振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

松川村図書館を訪れる

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北安曇郡松川村

 豊科駅から再びJR大糸線に乗り、信濃松川駅で降りて松川村図書館に向かった。この日は安曇野市豊科図書館、松川村図書館、安曇野市中央図書館を訪れてから長野市に移動して「第16回 県庁夜講座」を見学する予定だった。平日昼間のJR大糸線の運行本数は1時間に約1本。駅から図書館までの移動時間も含めた滞在時間は1館2時間。ざっくりいうと11時-13時は豊科町、13時-15時は松川村、15時-17時は穂高町というスケジュールだった。

 

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 OpenStreetMapを加工。安曇野で訪れた3館。

 

 地図を見ると松川村から高瀬川を挟んで対岸には池田町がある。松川村と池田町は人口も面積も同じくらい。Wikipediaによると池田町は1970年(10,245人)から2015年(9,926人)にかけてわずかに減少しているけれど、松川村は1970年(6,342人)から2015年(9,948人)には1.5倍になっている。こんなに近いのだったら翌日のWikipedia LIB@信州のために池田町図書館の写真を撮ってくればよかったと思った。

 地図上では双子都市のようにも見えるけれど、松川村と池田町の間に橋は1本しか架かっていない。かつては池田町に池田鉄道(1926年-1938年)という鉄道路線が通っていたらしいけれど、信濃松川駅から分岐していたのではなく、安曇追分駅から分岐していたらしい。

松川町」という名称の自治体は全国に4つあるらしいけど、「松川村」はこの安曇野だけ。平成の大合併以降は自然豊かな「村」のイメージが良いこと、同県内にはすでに松川町があることもあって、いつまでも町制を施行することなく松川村なのだろう。

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(写真)小学校の傍らにある公園にはかぼちゃが実ってた。

 

松川村図書館を訪れる

 信濃松川駅から松川村図書館までは徒歩5分。駅前通りを西に進むと、松川村役場の南側に多目的交流センター「すずの音ホール」がある。Google Mapでは道程の途中にセブンイレブンがあることになっているけれど、これは巧妙な罠だ。

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(写真)多目的交流センター「すずの音ホール」。

 

 2009年に開館した「すずの音ホール」の核は全席可動250席のホールと収蔵能力5万冊の図書館。図書館に入るとすぐ左手にはランドセル置場があった。図書館の東側には松川村立松川小学校があり、学校帰りの来館を想定しているらしい。実際にランドセル置場が利用されている光景を見てみたかったが、この日は夏休み真っ最中ということでランドセルはなかった。

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(左)松川村図書館の入口。(右)入口にあるランドセル置場。

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(左)館内の入口側半分。(右)館内の奥半分。

 

 まずは館内を歩く。南側・西側の閲覧席からは芝生広場が見える。平面図を見ると「すずの音ホール」は長方形ではなく、図書館部分だけが松川中央公園に向かって突き出している。背もたれがゆったりしたソファのような席、読書やちょっとした学習に便利な席、子どもが座りやすい低い席など、それほど広くない館内にはいろんな座席がある。

 文芸書の書架にある著者名仕切りには作家の顔写真が添えられているし、顔写真以外には生年・出身県・主な作品・受賞歴などがわかるようになっている。読んだことのない作家の作品を手に取ってみたくなる仕掛けなのだけど、他の図書館で同じアイデアを見たことがないのはなぜだろう。顔写真がない作家も何人かいたけれど、大半の作家には顔写真がついていた。

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(左)1人用の閲覧席。(右)ソファ席と机を囲む席。

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(左・中)辻村深月の著者名仕切り。(右)顔写真のないさくらももこ

 

 館内の手前側半分には低い書架、展示スペース、インターネット用パソコンなどがあり、館内の奥半分には高い書架がある。高い書架の中でいちばん目立つ部分には新刊コーナーがあった。実数はそれほど多くないのだろうけれど、展示の仕方のせいか多く見える。新刊が多い(多く見える)というのは利用者にとって嬉しいこと。私の住んでいる自治体は新刊の見せ方が下手なので「蔵書数は多いが古い本しかない」というイメージをぬぐえない。

 奥側の高い書架には一般書と児童書が混配されている。参考図書と一般書の混配は何度か見たことがあるけれど、一般書と児童書の混配を見るのははじめてかも。じっくり眺めているとなかなかおもしろい。

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(左)新刊本コーナー。(右)一般書と児童書の混配の様子。3類。

 

 掲示板の「みんなのおすすめ本」、その隣の「わたしの本バコ」、ヤングアダルトコーナーの「松川中学校図書委員オススメ本」は利用者と図書館をつなぐ仕掛け。本好きの交流の場にもなりそう。ヤングアダルトコーナーからは、(図書館職員だけでなく)実際の利用者の意見が反映されているようなにおいがする。

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 (左)「やまおとこの持ち物展」。(右)村上春樹の特集展示。

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(写真)利用者と図書館をつなぐ掲示板と本箱。

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 (写真)ヤングアダルトコーナー。中央は「松川中学校図書委員オススメ本」。

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(左)児童書。(右)おはなしのへや。

 

記事「松川村図書館」について考える

 現時点で、Wikipediaに「松川村図書館」という記事は存在しない。2回開催されたWikipediaLIB@信州でも、たまたま松川村図書館は題材にならなかった。

 松川村図書館は図書館界では知名度がある図書館で、ウェブ検索すると「長野県上伊那路の図書館からの報告」や「松川村に図書館をつくる」のようなページが見つかるし、国立国会図書館サーチでは棟田さんが書いた「長野県・松川村図書館 美術館のある村の楽しい図書館」(『図書館雑誌』2017年5月号)などの文献が見つかる。『あうる』2009年8-9月号にも何か載っているのかもしれない。

 書籍では『明日をひらく図書館』(青弓社、2013年)に「いま、村の図書館が面白い」という文章が掲載されている。『松川村誌』は1988年刊行なので図書館の記述はないだろうが、公民館図書室について何か書いてあるだろうか。『市民タイムス』や『信濃毎日新聞』などの地方紙でも松川村図書館に関する記事が期待できそう。

 翌日の「WikipediaLIB@信州 #02 【小諸編】」で作成した「池田町図書館」や「松川町図書館」に比べると文献が集まりやすそうだし、なによりWikipediaに記事があってほしい図書館だと思う。

 とはいっても、私自身が作成することには消極的。『図書館雑誌』や『明日をひらく図書館』は愛知県でも閲覧できるけれど、新聞記事や自治体広報誌は閲覧できない。私が作成するとなると中途半端な状態で投稿せざるを得ないのは明らかなので、だったら図書館の方、地元の方、松川村図書館に愛着のある方に作成してもらいたいと思っている。

 

おわり

 はじめて訪れる図書館では、館内を一通り歩いた後に写真撮影のためにカウンターに声をかける。この日は館長の棟田さんがいないことはわかっていたけれど「館長さんはお休みですか?」と聞いたら(こちらは某海獣さんの名前は出してないのに)「後で●●●さんと一緒に来るって言ってました」という返事が返ってきた。この司書さんは3月の「WikipediaLIB@信州 #01」に参加して私の顔を覚えていてくれたらしい。松川村図書館を訪れることは誰にも言わずに来たのに、しかもそ知らぬふりして話しかけたのに、一発で特定されるとは。図書館員に観察眼は重要ですよね。まあパソコンを入れた重いリュックを背負ってたのでよそ者なのは一目瞭然ではあった。●●●さんと棟田館長が来たのは私が松川村図書館を出てから1時間半後くらいだったようです。