振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

小布施町立図書館まちとしょテラソを眺める

Library of the Yearを受賞した図書館

2016年3月にWikimedia TOWN×INA Valleyに参加する前、伊那市立図書館について検索してみた。2013年に「Library of the Year」という賞を受賞しているすごい図書館らしい。どうすごいのかはググってもよくわからなかった。

実際に高遠町図書館と伊那図書館を訪れてみると、いろいろな点に目を見張った(ただしそれは「Library of the Year」の受賞理由とは違う部分だと思う)。コピーして持ち帰った文献からは深い歴史が見えてきた(それも受賞理由とは違う部分だと思う)。自分の目で伊那市立図書館を見て、伊那市立図書館についての文献を読むことで、確かにこの図書館はいい図書館だと思った。

 

2016年8月には、前年に「Library of the Year」を受賞している多治見市図書館を訪れた。まとまった量の陶磁器資料コーナー以外で分かりやすい「ウリ」はないように見えた。「Library of the Year」でどんな点が高く評価されたのはわからなかったけれど、家に帰ってから小嶋智美さんによるプレゼンのPDFを読んで、少しだけ納得した。

同じく8月には、2011年に「Library of the Year」を受賞している小布施町立図書館まちとしょテラソ - Wikipediaを訪れた。中も外も印象的な建物で、居心地の良さを感じたが、やはり「Library of the Year」の受賞理由はわからない。「まちづくり」とのかかわりが評価されているようなので、図書館に入って2時間過ごしただけでわかるものではないのかもしれない。

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まちとしょテラソを訪れる

8月に現地を訪れる前から、ウィキペディアのまちとしょテラソの記事を加筆しようと考えていた。初夏には文献を集め始めており、まずは地元の愛知県図書館で『はなぼん』や『明日をひらく図書館』などの書籍を、『新建築』や『図書館雑誌』などの雑誌記事を確認した。そして8月には現地で建物と館内の写真を撮影し、その日の午後に県立長野図書館を訪れて『小布施町立図書館 図書館のあゆみ』をコピーした。

ただ、長野県には『愛知県図書館史年表資料考察: 愛知県における図書館のあゆみ』のような文献がないらしい。頼みの綱の『近代日本図書館のあゆみ 地方編』にも言及がない。『-図書館のあゆみ』はOPACで検索するとヒットする唯一の文献だったが、ただのパンフレットだったのでがっかりした。核となる文献がみつからないので加筆を取りやめていた。

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まちとしょテラソが加筆される

2017年3月20日には県立長野図書館でウィキペディアタウン「WikipediaLIB@信州」が行われた。平賀館長の推薦でまちとしょテラソも加筆対象となった。イベントに参加していたAncorone3さんはイベント終了後にも加筆を続け、「WikipediaLIB@信州」までとはまったく別の記事になった。

書籍、雑誌記事、新聞記事、町史、町報、ウェブサイトと、いろんな種類の文献が使われている。私は町報や町史などを手に取る前に文献集めをやめていた。『月刊社会教育』、ビッグイシュー 、『関東地区公共図書館協議会研究集会報告書』などにはそもそもたどり着けなかったと思う。

 まちとしょテラソ以前には小布施町に図書館がなかったのではないかという先入観があった。WikipediaLIB開催前のページには2006年以前の歴史が一行も書かれていない。ところが、Ancorone3さんの加筆で長い歴史が見えてきた。小布施町の図書館サービスは1923年からずっと続いているらしい。2006年まで図書館があった場所や、まちとしょテラソが建つ前にあった施設のこともわかるようになった。沿革節の小節タイトルは悩んだのではないかと思う。「小布施町立図書館まちとしょテラソ」という記事名なのに、まちとしょテラソができる前の歴史のほうがずっと長い。

Library of the Year受賞の要因となる「取り組み」節も充実した。「まちじゅう図書館」、「デジタルアーカイブ」、「花の童話大賞」の三本立てになっている。

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まちとしょテラソを読む

加筆された文章を読むと、現地を訪れた時のことを思い出す。

サクラの老木を避けるようにして作られた光庭がある

敷地には何本かのサクラの老木が植わっており、建物に向けて張り出している。この老木の枝を避けて壁が窪んでいる一角はとても印象的だった。外に出て写真を撮ろうと思っていたが、どうやら撮り忘れたらしい。

 

室内の気配を感じ取れる

小布施町の人口は2万人に過ぎない。まちとしょテラソの延床面積はわずか1,000m2。ワンフロアのうえにバックヤード部分が少ない。館内の人の動きを感じ取れるような雰囲気がある。

 

まちじゅう図書館

「主な取り組み」節にはまちじゅう図書館のイメージ画像が使われているが、この画像は図書館内の展示を撮っただけであって、実際のまちじゅう図書館ではないのが申し訳ない。いつか本物のまちじゅう図書館の写真を撮りに行きたい。

 

外壁の薄黄色は小布施町の名産である栗や土壁などから選ばれた

Infobox内のメイン画像はプロの写真家が撮ったものらしく、この場所の雰囲気をよく表しているけれど、外壁の色はわからない。「主な取り組み」節には昼間の外観の画像が使われていて、この薄黄色にもきちんと理由があったことは初めて知った。

 

布施正倉・小布施人百選・花の童話大賞

デジタルアーカイブ事業や花の童話大賞については、図書館を訪れただけではわからない。その意義が伝わりにくい事業にも思えるので、公式サイトの紹介ページ以外でネット上に残すのは重要なことだと思う。

 

 

昨秋にMiyuki Meinakaさんが飛騨市図書館 - Wikipediaを加筆された時には、現地を訪れて撮ってきた写真を追加した。まちとしょテラソでも何か援護射撃したい。

『長野県史』、『長野県教育史』、『長野県社会教育史』には何か言及があるだろうか。東京や愛知の図書館から相互貸借することは可能とはいっても、書棚から手に取って調べたい。

OPACで検索しても、小布施町立図書館単体での事業年報はみつからない。ということは町の社会教育施設全体の事業年報があるのだろうか。これは小布施町立図書館に対してレファレンスを行ってみないとわからない。

信濃毎日新聞データベースで検索するとどんな記事が見つかるだろう。全国紙にも取り組みが取り上げられるような図書館なので、何も見つからないことはないと思う。新聞記事データベースは現地在住でないと利用が難しい。

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※写真の撮影者はいずれもAsturio Cantabrio。Category:Machi tosho terrasow - Wikimedia Commonsにオリジナルサイズの画像があります。