振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

ウィキペディアタウンin瀬戸内市 第2弾に参加する

瀬戸内市民図書館「もみわ広場」に行く

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瀬戸内市民図書館「もみわ広場」。右は旧館が入っていた中央公民館。

 

2月25日(土)には瀬戸内市民図書館「もみわ広場」に行きました。瀬戸内市を訪れたのは2016年2月以来で1年ぶりであり、6月の「もみわ広場」開館後には初めてです。「もみわ広場」の延床面積は2,400m2、開館時の蔵書数は約8万冊であり、総事業費は約10億円です。これだけ小規模の新館かつ中央館は訪れた記憶がなく、どんな図書館であるのか興味を持っていました。

雨が降っていた前回訪問時とは異なり、今回は雲が多いながらも穏やかな晴天でした。芝生の中庭には牛窓の特産品であるオリーブが植えられ、レンガや木材など茶色系の建物外観とよく調和しています。

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(左)市民によるタイルが飾られた外壁(右)前回訪れた“日本のエーゲ海牛窓

 

南向きの入口から入るとロビーがあり、ちょっとした飲食スペースや子どもの遊び場があります。この建物は複合施設ではなく単独館という位置づけだと思いますが、いい意味で図書館らしさを感じないロビーです。ロビーにはカフェの設置を見据えた場所があり、現在は自動販売機が置かれています。

建物はざっくりと言えば「L」字型であり、ロビーがある「L」字の内側は吹き抜けになっています。このロビーからは図書館の全体を見渡せるような印象を受けます。ロビーでおしゃべりする子どもの声が図書館の隅々まで聞こえてしまうということでもあります。「L」字の内側部分にはロビーのほかに、郷土資料館に近い「せとうち発見の道」というエリアがあります。

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(左)自販機コーナー。将来的なカフェスペース?(中・右)「せとうち発見の道」。床にも何か埋まってる。

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 (左・右)1階の書架やソファー。

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 (左)「全国津々浦々 図書館員の本棚 数珠繋ぎ」。知っている方も何人か。(右)酒の展示。酒樽や徳利まで置いてある。

 

ウィキペディアタウンin瀬戸内市 第2

今回のイベントも前回同様に、13時30分に始まって15時30分に終わります。まちあるきを行わない簡易版のウィキペディアタウンで、短時間なので参加しやすいというメリットがあります。イベント開始前には何度か、イベントを告知する館内放送が流れました。

講師はアカデミック・リソース・ガイドの岡本真さん。図書館の嶋田さんと村上さんも含めて10人が参加しました。聞いた限りでは瀬戸内市の教育委員、瀬戸内市の市民団体、他市の図書館司書、みんなの経済新聞ネットワークの記者などが参加していました。

前半の1時間は岡本さんによるウィキペディアの説明など。後半の1時間が文献探し・編集作業・成果発表です。岡本さんの説明の中では、「情報のアップデートが困難な紙の百科事典は内容が不正確なこともある」(現首相の名前、惑星の数など)、「ウィキペディアは批判されることもあるが、自分で改善することもできる」、「今日書いた文章が明日には変わっているかもしれない」などが記憶に残りました。

 

1年前のイベントでは運営側が「佐竹徳 - Wikipedia」(牛窓で活動した洋画家)を編集対象に選んだうえでイベントを行いました。今回は「瀬戸内市 - Wikipedia」「牛窓オリーブ園 - Wikipedia」「門田貝塚 - Wikipedia」「竹田喜之助 - Wikipedia」などを候補に挙げた上で、参加者が編集項目を決める形を取りました。2グループに分かれて「瀬戸内市」と「竹田喜之助」を編集しています。

ウィキペディアタウンイベントで自治体記事をメインの編集対象にすることはなかなかありません。新規作成の達成感はありませんが、自分が住んでいる自治体ということで誰もが主体的に編集に臨めるというメリットがあります。

瀬戸内市は図書館内で公衆無線LANサービスを提供しています。約10台のiPadが編集作業用に用意されましたが、数台のiPadからはウィキペディアへのアクセスができない(何らかのフィルタリング?)という謎のアクセス障害もありました。

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他のウィキペディアタウンイベントと比べると編集時間が短く、細かな修正が中心だったものの、地元の方でないと気づかない部分の修正(教育長の名前の更新、祭礼の名称の修正、幼稚園の休園の反映、瀬戸内市立図書館へのリンク追加など)、外部の者だから気づく部分の修正(出身有名人/ゆかりの有名人の追加、新市名候補への出典の追加、マスコットの記述の追加など)、両者が合わさって質が向上しました。

地域資料コーナーの書架には竹田喜之助に関連する資料がまとめられた段があり、また図書館内には竹田喜之助が操った人形のギャラリーがあります。「竹田喜之助」にはギャラリーに展示されている人形の画像が追加されました。図書館内には門田貝塚の地層をはぎとって展示している壁があり、この壁の写真を「門田貝塚」に掲載する編集も行われました。

現在上映中の映画『君と100回目の恋』は牛窓でロケが行われたそうですが、「瀬戸内市」にはフィルムコミッション関連の記述がないという指摘があり、今後の編集が期待されます。

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 (上左・上右)喜之助ギャラリー&シアター

 

旧館を振り返る

「もみわ広場」が開館したことで初めて図書館を訪れた瀬戸内市民は多いのではないかと思います。開館から8か月が経ち、図書館の存在が瀬戸内市に定着しているように感じました。ただ私としては、旧館の記録をきちんと残しておくことも重要だと考えます。

 

2010年度における瀬戸内市の1人あたり貸出数・1人あたり蔵書数・1人あたり資料費は、いずれも岡山県の24自治体中24位。旧館は図書館法における「図書館」という位置づけではありましたが、実質的には中央公民館図書室を改称しただけであり、118m2という延床面積は図書館を名乗るにはつらいものがありました。ただし、誰もがカウンターにひと声掛けてから入室するような雰囲気のいい図書館でもありました。

ウェブ上には「もみわ広場」についての文章や写真がいくつも見つかり、総じていい印象を持たれています。その一方で旧館時代の文章や写真はほとんどないようです。旧館の記憶を文章で記録しておくために作成したのが瀬戸内市立図書館 - Wikipediaであり、初版を作成したのは「もみわ広場」開館の3日前です。

この記事には旧館の館内の画像が掲載されていません。昨年2月に訪れた時には司書さんに撮影の許可をいただいたのですが、カメラの電池切れで撮影できませんでした。閉館した旧館の館内の写真を撮っておけなかったのが心残りです。

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(追記)前回の「ウィキペディアタウンin瀬戸内市」は完全に瀬戸内市民向けのイベントだと思っていました。岡山市上道(2016年11月)と尾道市(2017年3月)のイベントにつながったということを最近になって聞いて驚きました。今回のイベントも他自治体のイベントにつながりそうで楽しみ。