振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

京都オープンデータソン2016 vol.1

7月18日(月・祝)、オープンデータ京都実践会が主催する「京都オープンデータソン2016 vol.1(青蓮院、円山公園粟田神社)」に参加した。

 

今年2月頃にはFacebookの非公開グループ「(運営)オープンデータ京都実践会運営」に加えてもらった。5月22日には「Wikipedia ARTS 京都国立近代美術館、コレクションとキュレーション」が開催されているが、こちらはARTLOGUEが主催、協力として実践会という形態だったため、実践会が主催するイベントは7月18日のものが2016年度初。イベント名にあるように、今回の対象施設は青蓮院(しょうれんいん)、円山公園(まるやまこうえん)、粟田神社(あわたじんじゃ)。

集合場所は京都府図書館3階会議室。10時から1時間かけてWikipediaOpenStreetMapの説明を聞いた後、11時頃に岡崎の町に繰り出す。まずは約16人の参加者全員が三条通で昼食をとり、その後粟田神社→青蓮院→花園天皇陵の順に回った。イベント名に含まれている円山公園には向かわず、代わりに是住さんが下見時に見つけた(?)花園天皇陵に行くこととなった。

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撮影 : Asturio Cantabrio

 

街歩きとバックヤードツアー

粟田神社三条通りの南側、東山の中腹にある。2011年に統廃合の対象となった京都市立白川小学校の脇に一の鳥居が建っているが、三条通りを歩いていても気付かない人もいるかもしれない。東山区京都市の中でも小中学校の統廃合が特に盛んな区であり、2010年には小学校8校・中学校3校の計11校があったのが、2015年には小中一貫校2校(東山開晴館、京都市立東山泉小中学校)にまで減っている。

三条通りからかなり坂を上ると粟田神社の本殿が見えてくる。北側に向かって開けており、かつての粟田郷/粟田荘/粟田口村の産土神であったことを実感する。境内からは鮮やかな赤色の平安神宮大鳥居が見える。執筆に使える粟田祭の情報を手に入れたかったが、パンフレットなどは発行していないようだった。

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粟田神社境内から北西方向を見る。中央の赤色は平安神宮大鳥居。撮影 : Ujigis(Wikimedia Commonsより)

 

つづいて青蓮院に向かう。青蓮院は知恩院のすぐ北側にある天台宗の寺院であり、観光客が数人しかいなかった粟田神社とは対照的に、外国人観光客の姿が多い。複数の建物が廊下で結ばれており、その庭園は建物内から見たときと庭園に降りた時で印象が異なる。

今回の街歩きの引率は是住さんが行っていたが、男性陣が時間にルーズで予定通りに進まない。青蓮院の後には隣接する花園天皇陵に向かうが、平日以外は門が閉じられているとのことで、天皇陵を見ることはできずに京都府図書館に引き返した。この日は朝から日差しが強く、街歩きが短縮されたのは結果的にはよかったかもしれない。

涼しい府立図書館の館内では、これまた是住さんの引率でバックヤードツアーが行われた。普段は入ることができない相互貸借資料の保管庫、閉架書庫、電動書庫などを見せてもらう。特に40万冊を収容しているという電動書庫を見ることができたのは貴重な経験だった。

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京都府内の各市町村立図書館に向かう資料。撮影 : Asturio Cantabrio

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40万冊を収容する電動集密書庫(でいいのかな?)。撮影 : Asturio Cantabrio

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 真っ白な閉架書庫。撮影 : Asturio Cantabrio

 

執筆作業

その後、14時30分頃から執筆作業に取り掛かる。今回はWikipedia執筆チームが8人、OpenStreetMap編集チームが8人ときれいに分かれたが、初心者はOSMチームに偏り、Wikipediaチームは編集経験の多いベテランが揃った。このためWikipediaチームの8人はそれぞれ気になった部分を選んで個人作業を行い、「粟田神社」(数人が加筆)、「青蓮院」(加筆)、「藤森神社」(加筆)、「花園天皇」(加筆)、「良正院 (知恩院)」(新規作成)が対象となった。

 

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イベントのために用意された文献。撮影 : Asturio Cantabrio

 

私は「粟田神社」の「祭礼」節を強化することとし、府立図書館2階のデータベース(聞蔵&ヨミダス)、『日本歴史地名大系 京都府』、『角川日本地名大辞典 京都市の地名』を用いて約2,500バイトを追加した。その他には粟田神社の位置図を追加している。『京都民俗』という雑誌には粟田神社を主題とする論文があるようだが、この雑誌は京都府図書館には所蔵されておらず、立命館大学/大谷大学/花園大学まで行く必要があるらしい。

途中には京都府図書館の副館長や福島さんも執筆風景をのぞきに来た。約2時間後の16時30分からは成果発表を行う。今回は初心者の多いOSMチームが成果を上げるのに苦戦していたようだった。17時30分からは三条木屋町で懇親会。懇親会の終盤には意外な大物が登場し、(一部の)参加者が盛り上がった。

 

実践会の運営に参加しているわけではないため詳しいことはわからないが、今回のイベントでは是住さんに大きな負担がかかっていたのではないかと感じた。会場関係の手配、街歩きの下見、文献収集、街歩きの引率、バックヤードツアーをほぼ一人でこなしている。是住さんが集めた文献の中には花園天皇陵に関する文献が多かったが、天皇陵が開門していなかったために、今回のイベントではこれらの文献を是住さん以外が使うことはなかった。

今回はある程度知名度のある寺社が対象だったため、Wikipediaチームの新規作成は「良正院 (知恩院)」のみ。既存の記事に加筆した「粟田神社」はそれなりに充実したものの、形ある成果が見えにくい回だった気もする。

 

京都府図書館を会場とすることの大きなメリットに、事前の文献収集が必須ではないことがある。文献を見つける楽しさは、その後の書く作業よりも楽しいという方も多いと思う。Wikipedia ARTSでは事前の文献収集が必須かもしれないが、寺社を対象とするWikipedia Townでは文献探しをイベントに組み込んでも良いと思う。