣工であり、2階が重たい印象的な外観ですが、1階中央部の階段を上って2階の開架室に入る館内も印象的。1971年当時の図書館事情を考えると、都道府県立図書館に匹敵する立派さだったのではないかと思います。

愛知県では常滑市立図書館や瀬戸市立図書館とほぼ同時期の建物であり、大阪府でもかなり古い部類に入るのではないかと思います。建築系雑誌では『新建築』1971年12月号「堺市立図書館」や『建築文化』1971年12月号の「特集 図書館建築6題」などに掲載されているようですが、古すぎて愛知県図書館には所蔵されていません。

 

『みんなの図書館』2018年4月号の「市民とつくる地域資料サービスの可能性」(竹田芳則)に登場する「堺メモリー倶楽部」が気になります。写真のデジタル化などで堺市の歴史を保存・発信する活動を、図書館と市民が協力して行っているようです。このような団体がいてくれるのはありがたい。

堺市立中央図書館は2017年3月19日2018年2月11日に「ウィキペディアタウン in さかい」を開催しており、この論考ではウィキペディアタウンが “新しい市民参加による地域資料サービスの可能性” と表現されています。この論考によると「堺メモリー倶楽部」はウィキペディアタウンとは別にウィキペディア記事の作成も行っているのでしょうか。気になります。

 

2016年には図書館開館100周年を迎え、記念講演会、パネル展、シンポジウムなどの記念事業を実施したようです。『堺市立図書館100年史』を購入しようと思ったのですが忘れてしまいました。

堺市立中央図書館は全国紙5紙のデータベースをそろえていますが、利用者カードがないと使えないようでした。新聞データベースは利用者カードなしでも使用可能な図書館が多いという印象がありますが、全国的にはどうなんでしょう。

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 (左)堺市立中央図書館。(右)建物から離れた場所にある返却ポスト

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 (左)一般室と子ども室で分かれている建物入口。(右)1階から2階に上る階段。

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 (左)一般書の書架。(右)郷土資料。

 

1.4 堺市立青少年センター図書室

堺市立中央図書館からは宿院の堺山之口商店街を通り、約4km歩いて堺市立青少年センター図書室へ。昔はこのアーケード商店街が堺の筆頭の商店街だったらしい。おしゃれな公式サイトがありますが、“羽衣国際大学小川雅司研究室プロデュース” とあり納得。“第二次世界大戦後まで、大阪の心斎橋と並ぶ、第一級の繁華街として大変賑わっていました” とあります。

堺市立青少年センター図書室にはただ立ち寄っただけですが、堺市の環濠地区内唯一の図書施設のようです。

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(写真)堺市立青少年センター図書室。

 

1.5 綾之町東商店街

堺市立青少年センター図書室からは紀州街道などを歩き、約3.5km歩いて大阪市立住之江図書館へ。阪堺電車綾ノ町電停の東側には綾之町東商店街がありましたが、営業中だったのは数軒のみ。これでアーケードの維持費や電気代を捻出できるのか不安になります。

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 (左)商店街の中央を阪堺電車が通る綾之町東商店街。(右)玉子店なのか茶葉販売店なのかクリーニング店なのかわからない店。店名もニューファーストなのか西端ショップなのかわからない。

 

2. 大阪市立住之江図書館を訪れる

2.1 安立本通り商店街

大和川に架かる大和橋を渡ると大阪市紀州街道をそのまま北に向かうとアーケードの安立本通り商店街がありました。これだけにぎわっている商店街であれば、かつては映画館のひとつくらいあってもおかしくない。しかし私が『映画館名簿』で簡単に調べた限りでは、1974年の発足以後の住之江区に映画館が存在したことはなかったようです。

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(写真)安立本通り商店街。

 

安立本通り商店街の50m東に並行して安立東通り商店街がありますが、こちらはがらがらでした。

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(写真)安立東通り商店街。

 

安立本通り商店街と安立東通り商店街をつなぐ商店街として銀座通り商店街(商店会)がありますが、屋外部分も屋内部分も廃墟と化していました。

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(写真)銀座通り商店街。

 

2.2 大阪市立住之江図書館

堺市立中央図書館からだらだら歩きすぎたせいで、大阪市立住之江図書館にたどり着いたのは閉館9分前の16時51分。館内をじっくり見学することはできませんでした。
この図書館では「思い出のこし」事業を行っています。市民が提供する思い出を土台に、司書が文献調査や聞き取りを行って公開する取り組みです。

“ウリが多く栽培されていた” “南港でイワガキを獲って食べた” などといった思い出を文字化し、地域別・年代別に分けてファイルで保存。本ブログと同じくクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開しています。図書館の特徴、司書の専門性を活かした素晴らしい取り組みだと思います。“利用者と図書館の間でコミュニケーションをとるきっかけを生み出してくれた” (『みんなの図書館』2018年4月号)という言葉が印象的です。

 

参考

地域情報発信のありかたについて−「思い出のこし」と「戦国時代を舞台にした歴史小説:calilリンクつき」の事例より− :第313回研究例会報告

公立図書館における住民との協働による地域資料サービスの構築 / 相宗大督 | カレントアウェアネス・ポータル

相宗大督「大阪市立図書館『思い出のこし』事業について 立案者としての立場から感じたことなど」『みんなの図書館』2018年4月号、pp.7-15

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(写真)大阪市立住之江図書館。

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。