振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」に参加する

ayc.hatenablog.com

海士町中央図書館を訪れる」からの続き。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。地図のみは出典がOpenStreetMap、作者がOpenStreetMap contributorです。

 

 

 「ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」の主催者は西ノ島町教育委員会ですが、イベントの企画・運営は横浜にオフィスを構えるアカデミック・リソース・ガイド(ARG)の下吹越香菜さんと李明喜さんが担当しています。  4月14日(土)の伊丹空港隠岐空港便が欠航となり、講師のMiya.mさんは急遽不参加に。15日(日)の「ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」に参加するウィキペディアンは私一人となりました。

 14日は海士町を刊行し、島前3島を巡廻している「内航船」で中ノ島(≒海士町)から西ノ島(≒西ノ島町)に渡って「民宿 福来朗」(ふくろう)に泊まりました。着いた時は暗くて見えませんでしたが、この宿から西ノ島町コミュニティ図書館は60mの近距離。泊まった部屋から建物が見えました。2018年夏に開館するこの図書館の建物はすでに完成しており、内装や駐車場の工事中でしょうか。西ノ島町の中心集落である浦郷地区までは300mの距離です。

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(写真)2018年夏に開館する西ノ島町コミュニティ図書館「いかあ屋」。

 

 「ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」の会場は西ノ島町中央公民館。公民館はノア(noah)という名称の巨大な複合施設の2階にあり、2階の一部屋が公民館図書室となっていますが、書架は廊下にも並べられています。

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(左)複合施設のノア。(中・右)公民館図書室前の廊下。

 

 今回のスケジュールは以下の通り。本来ならMiya.mさんが「ウィキペディアの説明」や「講評」をする予定であり、私は編集サポートという立場でしたが、Miya.mさんが使うはずだったスライドをいただいて私がウィキペディアの説明をさせてもらいました。なお、「ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」は4月と5月の2回連続のプログラムであり、今回はその第1回です。

スケジュール

10:00-10:30 オリエンテーションウィキペディアの説明

10:30-11:30 浦郷のまち歩き

11:30-12:30 昼食

12:30-15:30 調査・編集

15:30-15:50 成果発表・講評

15:50-16:00 クロージング、次回の開催案内

 

 今回のイベントには西ノ島町の住民、西ノ島町役場の職員、西ノ島町にある焼火神社 - Wikipedia(たくひじんじゃ)の宮司である松浦さん、海士町にある島根県立隠岐島前高等学校 - Wikipediaの生徒4人、など10人が参加。公民館図書室の職員、企画運営の香菜さんと李さんもこれに加わっているので実質的には15人くらいのイベントです。

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(左・中)編集ワークショップの会場。(右)準備された飲み物や菓子類。

 

 10時30分からは約1時間のまちあるき。前日はひどい雨であり、当日朝も曇っていましたが、どんどん天候が回復して青空の下を歩くことができました。目的地は「由良比女神社」(ゆらひめじんじゃ)と「浦郷のまちなみ」の2つ。明確なガイド役の方こそいませんでしたが、焼火神社の宮司である松浦さん、西ノ島町役場の職員や公民館図書室の職員などからはいろいろな話を聞くことができました。

 由良比女神社はイカにまつわる伝承が有名なようであり、鳥居の前の海の中に「手づかみでイカを取る島民」の看板があったり、境内の林に巨大なイカの人形が建っていたり、拝殿や石灯籠にイカの姿が彫られていたりします。立派な随身門や土俵もありました。浦郷地区のメインストリートを通って公民館に戻り、「あすか」で昼食。

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(地図)今回のまちあるきルート。出典 : OpenStreetMap。作者 : OpenStreetMap contributor。

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(左)浦郷湾に向かって建つ鳥居。(中)隠岐島前高校の島留学生と香菜さん。(右)初代浦郷村長である今崎半太郎の銅像

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(写真)由良比女神社。式内社隠岐国一宮。(中)拝殿の上部にイカの彫り物を見つけた親子。(右)境内にある土俵。

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(左)神社の石灯篭の基礎にもイカ。(右)マンホールの蓋に書かれたイカ

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(写真)お昼ごはんを食べた「あすか」。

 

 午後は公民館に戻って調査・編集作業。「由良比女神社」を加筆するグループ、「西ノ島町」を加筆するグループの2グループに分かれ、それぞれのグループに香菜さんと李さんが入りました。私はグループに入らずに室内を動き回っていました。

 香菜さんと李さんはこれまでに2回のウィキペディアタウンに参加して編集方法を理解しています。編集ワークショップ中の役割分担がうまくいかず混沌とした状況が生まれるウィキペディアタウンもありますが、今回はイベント全体の企画運営者である香菜さんと李さんが編集作業も主導することで、参加者が自分のやるべきことをスムースに見つけていたような気がします。

 大人の参加者にはほぼ自由に編集を行ってもらっていたようですが、高校生に対してはやるべきことを明確に指示し、慣れているペンとノートで作業を行ってもらったようです。高校生の参加者には自前のノートに文章の下書きを作成してもらい、それを香菜さんと李さんがノートパソコンで打ち込んでいきました。高校生の4人はとても集中して机に向かい、かつワークショップを楽しんでいたように見えます。

  

 3時間の調査・編集作業後には、成果発表と講評の時間。「由良比女神社」の記事には、主に神事や伝承についての記述が加筆されました。神社マニアは全国に多数おり、式内社かつ隠岐国一宮であるこの神社の歴史については、現地を訪れなくとも一定の言及を見つけられると思われます。その一方で、神事や伝承については地域資料をあたらなければ言及を見つけるのが苦しいかもしれません。現地では「神社とイカ」にまつわる話を聞いたこともあり、実際に神社を訪れた者ならではの視点で加筆ができたのではないかと思います。

「西ノ島」の記事には、離島ブーム、交通、名所・旧跡、食文化などについての記述が加筆されました。どれもこれも着眼点がおもしろい。イベント開始前の記事には味気ない歴史しか書かれていませんでしたが、離島ブームの文章でおもしろみの要素が加わりました。離島ブームのほかには「船引運河の開通」もこの島の近現代史のエポックメイキングな出来事だと思われるので、今後の加筆に期待したい。加筆された観光地や食文化の文章を読んでいると、その観光地や料理の写真を検索したくなります。西ノ島の料理を並べた表にはわざわざ写真の掲載欄を作ってあるところがにくらしい。

 

編集対象となった記事

由良比女神社 - Wikipedia - 加筆

西ノ島町 - Wikipedia - 加筆

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(写真)編集ワークショップ中の会場。

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(左)今回準備された文献。(右)高校生の参加者が作成した手書きの原稿。

 

 香菜さんや李さんは2年前から「縁側カフェ」の企画運営を担当しており、月1回の頻度で西ノ島に来ているのだそう。西ノ島の歴史にも詳しく、もはやこの島の住民のようです。イベント後には後醍醐天皇を祭神とする黒木御所に連れて行ってもらいました。丘の上にある黒木御所からは別府港が見える。ちょうど本土の境港港を14時25分に出たフェリーが入港するところでした。

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(左)本土から別府港にやってきたフェリー。(右)別府地区のねこ。