振り返ればロバがいる

Wikipediaの「利用者:Asturio Cantabrio」によるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。図書館におけるウィキペディアタウンの開催を推進しており、ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録などを書きます。

「ウィキペディアタウンin安曇野松川村」に参加する

 

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(写真)すずの音ホール内から見た松川中央公園と北アルプス

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章・写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA 4.0)の下に提供されています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

 

インターナショナルオープンデータデイ(IODD)の2018年3月3日(土)、長野県北安曇郡松川村で開催された「ウィキペディアタウンin安曇野松川村」に参加した。

 「WikipediaLIB@信州#02【小諸編】」の前日、2017年8月末には個人的に松川村図書館を訪れている。この際は信濃松川駅と松川村図書館を往復しただけで、有名な安曇野ちひろ美術館などには行かなかったため、今回のイベントに参加するのを楽しみにしていた。

ayc.hatenablog.com

 

松川村を訪れる

 愛知県から長野県のイベントに参加する際、JR中央西線で行くと前泊が必要となることが多い。2017年3月のWikipediaLIB@信州 #01の際には長野市で、8月のWikipediaLIB@信州 #02【小諸編】の際には上田市で前泊したが、今回も松本市で前泊した。

 昨年8月と同じように、松本駅から大糸線松川村に向かう。大糸線飯田線と同じように私鉄として建設されたため、駅間距離が短い。松本市街地で見えていた乗鞍岳はすぐに見えなくなり、安曇野市の豊科や穂高市街地では常念岳大天井岳が正面に来るが、松川村に入るとゴツゴツした有明山がひときわ目立ち、信仰の対象となっているというのもうなずける。8時過ぎ、県立長野図書館の平賀館長・小澤さん・AraiSyoheiさんが車で到着するのと同時に松川村図書館に着いた。

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(左)駅前の安曇節会館。(右)駅前の喫茶ロバ。

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(写真)松川村図書館が入っているすずの音ホール。

 

 今回の参加者は地元の大北地域の方が多く、松川村会議長や松川村会議員の方、地元の自治体の行政職員、県内の公共図書館員などがいた。参加者一覧によると、講師を除区参加者は28人、うち長野県内25人、県外3人。長野県内25人のうち一般が21人で、図書館関係者は4人ということだった。主催者による積極的な広報活動の結果、開催日が近くなって参加者がぐっと増えた。図書館員やウィキペディアンではない一般参加者の比率がこれだけ高いウィキペディアタウンは珍しい。

 ウィキペディアンは私のほかに、講師のさかおりさん、のりまきさん、AraiSyoheiさんがいた。のりまきさんだけは執筆グループに入ったが、私、さかおりさん、AraiSyoheiさんは4つの机を回って各班をフォローする形をとった。今回の講師はさかおりさんであるが、イベントの準備途中にはなぜだか私も講師扱いとなった。

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(写真)今回用意された資料。ブックトラックの資料だけでもかなり充実しているけれど、ほんとにすごいのは机に置かれた新聞スクラップ。

 

今回のスケジュール

09:15-09:35 開会

09:40-10:20 講師によるウィキペディアの説明

10:20-10:40 松川村の紹介DVDの鑑賞

10:50-12:00 まちあるき(バスツアー)

12:00-13:15 おひるごはん

13:15-15:45 編集作業

15:50-16:40 成果発表・講評

16:40-17:00 写真撮影・閉会

 

さかおりさんによる講義

 さかおりさんがウィキペディアタウンで講師を務めるのは初めてだとのこと。他地域で講師を務めることの多いくさかさん・らっこさん・Miya.mさんはどちらかというと“管理系”のウィキペディアンであるが、さかおりさんは“執筆系”のウィキペディアン。さかおりさんがウィキペディアに参加したきっかけ、のめりこむようになったきっかけ、有名になったきっかけはウィキペディア15周年イベントなどでも聞いたことがあったが、参加者にとってウィキペディアを身近に感じさせるような講義だった。

「地元の神社の記事がないことが気になっていた」さかおりさんは、「近くにある小学校の記事を書いたらダメだしされ」、「悔しかったから徹底的に調べて書いた」。この小学校の記事、2009年11月にの初版はでは2,300バイトだったが、現在は40,000バイトを超えている。「間違ってもいいから気軽に書いてみよう」「出典がなかったら加えてみよう。今回はそのきっかけ」。との言葉があった。

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(写真)さかおりさんによる「地域情報の発信はウィキペディアから」。地方病の記事も使って説明。

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(写真)松川村の紹介映像。

 

まちあるき(バスツアー)

 イベント前々日には雪が降り、前日には強風が吹いていたというが、この日はよく晴れて風もないうえに暖かかった。図書館のすぐ脇にある松川中央公園で正調安曇節の説明を聞いた後、20数人乗りのマイクロバスと6人乗りのワンボックスカーに分かれて、大和田神社、すずむし公園、安曇野ちひろ公園の3つの目的地に向かった。今回はまちあるきではなくバスで目的地を回り、松川村エコツアーガイド倶楽部の久保田さん(体育会系)と吉澤さん(文化系)がガイドを務めた。バスの走行距離は10km弱。

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(左)イベントの企画者である北アルプス地域振興局の坂田さん。(中)歌碑の前でガイドする吉澤さんと説明を聞く参加者。(右)移動に使ったマイクロバスとワンボックスカー。

 

地域について学び、愛着を高めることで、地域で生まれ育った若者や管内に在住している方の地域への定着に繋げるため、地域に存在する文化財や歴史的建造物等についての記事を作成し、インターネット上の百科事典である「ウィキペディア」に投稿する「ウィキペディアタウン」を開催します。

ーイベントの開催趣旨を公式サイトから引用

 今回は北アルプス“地域振興局”が主導したイベントであり、地域への定着のに繋げる試みのひとつだった。村民なら誰でも知っている神社や公園、村民以外にとっては知らないけれど興味を引かれる目的地、という絶妙な選定だった。

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(写真)巨大な神楽殿や土俵がある大和田神社。

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(左)神戸原扇状地の写真を撮る平賀さんを撮る小澤さん。(右)すずむし公園から見た有明山。

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(左)安曇野ちひろ公園。(中)青空が気持ちよすぎて木登りする参加者。(右)とっとチャン広場に設置されている「モハとデハニ」。

 

  12時過ぎには図書館に戻り、主催者に斡旋された地元の店のお弁当、もしくは信濃松川駅周辺の店でおひるごはん。時間にゆとりがあったので図書館内も見学した。一般書と児童書の混配がこの図書館の特色であるが、他館の公共図書館の方に「作家別に分けられた9類の棚に全集も並べられている」という点を指摘された。なるほど。表紙を隠して帯の内容だけを見せる展示もおもしろい。

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(写真)松川村図書館の書架や展示。

 

Wikipediaの編集作業

 午後は県立長野図書館の小澤さんによる「Wikipedia Townを楽しむために」から。毎回思っているのですが小澤さんと篠田さんはただものではないですよ。さかおりさんがWikipediaに書く記事は「読ませる記事」だそうだけど、小澤さんと篠田さんは「聞かせる説明」で、こちらがはっとするような言葉が何度も出てくる。

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(写真)小澤さんによる編集作業の説明。

 

 さて。今回は私、さかおりさん、のりまきさん、AraiSyoheiさんの4人のウィキペディアンが参加していた。メイン講師であり30分強の講義を行ったさかおりさんとともに、なぜか私も講師という扱いになっていた。のりまきさんは文献を調べてウィキペディアの記事を書くことに絶対の強みがあり、AraiSyoheiさんはファシリテーターとしての能力に秀でている。私がすべきことはなんだろう。

 午後には「大和田神社 (松川村) - Wikipedia」(新規作成)、「松川村図書館 - Wikipedia」(新規作成)、「安曇野ちひろ公園 - Wikipedia」(新規作成)、「安曇節 - Wikipedia」(加筆)の4つの班に分かれて編集作業を行った。 ウィキペディアンの中でのりまきさんだけは班に入ったが、その他の3人は自由に動きながら編集作業をサポートする形をとった。今回は参加者の約2/3がウィキペディアの編集未経験者であり、ウィキペディアタウンの参加経験者も4-5人に過ぎなかった。

 ウィキペディア編集の熟練者がいるとその方が仕切る立場になることが多い。全員が未経験者もしくは初心者であれば、全員が対等な立場でワークショップを進められるかもしれない。参加者の主体性に期待しているこの方法に対しては、「講師が講師としての役割を放棄した」と感じる方もいたかもしれない。

 

私は「安曇野ちひろ公園」の班の状況を気にかけながら、自分でもこまごまとした編集作業を行った。編集対象となった記事に「Template:工事中」を貼ったりノートページにイベントの編集対象となった旨を書いたりした。記事リンクの整備Wikimedia Commonsへのリンク地図や写真ギャラリーの挿入なども。やはり自分には編集サポートという役割がいちばん合う。

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 (写真)編集作業中の参加者。みんな真剣。

 

編集対象となった記事

※成果発表後の講評で述べたことの要約です。

安曇節 - Wikipedia - 加筆

 2014年にMizuhara gumiさんによって作成された記事。Mizuharaさんは安曇野の方ではないはずだが、地域外で入手できる文献で安曇節の概要を手堅く知れるようになっていた。今回のイベントでは『唄え、安曇節』や新聞記事「愛され歌い継がれ安曇節」など、地元でないと入手が難しい文献を使って、既存のきちんとした骨格に肉が付いた。「おもしろみ」の要素が加わった。写真があればなおよいと思い、イベント後には安曇節会館と歌碑の写真を追加した。

 

松川村図書館 - Wikipedia - 新規作成

 昨年8月に個人的に訪れた図書館であり、自分で記事を作成しようかとも思ったけれど、できれば地元の方に作成してもらいたいと思い、またWikipediaLIBでも作成対象にできると思い、作成するのを控えていた。単なる利用案内にとどまっている図書館記事(例えばこれ)も多いが、この記事は特色節が設けられているのがいい。入口のランドセル置き場の存在、顔写真が添えられた作家紹介など、細かいけれど他地域ではなかなか見られない特色についても追記してほしい。

 

安曇野ちひろ公園 - Wikipedia - 新規作成

 高校生や大学生が参加者の中心であれば、編集ワークショップでやるべきことは個別に指示を出してしまうほうがうまくいくかもしれない。参加者が大人であるからこそ、編集ワークショップの2時間半をどう使うかも自分たちで考えてもらうやり方がある。この班は鄭さん以外にウィキペディアタウンの参加者がいなかったが、「何を書くか」について他の班よりじっくり考えたことが記事から見て取れる。公園内にある安曇野ちひろ美術館は有名だけれども、公園そのものについては検索してわかる情報が少ない。公式パンフレットの要約にとどまらない、百科事典とは何かについてよく考えた内容になっている。

 

大和田神社 (松川村) - Wikipedia - 新規作成

 イベントの準備段階で編集対象とする記事を聞き、ひとつひとつぐぐって簡単に調べたが、大和田神社だけはほとんど情報が見つからなかった。イベントの対象にするほどの神社なのか疑問を持っていたが、実際に訪れてみると巨大な神楽殿があったり土俵があったりして興味深い神社だった。この神社の情報をウェブに残せるのはこの地域の人だけだと思ったし、この題材を今回のイベントで取り上げた主催者はイベントの本質を理解していると思った。

 

 イベント後には信濃松川駅前の割烹料理店「いろは亭」で懇親会。松川村の紹介映像にも登場した田鯉のすずめ焼きなどが出てきた。

 

ふりかえり

 今回のイベントの企画者は北アルプス地域振興局。松川村松川村図書館が会場となり、ウィキペディアイベントの開催実績がある県立長野図書館が運営面で協力している。北アルプス地域振興局の中でも特に坂田さんが中心となったが、2017年8月のWikipediaLIB #02【小諸編】で坂田さんとさかおりさんが一緒のグループになったことが開催のきっかけだったらしい。

 2017年7月のウィキペディアタウンin飯田、8月のWikipediaLIB@信州 #02【小諸編】、11月のウィキペディアタウンin福井市東郷も、WikipediaLIB@信州 #01の参加者が自身の所属館で開催を実現したイベントだった。ウィキペディアタウンを長野県各地に広めるというWikipediaLIBの意図は確実に成果を出している。

 

 知り合いが少なくて緊張していたことで中身が今一つだったWikipediaLIB@信州 #01、少しゆとりができて話の内容にもあそびを入れられたWikipediaLIB@信州 #02【小諸編】に続いて、県立長野図書館からは今回も一般参加者と違う役割が与えられた。私は人前で何かしゃべるのが苦手だし、ほぼ即興でしゃべらなければいけない“講評”のような役割を与えられるとどきどきする。もともとのレベルが低いので、1回ごとに目に見える成長がないといけないと思っている。今回はどうだったかな。個人的には、この3回のイベントにいつもいてくれた諸田さんや井原さんの存在が心強かった。

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イベント中や懇親会の最中にはある方といろいろ話す機会があり、また後日にもfacebookのメッセージでやりとりした。初めてお会いした時からこの方にはちょっと苦手意識を持っていたのだけど(ごめんなさい)、やはりすてきな方だと思うようになりました。まだまだこの方に対する距離感はぎこちないのだけれど。