振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

飛島村図書館を訪れる

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(写真)2013年の飛島村図書館。撮影者 : ぽんぽこ。Wikimedia Commonsより。オリジナルはカーリルに投稿されたもの。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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(地図)名古屋圏における飛島村の位置。OpenStreetMapより。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

 飛島村について

 台風21号が日本に迫っていた2017年10月21日(土)、海部郡飛島村にある飛島村図書館を訪れた。

 さて、この飛島村は愛知県に2つしかない村のひとつ。もうひとつは愛知=静岡=長野三県境にある豊根村であるが、飛島村名古屋市中心部から南西に15kmという近距離にある。居住人口4,400人は豊根村(1,300人)と東栄町(3,800人)に次いで少ないが、昼間人口は13,000人にまで増える。それは村の南部に名古屋港臨海工業地帯を抱えているから。中部電力西名古屋火力発電所三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所川崎重工業などの事業所がある。飛島村は財政力指数で常に全国1位ということでも知られている。

 

飛島村を訪れる

 飛島村鉄道路線は通っていない。近鉄名古屋線近鉄蟹江駅から飛島公共交通バス(コミュニティバス)が毎時1-2本(平日)の頻度で出ている。コミュニティバスとしてはかなりの高頻度だと思われる。

 海部・津島地域において、蟹江町津島市に次いで1889年に町制を施行した歴史ある町。飛島公共交通バスは蟹江町飛島村を結ぶ最短距離を通らず、蟹江川の自然堤防上に築かれたらしい舟入集落を通る。この集落はかつて空襲を受けたらしい。蟹江川、日光川、善太川、宝川と川を渡る。

 亀ヶ地バス停で何人か下りたのが気になったが、このバス停は旧・十四山村(現・弥富市)の中心地に近いようだ。旧・十四山村の住民にとっては、弥富市コミュニティバス弥富駅まで出るよりも、飛島公共交通バスで近鉄蟹江駅まで出る方が名古屋までのアクセスがよい。平成の大合併時には「弥富町蟹江町・十四山村」の2町1村で協議を進めていたものの、蟹江町が離脱して「弥富町・十四山村」の1町1村での合併を余儀なくされた経緯があるらしい。

 近鉄蟹江駅から約20分で飛島村役場に到着した。なお、飛島村には国道23号と伊勢湾岸道が通っており、車を使えば公共交通機関よりも容易に訪れることができる。

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(写真)近鉄蟹江駅に停車中の飛島公共交通バス。

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(地図)飛島村図書館へのアクセス。OpenStreetMapより。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

  地理院地図の色別標高図で飛島村中心部を見てみるとこんな感じ。真っ青。自然堤防上に築かれた集落部分は0mを超えているが、それ以外の部分(農地)は0mから-2mくらい。飛島村役場や飛島村図書館はかつて農地だった場所に建設されているため、役場前の道路にカーソルをあててみると-1.5mという数字が出てくる。役場の建物前には「海抜0m線」と「伊勢湾台風の被災水位線」が示されていた。

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(写真)伊勢湾台風の被災水位が示された飛島村役場。

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(左)飛島村役場。(右)村立小中一貫校の飛島学園。人口4,400人の自治体とは思えないですね。

 

飛島村図書館

 飛島村図書館が入る飛島村すこやかセンターは大規模改修工事の最中で、強い雨が降る悪天候もあって見栄えの悪い写真しか撮れなかった。このエントリーの最上部にある晴天時の写真は、ぽんぽこさんが撮影してカーリルに投稿されたものをWikimedia Commonsに移した。船をモチーフにした外観が印象的で、船の内部には児童書が、奥側には一般書が並べられている。

 他の図書館で調べた結果によると、2016年度の図書資料費は707万円であり、1人あたり図書資料費は1609円/人。全国平均は200円/人強であり、愛知県では断トツのトップ。1人あたり貸出数は16点を超えており、これも愛知県ではトップだ。新着本/準新着本コーナーには過去半年分ほどの購入図書が置かれている。

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(左)飛島村すこやかセンターの全景。正面のモニュメントはクジラがモチーフ。(右)飛島村図書館。

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(写真)飛島村すこやかセンター2階にある飛島村図書館の入口。

 

飛島村図書館について調べる

 さて、いつものように「飛島村図書館」そのものについて調べる。館内の最奥部に地域資料の書架があり、『飛島市史』はすぐに見つかったものの、『図書館概要』各年版が見あたらない。帰ってからOPACを確認すると、18年分が製本された状態(?)でどこかに置いてあったらしい。

 開館前・開館当時の『広報とびしま』は事務室から出してもらった。OPACには出てこないが蔵書扱いになっていないのだろうか。この複合施設は1996年に開館しているが、1995年・1994年頃の『広報とびしま』には抜けが多く、あまり役に立たなかった。

 台風21号の接近中に訪れたこともあって、地域資料の書架にあった伊勢湾台風関連資料をぱらぱらとめくった。飛島村では132人がなくなったそうだ。今年7月に愛知県古文書館で公開された写真などを見ると被害の状況が伝わってくる。1959年の伊勢湾台風からは50年以上が経過しているので、図書館などが所蔵している写真には著作権の保護期間が満了している写真も多いのではないかと思う。

 

 飛島村から帰ってから、中日新聞のデータベースでも飛島村図書館について調べてみる。図書館開館前の1990年、全国の自治体で初めて複製絵画の貸出を開始したのが飛島村だったそうだ。西尾張地方では稲沢市などでも同様の事業を行っている。今では珍しくないサービスだと思うが、発祥地が飛島村だとは知らなかった。

 1997年には14時から16時に限ってインターネットを利用できるサービスを開始したらしい。当時は「同様のサービスを行っている公共図書館は珍しかった」。飛島村は図書館開館当時から書店やレンタルビデオ店がない自治体。インターネットが使える、雑誌の最新号が発売日に読める、視聴覚資料を借りられるというのは重要だ。

 1997年には村内の中部電力西名古屋火力発電所内に企業文庫が設けられたという記事も興味深い。団体貸出制度で常に200冊を常備した上で、企業文庫内に業務用移動端末機を持ち込んで貸出・返却処理を行ったという。このように1990年代には飛島村図書館を取り上げた新聞記事がいくつか出てくるが、2000年代以降にはめぼしい記事がない。

 

写真撮影について

 カウンターには赤色のエプロン姿の女性職員が4人、カウンターからも見える事務室には白シャツにネクタイの男性職員が2人いた。カウンターで写真撮影について聞いてみたところ、対応してくれた職員は「利用者が入らなければいいのではないか」と言いかけてやめ、事務室の職員に可否を尋ねてくれたが、「写真撮影したいという利用者がいますが、写真撮影はだめですよね?」「ええ」というやり取りが聞こえてきた。図書館として明確な規定を定めているのではなく、職員の裁量による判断に聞えたが、どうだろう。

 

複写について

 町村立図書館では職員しかコピー機を触れない図書館も多いと思われるが、飛島村図書館のコピー機は利用者自身が操作できるし、図書館でもっともよく見かける富士ゼロックス製のコピー機には拡大縮小や集約などの機能が付いている。が、コピー機には「拡大・縮小はできません(著作権法)」という注意書きが貼ってあった。

 まさか「著作権法で定められている」などと言われるのではないか気になったので聞いてみたら、案の定「コピー機で拡大・縮小ができないことは著作権法で定められている」と言われた。カウンターの女性職員と事務室の男性職員には同じことを言われたので、この図書館ではこの解釈で長らく対応してきたのだろう。うむ。なるほど。なお、コピー機の前には男性職員2人分の図書館等職員著作権実務講習会修了証が誇らしげに飾ってあった。

 

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 これまでに訪れた図書館の一覧はこちら。飛島村図書館は館内での写真撮影が不可だったので、青色/黄色/赤色/灰色のうち赤色でポイントしました。外観の写真は掲載しています。

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