振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

海士町中央図書館を訪れる

 2018年4月15日(日)、島根県隠岐西ノ島町で開催された「第14回縁側カフェ ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」に参加しました。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。2枚の地図のみは出典がOpenStreetMap、作者がOpenStreetMap contributorです。

 

今回のイベントについて

 2018年夏に「西ノ島町コミュニティ図書館」が開館する島根県隠岐西ノ島町。現在は中央公民館内に図書室が設置されています。西ノ島町コミュニティ図書館が主催、アカデミック・リソース・ガイド(ARG)株式会社が企画運営を担当し、住民向けワークショップとして2017年3月から毎月1回の頻度で「縁側カフェ」が開催されているようです。今回は14回目の縁側カフェであり、まちあるきとウィキペディアの編集を行う「ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」という副題が付けられています。

 隠岐ウィキペディアタウンに類似した企画を行いたいということは2017年内から聞いており、他地域とは明らかに異なる要素を採り入れることも聞いていました(これは5月の縁側カフェ)。あくまでも西ノ島の住民向けのワークショップではありますが、企画運営を行っているARGの下吹越香菜さんにアピールしていたおかげで、編集サポートという形で参加させてもらうことができました。

 

 

隠岐を訪れる

今回のスケジュールはこんな感じ。

4月14日(土)

本土の七類港から9時30分発12時40分着の便で海士町の菱浦港へ。海士町を観光後、18時台の便で西ノ島町に移動。西ノ島町民宿 福来朗(ふくろう)に宿泊。香菜さんに教えてもらった宿。電話予約。

4月15日(日)

西ノ島町で「ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」。懇親会に参加後、21時台の便で海士町に移動。海士町お泊り処なかむらに宿泊。Booking.comで予約。

4月16日(月)

朝に海士町を散策後、海士町の菱浦港から9時50分発13時20分着の便で本土の境港港へ。

 

 本土から隠岐を訪れる際には空路(伊丹空港隠岐空港)と海路(松江/境港→島前/島後)があります。今回は海路を使いました。本土側の発着港は松江市七類港〔しちるいこう〕か境港市の境港港。隠岐側の発着港は隠岐の島町の西郷港、西ノ島町別府港海士町〔あまちょう〕の菱浦港、知夫村〔ちぶむら〕の来居港〔くりいこう〕です。

 新幹線・特急・バスを乗り継いで松江市七類港まで行き、七類港から隠岐汽船のフェリーで西ノ島に渡りました。松江市七類港から海士町の菱浦港まではフェリーで2時間50分。フェリーのほかに高速船も運行されていますが、いずれにしても一日数往復しかないため、今回のイベントに参加するために前日入りは必須でした。

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(左地図)隠岐諸島4島の位置関係。(右地図)愛知県から隠岐諸島の移動経路。

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(写真)島根県立図書館。菊竹清訓建築設計事務所。1968年竣工。

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(左)私設図書館曽田文庫。(中)松江市八束公民館図書コーナー。(右)境港市立図書館。

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(左)米子市公会堂。1958年竣工。(中)山陰歴史館。1930年竣工。(右)米子市立図書館。

 

海士町中央図書館を訪れる

 土曜日午前中の便で本土から隠岐へ。9時30分に七類港を出たフェリーは12時40分に菱浦港に着きましたが、海士町がある中ノ島に降り立つと雨が降っており、レンタサイクルで島をまわるというスケジュールがいきなり崩れてしまいます。菱浦港で海中展望船あまんぼうに乗船してから、路線バスで海士町中心部に移動し、海士町中央図書館でゆったりと過ごしました。

 

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(左)海中展望船あまんぼうの船内。(中)海中展望船で訪れた三郎岩。(右)本土行きのフェリー。

 

 どうせ屋外を歩けないので、図書館では「海士町中央図書館」そのものについて調べてみました。図書館内では海士町 Free Wi-Fiが使え、電源を使ってノートパソコンを開くこともできます。愛知県には54の自治体がありますが、Wi-Fiも電源も使える図書館(≒自治体)って両手で数えられるほどだと思います。海士町の方が進んでる。

 入口にいちばん近い書架には、海士町に関する本や雑誌や行政資料、海士町が紹介されている雑誌などが集められています。掲示板には海士町隠岐に関する新聞記事の切り抜きが貼ってありました。海士町中央図書館に関する資料を集めたファイルボックスもありました。気軽に本土に行くことができない海士町の住民にとって、海士町が外部からどう見られているか図書館で理解できる意味は大きいのではないかと思います。

 その他にも、コピー・レファレンスサービス・相互貸借などについての説明が目につく場所にあったり、「あまマーレ」やクラブ活動のチラシが貼ってある掲示板があったり、窓枠に本が表紙を見せて並べてあったり、ポットや紙コップやドリップパックが置いてあるセルフのカフェコーナーがあったりと、図書館が「生きている」「動いている」と感じさせられる館内でした。一つ一つの工夫はどこか別の図書館と同じかもしれないけれど、最低70kmも離れた本土の図書館を視察しに行くことは容易ではないはずです。ここはほんとうに離島の図書館なのでしょうか。

 より大きな部分では、児童書のエリアにはこたつがあるし、図書館部分は木造ということで温かみ(陳腐な表現)も感じます。海士町が推進している「島まるごと図書館構想」というプロジェクト名から、中央図書館の蔵書数や設備は貧弱なのだろうと想像していましたが、まったく見当違いでした。

"図書館のない島"というハンディキャップを逆に活かし、中央図書館と島の学校(保育園~高校)を中心に地区公民館や港、診療所などの人が集まる場所を「図書分館」と位置づけ、それらをネットワーク化することで、島全体を一つの『図書館』とする構想です。

「島まるごと」図書館構想 (注)2007年当時は"図書館のない島"だった。

 

 

 図書館からのお知らせの掲示には、写真撮影が可能であることも記されています。念のためにカウンターにいた司書のHさんに撮影の可否を聞いてから撮っていると、図書館系の雑誌などでよく名前を目にする磯谷さんに話しかけられました。2時間半も図書館内にいたうえに数十枚も写真を撮り、地域資料をひたすらめくってはパソコンに打ち込んでいたので怪しい人物に見えたのでしょう。図書館の事業年報をコピーしようとしたら、「視察者には差し上げている」ということで冊子のままもらえました。

 海士町中央図書館の写真については以下のURLにてCC BY-SA 4.0で提供。

Category:Ama Town Central Library - Wikimedia Commons

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(写真)海士町中央図書館の館内。

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(左)窓際の席。(右)寄贈本コーナー。

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(左)児童書エリアのこたつ。(右)公民館内のロビー。(右)衣類のリサイクルコーナー。

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(左)ゲームの貸出。(中)本の探し方・楽しみ方。(右)小説。

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(左)Wi-Fi & 電源使用可。(中)入口にもっとも近い書架。(右)海士町に関する資料。

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(左)セルフカフェコーナー。(中)雑誌や新着本。(右)掲示板。

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(左)図書館からのお知らせ。(右)入口から見た館内。

 

 

 海士町中央図書館を訪れた土曜日は外を歩くのがつらいほどの雨が降っていましたが、日曜日の「ウィキペディア・アイランド in 西ノ島」を挟んで、月曜日の朝はよい天気でした。海士町役場や中央公民館の北側には田んぼが広がっており、鉄筋コンクリート造2階建の中央公民館に木造平屋建の図書館が増築されていることがよくわかります。

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(左)海士町役場。(右)裏手に図書館が増築されている海士町中央公民館。

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(写真)中央左にある赤屋根の木造建築が図書館。

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(左)海士町後鳥羽院資料館。(中)隠岐神社。(右)海士町の菱浦港。

 

 

つづきます。

ayc.hatenablog.com