振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

宝塚市立中央図書館を訪れる

Wikipedia ARTS 国立国際美術館 ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」の翌日、 2018年12月16日(日)には北摂地域の図書館を訪れました。

豊中市立岡町図書館(大阪府)の前には宝塚市立中央図書館(兵庫県)を訪れています。地元民じゃないので「北摂」の定義がよくわからないけれど、2府県にまたがるこの地域を漠然と指して「北摂」って言っていいのかな。

関連エントリー豊中市立岡町図書館を訪れる - 振り返ればロバがいる

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(地図)訪れたことのある北摂の図書館。©OpenStreetMap contributor

 

阪急のターミナル駅である宝塚駅から梅田方面に1駅、清荒神駅(きよしこうじんえき)の駅前にあるのが宝塚市立中央図書館。開館は1980年。1980年代らしいレンガ調の外観で、文化ホールとの複合施設です。Wikipediaにも記事「宝塚市立図書館 - Wikipedia」が作成されています。

清荒神駅という名称の由来は、駅から1.7km北にある清荒神清澄寺という寺院です。清荒神駅南口から図書館入口までの距離はわずか25m。阪急の線路に近い北側は大きな窓ガラスとなっています。特に児童室からは清荒神駅に進入する阪急電車がよく見え、子どもは阪急電車を見るために図書館に行きたがりそう。

郷土資料や参考図書が置かれている調査相談室は一般開架室からやや離れています。「1969年頃に閉館したという宝塚市最後の映画館のことが知りたい」というと、「図書館には資料がないが、市史資料室ならわかるかもしれない」とのことでした。宝塚歌劇の町、映画撮影所の町だというのに、映画館についての資料はほんとうに見あたらないのです。市史資料室は平日しか開いていないとのことで、電話番号を書いたメモを渡してくれました。

 

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(写真)宝塚市立中央図書館。

 

マチ文庫

調査相談室の隣には聖光文庫という部屋があり、宝塚歌劇に関する資料だけを集めた書架もあります。この日はカウンター前で「マチ文庫」の展示が行われていました。2016年頃から行われている取り組みのようで、2018年秋には「マチ文庫」冊子を作成するための連続講座(カレントアウェアネス記事毎日新聞記事)なども開催されているようです。

どの公共図書館でもやっている「郷土資料の寄贈」という取り組みを発展させた、郷土資料の作成・収集・公開までをサポートする取り組みだと解釈しています。図書館の特徴や強みを生かした素晴らしい取り組みだと思います。

ひとりひとりの中にある宝塚の記憶や経験を小さな本にまとめ、共有し、保存していく、宝塚市立図書館の取り組みです。 - マチ文庫facebook

「みんなのたからづかマチ文庫」は、市民のみなさんが作った宝塚の町に関する本(冊子)を募集し、誰でも読めるように市立図書館に所蔵するプロジェクトです。 - マチ文庫のチラシ

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製作講座の参加者が自身で冊子を製作して図書館に寄贈する形を取っています。“変形サイズの和紙を使って和綴じした上佐曽利地域の紹介冊子”(プロのデザイナーかな?)とか “日本語文に英文を併記した宝塚のおすすめスポット紹介”(外国人観光客にそのまま渡せそう)とか “郷土誌に寄稿する論文のような売布神社考”(宝塚に長く暮らすおじいさんですね)など様々な冊子がありました。「郷土資料の寄贈」の敷居の高さを下げ、図書館が製作作業もサポートすることで、若い世代が作成した冊子も目立ちました。以下のような冊子がありました。

・「私の少年時代の宝塚」(個人編) -  明治生まれの郷土史家の文章を息子が冊子化。

・「色彩付きの宝塚」(個人編) - 明治期から戦前までの絵葉書集。

・「両岸を繋ぐ 橋が物語る宝塚」(個人編) - 筆者が撮影した写真による橋の歴史。

・「宝塚温泉かいわいのなつかしい写真展」(宝塚自治会編) - 自治会所有の写真集。

・「宝塚市に残る歴史資料」(市史資料室編) - 市史資料室による聖光文庫での展示記録。

・「宝塚旧温泉を語る」(中央図書館編) - 市民が昔の宝塚を語りあう企画の記録。

・「Walkin' About@小林」(西図書館編) - 街を歩いた後に地域を語りあうイベントの記録。

 

「マチ文庫」の展示コーナーはぜひ写真で紹介したかったのだけど、宝塚市立中央図書館は館内全体で写真撮影不可なので聖光文庫内もダメです」と言われました。「マチ文庫」の冊子はコピーや貸出も不可のようであり、聖光文庫内で閲覧するほかない。ということで、せっかく製作した郷土資料だけれどほとんど閲覧されることもないのでは。製作した郷土資料を活用することよりも、製作・寄贈を行う参加者自身への効果を重視しているということですね。

 

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(写真)画像がありません。



 

宝塚シネ・ピピア

阪神大震災後の1999年10月に開館した公設民営の映画館「宝塚シネ・ピピア」は、2018年10月4日に入場者数100万人を達成しました。公設民営とされる映画館には「アミューあつぎ 映画.comシネマ」(神奈川県厚木市、2018年11月閉館、2018年12月にあつぎのえいがかんkikiとして再開館)や「フォルツァ総曲輪(富山市、2016年閉館)などがありますが、「宝塚シネ・ピピア」は成功している映画館だと思います。

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(写真)宝塚シネ・ピピア。バグダッド・カフェがあります。