振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

調布市立中央図書館を訪れる

 図書館総合展の際に訪れた図書館
首都圏には頻繁に訪れることができません。過去に図書館総合展で上京した際には、パシフィコ横浜に行く前に海老名市立中央図書館(2016年)や大和市文化創造拠点シリウス(2017年)などを訪れています。今年は総合展2日目を途中で抜け出して神奈川県立図書館を訪れ、3日目の朝から午後にかけて府中市立中央図書館、府中市立宮町図書館、調布市立中央図書館、千代田区立日比谷図書文化館を訪れました。

 調布市立中央図書館といえばWikipediaLIBなどにも参加してくださっているK館長がいる図書館です。京王調布駅から徒歩5分くらい、調布市役所に隣接した複合施設「調布市文化会館たづくり」の中という文句なしの立地です。

 

調布市立中央図書館
 調布市文化会館たづくりの外観を見ると、豊田市中央図書館が入っている豊田参合館と同じくらいの規模に見えます。しかし建物内の図書館の位置づけはだいぶ違うみたい。まずは1階から図書館までどう行けばいいのはわからず、フロアの中央部から伸びているエスカレーターに乗ってしまいました。図書館にはエレベーターで行くのが正解でした。1995年の開館から23年が経過していることで、開館当初からある書架以外の部分にも本が並ぶ館内は窮屈に見えます。また、参考図書・地域資料室の入口部分が狭い点も設計者に意図を聞いてみたいと感じます。

 初めて訪れた図書館ではその自治体の図書館の歴史を簡単に探ることにしていますが、この図書館では自館の歴史に関する文献がとりわけ目につきます。中でも2018年3月に発行された『調布市立図書館50年の歩み』は参考図書並みの厚さであり、400ページ超の大ボリュームは図書館史ながら鈍器や漬物石にもなりえます。
調布市立図書館 - Wikipedia」の記事には映画の「え」の字も見あたりませんが、調布市は市を挙げて「映画のまち調布」をPRしています。調布駅には「日活スター手型モニュメント」があり、市内の公園には「映画俳優之碑」と「調布映画発祥の碑」があり、調布市立中央図書館には参考図書・地域資料室の一角に映画資料室がありました。Wikipedia記事を書いてくださった方はウィキペディアタウンの参加者だろうか。 

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(写真)調布市文化会館たづくり。近くで見るとでっかい。


1980年の多摩地方における映画館

7館 立川市(立川松竹映画劇場、立川セントラル劇場、立川中央劇場、立川名画座東映立川南座、立川錦座、立川大映劇場)

7館 武蔵野市(吉祥寺東映、吉祥寺ムサシノ、吉祥寺東宝、吉祥寺セントラル、吉祥寺スカラ座、吉祥寺アカデミー、吉祥寺松竹オデオン座)

6館 八王子市(八王子東宝、八王子にっかつ、八王子東映、八王子松竹、ニュー八王子映画劇場、あんぐら劇場)

3館 町田市(町田ロマン会館、町映ローズ劇場、町映グリーン劇場)

2館 三鷹市三鷹文化劇場、三鷹オスカー)

2館 府中市(府中国際劇場、府中新映座)

2館 国分寺市国分寺東映国分寺国際劇場)

1館 昭島市(拝島映画劇場)

1館 小金井市(小金井名画座

1館 国立市(国立スカラ座

1館 清瀬市清瀬映画劇場)

0館 調布市ほか多数

 

調布市の映画館
私が作成している映画館の情報データベース「消えた映画館の記憶」によると、1980年の多摩地方には上記の自治体に映画館がありました。「映画館のまち」御三家の立川・武蔵野(吉祥寺)・八王子はもちろん、調布市より規模の小さい自治体にも映画館があったわけですが、調布市からはすでに映画館が消えていました。調布市は「映画のまち」ではあっても「映画館のまち」ではなかったようです。なお、1980年代以後にはパルコ調布キネマ(1989年-2011年)が開館し、現在はイオンシネマシアタス調布(2017年-)がありますが、立川市の立川シネマシティや吉祥寺のココロヲ・動かす・映画館○などのような個性豊かな映画館はありません。

 

同じく「消えた映画館の記憶」によると、映画黄金期の1960年の調布市には「調布映画劇場」と「調布銀映」という2館の映画館があったそうです。初めて訪れる町ではその町にかつてあった映画館の情報を探してみるのですが、調布市立中央図書館で『目で見る調布・狛江の100年』などの地域資料をめくっても、これらの映画館の情報は出てきません。これだけ立派な映画資料室がありながら地元の映画館の情報が得られないとは何事か、と思ったのですが……

 

まちの資料情報館

図書館の文献では情報を得られなかった代わりに、調布市立図書館が取り組んでいるウェブサイト「まちの資料情報館」には両館についてのページがありました。調布市立図書館が市民と協力して行っている『図書館の地域情報化事業』の一環だそう。調布映画劇場の閉館は1972年以前、調布銀映の閉館は1963年以前ということで、そもそも郷土資料がないのですが、郷土資料がなかったら自分たちで作るという取り組みはすばらしい。郷土資料の収集というのは図書館の重要な役割ですが、収集のみならず郷土資料の作成とか発信とかを目に見える形で行っているわけです。2007年の現行館開館から継続して行っているようで、1年や2年では絶対にできない、役に立つ郷土資料になっています。

lib-machi.chofu.com

 

調布映画劇場 - 「調布市立図書館 市民の手によるまちの資料情報館

調布銀映 - 「調布市立図書館 市民の手によるまちの資料情報館

 

hekikaicinema.memo.wiki

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