振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

設楽町民図書館を訪れる

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(写真)設楽町役場の議場・図書館棟。左側の屋根が低い部分が設楽町民図書館。

 

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(地図)愛知県における設楽町の位置。OpenStreetMapより。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

 愛知県北設楽郡設楽町までの所要時間は、車を使えば豊橋からも浜松からも名古屋からも1時間30分前後。公共交通機関では豊鉄バスが田口新城線を運行しており、新城市の中心部(新城市民病院)と旧鳳来町の中心部(本長篠駅)と設楽町の中心部(田口)を1日9往復結んでいます。本長篠駅から田口までのバスの乗車時間は約40分、片道920円。

 バスは途中まで豊川本流の隣の谷を通り、稲目トンネルを抜けてからは豊川本流(海老川)と並行して田口に向かいます。バスは標高80mの本長篠駅前から470mの田口まで400m近くも上ります。田口地区は山間に開けた盆地であるものの、500mほど西側にある豊川本流の谷よりは100m近く高いため、今後設楽ダムが建設されても田口地区は水没せずに済むようです(設楽ダムの完成予想図)。

 

田口地区をあるく

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 Google Mapで設楽町田口地区を見ても建物の形は表示されません。OpenStreetMapは建物まで描かれていますが、2014年に移転した設楽町役場やその脇の都市計画道路が反映されていないのが気になり、OSMサーベイもしつつ図書館を目指すこととしました。バスターミナルの前にある休憩所で田口集落の観光パンフレットをもらい、集落を一周してから設楽町民図書館を訪れました。

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(左)豊鉄バスの田口バスターミナル。(右)バスターミナル前の無料休憩所。

 

 田口地区は伊那街道(現在の国道257号線)に沿って発達した町であり、下流側から「本町」、「栄町」、「大田口」の3つの町に分かれているようです。地図には書かれていないのですが、おそらく “鹿島川に架かる田口橋” と “役場北交差点” が3町の境界だと思われます。バスターミナルや「蓬莱泉」で知られる関谷醸造があるのは「本町」。

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(左)関谷醸造の店舗。(右)関谷醸造の本社蔵。いずれも本町。

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(写真)昭和初期までの田口地区の中心地、本町の中心部にある設楽警察署南交差点。

 

 昭和初期以後に発展したらしい「栄町」には旅館が3軒残っているほか、三菱東京UFJ銀行(新城支店田口特別出張所)があったり、書店が2軒あったりします。設楽町役場は2014年の移転の前も後も「栄町」にあります。

 3町の中でもっとも東側にあるのが「大田口」。商店の数自体は3町の中でもっとも多く、また設楽中学校や田口小学校などがあります。

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(写真)「栄町」バス停付近のカーブを別角度から2枚。

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(左)「栄町」と「大田口」を隔てる役場北交差点。(右)大田口。

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(写真)2001年に設楽町内の3中学校を統合して開校した設楽中学校。設楽町役場と同じく伊藤建築設計事務所の作品で地元産木材が多用されている。

 

 田口地区南部の高台には設楽町三河郷土館があります。田口地区のこの建物は2016年9月末で閉館しており入れませんでしたが、旧田口線の車両はまだ展示されていました。2020年には5km下流の清崎地区に新館が開館する予定です。

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(左)旧田口線の車両。(右)設楽町三河郷土館。この建物は2016年9月に営業を終了。

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田口地区の本屋

 田口地区の「栄町」には本屋が2件ありました。福田寺の参道入口に松屋書店が、三菱東京UFJ銀行東側に福沢書店があります。

 松屋書店は2本の書架と3本の通路を持つこじんまりとした本屋。右側の通路の両側は面展を中心とした絵本のコーナーであり、左側の通路の奥には人文科学と社会科学の本がありました。高齢化率が50%を超える町で絵本を主力にしている点、ほとんど売れないだろう学術書に一定の面積を割いている点には挑戦的な印象を受けました。

 もう片方の福沢書店は三菱東京UFJ銀行の横にありますが、店名の看板が掲げられていないため、Google Mapにも記されていません。地図を見て歩かないと見落とすこと必至の書店です。こちらは成人向け雑誌がかなりの面積を占めており、松屋書店では見かけなかった一般向けのコミック雑誌も多い、よくある地方の本屋という感じです。

 おそらく松屋書店のほうが後発。松屋書店の店主は都市から移り住んできた方なのではないかと思いました。福沢書店に不満があって開店させたのでは。

 

 設楽町役場から徒歩3分の喫茶店「花の樹」でお昼ごはんを食べました。役場職員が愛用する店のようで、奥のテーブルではどこかの部署のミーティングが行われていました。

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(左)松屋書店。OSMでは松下書店と誤記されている。(右)福沢書店。三菱東京UFJ銀行の隣。書店はいずれも栄町。

 

設楽町役場

 田口地区の中心部に位置する設楽町役場は2014年1月竣工。北側の役場棟、西側の議場・図書館棟、東側の子どもセンター棟の3施設からなり、それぞれの入口は別ですが内部ではつながっています。

 図書館内で閲覧した住宅地図によると、1990年までこの場所には設楽町立田口小学校があったそう。移転後には木造の校舎は解体されましたが、鉄筋コンクリート造の特別室校舎は残され、1991年に設楽町民図書館(現在と同名)と教育委員会が特別室校舎内に設けられたようです。

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(写真)設楽町役場の内部。地元産集成材を多用。

 

設楽町民図書館

 ようやく設楽町民図書館に着きました。設楽町役場議場・図書館棟の1/3弱が図書館になっています。土足厳禁の図書館は愛知県では他に見たことがありません。床面積は235m2であり、蔵書数は2013年12月時点で16,000冊だそうです。移転前の床面積は75m2だったようです。北側には一般書が、中央にはカウンターや閲覧席が、南側には児童書があります。

  設楽町民図書館(設楽町民図書館条例)は図書館法でいうところの「図書館」ではないので、日本図書館協会刊行の『日本の図書館』には掲載されていません。ただ、ゼンリン住宅地図をコピーできるかどうか尋ねたら、役場内のコピー機で取って来てくれました。よかったのかな(たぶんよくない)。

 館内の写真撮影について尋ねたら、総務課に内線をかけてくれた上で「まったく問題ない」とのことでした。設楽町公式サイトによる図書館紹介ページには写真などいっさい掲載されていませんので、雰囲気を伝える写真を以下に掲載しました。

 

 設楽町民図書館の正確な利用者数はわかりませんが、『図書館だより』最新号を見ると2017年9月は300人台だったようなので、年間に約4,000人、1日に10-15人といったところでしょうか。この日訪れたのは昼休みの時間帯だったこともあり、90分ほどの間に自分も含めて8人の利用者がいました。

 設楽町の人口は4700人ということで、最近訪れた図書館では浜松市天竜区佐久間地区(旧佐久間町、現在の人口3700人)の浜松市立佐久間図書館と地域性が似ていると思われます。設楽町民図書館は「人口が中心地区に偏っている」「新館」「役場に併設」という要素がありながら、利用者数では佐久間図書館よりやや多い程度で、旧館時代と大して変わらない(推測)というのは気になります。

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(写真)図書館内部。床面積の2/3くらいが見えている。右側がカウンター。

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(左)児童書。(右)一般書。

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(写真)右側は新刊本。左側は愛知県図書館貸出文庫。愛知県図書館から定期的に巡回してくるらしい。

 

 

飛島村図書館を訪れる

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(写真)2013年の飛島村図書館。撮影者 : ぽんぽこ。Wikimedia Commonsより。オリジナルはカーリルに投稿されたもの。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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(地図)名古屋圏における飛島村の位置。OpenStreetMapより。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

 飛島村について

 台風21号が日本に迫っていた2017年10月21日(土)、海部郡飛島村にある飛島村図書館を訪れた。

 さて、この飛島村は愛知県に2つしかない村のひとつ。もうひとつは愛知=静岡=長野三県境にある豊根村であるが、飛島村名古屋市中心部から南西に15kmという近距離にある。居住人口4,400人は豊根村(1,300人)と東栄町(3,800人)に次いで少ないが、昼間人口は13,000人にまで増える。それは村の南部に名古屋港臨海工業地帯を抱えているから。中部電力西名古屋火力発電所三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所川崎重工業などの事業所がある。飛島村は財政力指数で常に全国1位ということでも知られている。

 

飛島村を訪れる

 飛島村鉄道路線は通っていない。近鉄名古屋線近鉄蟹江駅から飛島公共交通バス(コミュニティバス)が毎時1-2本(平日)の頻度で出ている。コミュニティバスとしてはかなりの高頻度だと思われる。

 海部・津島地域において、蟹江町津島市に次いで1889年に町制を施行した歴史ある町。飛島公共交通バスは蟹江町飛島村を結ぶ最短距離を通らず、蟹江川の自然堤防上に築かれたらしい舟入集落を通る。この集落はかつて空襲を受けたらしい。蟹江川、日光川、善太川、宝川と川を渡る。

 亀ヶ地バス停で何人か下りたのが気になったが、このバス停は旧・十四山村(現・弥富市)の中心地に近いようだ。旧・十四山村の住民にとっては、弥富市コミュニティバス弥富駅まで出るよりも、飛島公共交通バスで近鉄蟹江駅まで出る方が名古屋までのアクセスがよい。平成の大合併時には「弥富町蟹江町・十四山村」の2町1村で協議を進めていたものの、蟹江町が離脱して「弥富町・十四山村」の1町1村での合併を余儀なくされた経緯があるらしい。

 近鉄蟹江駅から約20分で飛島村役場に到着した。なお、飛島村には国道23号と伊勢湾岸道が通っており、車を使えば公共交通機関よりも容易に訪れることができる。

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(写真)近鉄蟹江駅に停車中の飛島公共交通バス。

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(地図)飛島村図書館へのアクセス。OpenStreetMapより。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

  地理院地図の色別標高図で飛島村中心部を見てみるとこんな感じ。真っ青。自然堤防上に築かれた集落部分は0mを超えているが、それ以外の部分(農地)は0mから-2mくらい。飛島村役場や飛島村図書館はかつて農地だった場所に建設されているため、役場前の道路にカーソルをあててみると-1.5mという数字が出てくる。役場の建物前には「海抜0m線」と「伊勢湾台風の被災水位線」が示されていた。

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(写真)伊勢湾台風の被災水位が示された飛島村役場。

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(左)飛島村役場。(右)村立小中一貫校の飛島学園。人口4,400人の自治体とは思えないですね。

 

飛島村図書館

 飛島村図書館が入る飛島村すこやかセンターは大規模改修工事の最中で、強い雨が降る悪天候もあって見栄えの悪い写真しか撮れなかった。このエントリーの最上部にある晴天時の写真は、ぽんぽこさんが撮影してカーリルに投稿されたものをWikimedia Commonsに移した。船をモチーフにした外観が印象的で、船の内部には児童書が、奥側には一般書が並べられている。

 他の図書館で調べた結果によると、2016年度の図書資料費は707万円であり、1人あたり図書資料費は1609円/人。全国平均は200円/人強であり、愛知県では断トツのトップ。1人あたり貸出数は16点を超えており、これも愛知県ではトップだ。新着本/準新着本コーナーには過去半年分ほどの購入図書が置かれている。

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(左)飛島村すこやかセンターの全景。正面のモニュメントはクジラがモチーフ。(右)飛島村図書館。

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(写真)飛島村すこやかセンター2階にある飛島村図書館の入口。

 

飛島村図書館について調べる

 さて、いつものように「飛島村図書館」そのものについて調べる。館内の最奥部に地域資料の書架があり、『飛島市史』はすぐに見つかったものの、『図書館概要』各年版が見あたらない。帰ってからOPACを確認すると、18年分が製本された状態(?)でどこかに置いてあったらしい。

 開館前・開館当時の『広報とびしま』は事務室から出してもらった。OPACには出てこないが蔵書扱いになっていないのだろうか。この複合施設は1996年に開館しているが、1995年・1994年頃の『広報とびしま』には抜けが多く、あまり役に立たなかった。

 台風21号の接近中に訪れたこともあって、地域資料の書架にあった伊勢湾台風関連資料をぱらぱらとめくった。飛島村では132人がなくなったそうだ。今年7月に愛知県古文書館で公開された写真などを見ると被害の状況が伝わってくる。1959年の伊勢湾台風からは50年以上が経過しているので、図書館などが所蔵している写真には著作権の保護期間が満了している写真も多いのではないかと思う。

 

 飛島村から帰ってから、中日新聞のデータベースでも飛島村図書館について調べてみる。図書館開館前の1990年、全国の自治体で初めて複製絵画の貸出を開始したのが飛島村だったそうだ。西尾張地方では稲沢市などでも同様の事業を行っている。今では珍しくないサービスだと思うが、発祥地が飛島村だとは知らなかった。

 1997年には14時から16時に限ってインターネットを利用できるサービスを開始したらしい。当時は「同様のサービスを行っている公共図書館は珍しかった」。飛島村は図書館開館当時から書店やレンタルビデオ店がない自治体。インターネットが使える、雑誌の最新号が発売日に読める、視聴覚資料を借りられるというのは重要だ。

 1997年には村内の中部電力西名古屋火力発電所内に企業文庫が設けられたという記事も興味深い。団体貸出制度で常に200冊を常備した上で、企業文庫内に業務用移動端末機を持ち込んで貸出・返却処理を行ったという。このように1990年代には飛島村図書館を取り上げた新聞記事がいくつか出てくるが、2000年代以降にはめぼしい記事がない。

 

写真撮影について

 カウンターには赤色のエプロン姿の女性職員が4人、カウンターからも見える事務室には白シャツにネクタイの男性職員が2人いた。カウンターで写真撮影について聞いてみたところ、対応してくれた職員は「利用者が入らなければいいのではないか」と言いかけてやめ、事務室の職員に可否を尋ねてくれたが、「写真撮影したいという利用者がいますが、写真撮影はだめですよね?」「ええ」というやり取りが聞こえてきた。図書館として明確な規定を定めているのではなく、職員の裁量による判断に聞えたが、どうだろう。

 

複写について

 町村立図書館では職員しかコピー機を触れない図書館も多いと思われるが、飛島村図書館のコピー機は利用者自身が操作できるし、図書館でもっともよく見かける富士ゼロックス製のコピー機には拡大縮小や集約などの機能が付いている。が、コピー機には「拡大・縮小はできません(著作権法)」という注意書きが貼ってあった。

 まさか「著作権法で定められている」などと言われるのではないか気になったので聞いてみたら、案の定「コピー機で拡大・縮小ができないことは著作権法で定められている」と言われた。カウンターの女性職員と事務室の男性職員には同じことを言われたので、この図書館ではこの解釈で長らく対応してきたのだろう。うむ。なるほど。なお、コピー機の前には男性職員2人分の図書館等職員著作権実務講習会修了証が誇らしげに飾ってあった。

 

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 これまでに訪れた図書館の一覧はこちら。飛島村図書館は館内での写真撮影が不可だったので、青色/黄色/赤色/灰色のうち赤色でポイントしました。外観の写真は掲載しています。

drive.google.com

 

北名古屋市立図書館を訪れる

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(左)北名古屋市東図書館が入る複合施設。(右)北名古屋市西図書館が入る複合施設。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける文章は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 (CC BY-SA 4.0) の下に提供されています。著者は「Asturio Cantabrio」です。個人利用に限って写真撮影を可能とする北名古屋市歴史民俗資料館の規定に則り、写真はCCライセンスで提供していません。他のエントリーとは異なりますのでご注意ください。図書館外観などの写真は「Category:Aisai City Library - Wikimedia Commons」にアップロードしています。

 

 北名古屋市について

 北名古屋市西春日井郡師勝町(43,000人、8.4km2)と西春町(34,000人、10km2)とが2006年に合併してできた自治体。私の住んでいる西三河地方で「平成の大合併」というと、中心都市が周辺の小規模自治体を吸収する編入合併ばかりだった。尾張地方は規模の似通った自治体の合併が多い。

 名古屋市西区の小田井から岩倉市江南市を経て犬山市に向かう岩倉街道(名古屋市山田図書館による資料)、岩倉街道に並行する名鉄犬山線沿線にあり、ざっくり言うと街道/線路の東側が旧・師勝町、西側が旧・西春町だった。そういえば名古屋市山田図書館では「ウィキペディアタウン名古屋小田井~山田の魅力を再発見!~」を開催するそうですが、何をテーマに歩くのかな。

 北名古屋市の人口は合併後も増え続けており、2015年国勢調査では84,000人となった。2016年の市民アンケートでは名古屋市との合併を望む声が大きく、北名古屋市の市長は合併を視野に入れるとする発言をしている。なお、2017年には隣接する清須市長選挙でも名古屋市との合併が争点の一つとなったが、「合併も重要な選択肢」と積極姿勢を見せた候補は破れ、「合併には反対ではない」とする候補が勝利した。

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(地図)名古屋圏における北名古屋市の位置。OpenStreetMapより。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

旧・師勝町を訪れる

 旧・西春町の北名古屋市西図書館を訪れたのは2016年12月。どうせ館内の写真を掲載できないので今回は西図書館を紹介しません。

 旧・師勝町北名古屋市東図書館を訪れたのはこの2017年10月。東図書館は北名古屋市役所東庁舎に隣接しており、これらの施設の脇にある田んぼでは案山子コンテストが開催されていた。2016年は北名古屋市の市制施行10周年の年であり、記念行事の一環でこの田んぼを田んぼアートに使用した。田んぼアート事業は今年も引き継がれ、7月・8月頃が見ごろだったとか。この10月15日には稲刈りを予定していたそうだけど、当日は悪天候で圃場の状態も悪く、10月22日が衆院選投開票日となったことで順延もできずに中止となったらしい。(参考

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(写真)「案山子コンテスト」のエントリー作品。奥が北名古屋市役所。左の写真のスーツの男性を見ると「かかしの定義」について考えたくなる。右の写真のうなだれている若者は「シュートを打つバスケットボール選手」だそうです。

 

北名古屋市歴史民俗資料館

 図書館の建物入口には「北名古屋市東図書館」と「北名古屋市歴史民俗資料館」が併記してある。まずは歴史民俗資料館を見学してみる。なお、この資料館は入場無料であり、「個人利用に限って写真撮影が可能」です。

 図書館は1階。地下1階の一部、2階の一部、3階が資料館となっており、メインの展示室は3階にある。「1950年代-80年代」をテーマとする3階には昭和時代の生活用具や玩具が集められている。説明書きは最小限に、展示物そのものに焦点を当てた展示がなされている。展示物は回想法を利用した福祉事業にも利用しているのだとか。

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(写真4枚)3階の資料館。

 

 驚いたのは資料館の地下1階部分。「1960年代-70年代」がテーマらしく、市内在住の実業家から寄贈を受けた車11台・二輪16台が駐車場の一角にある車両展示コーナーに展示されている。1年前の2016年10月8日に開設されたばかり。資料館全体の目玉にしてもよいコーナーに思えるが、公式サイトでのPRはとても控えめ。

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(右)マツダ・K360 - Wikipedia

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(左)スバル・サンバートラック - Wikipedia。(右)トヨタ・クラウン - Wikipedia日産・セドリック - Wikipedia

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(左)日産・ブルーバード - Wikipedia。(右)スバル・360 - Wikipedia

 

 

北名古屋市の図書館

 2006年の北名古屋市発足後、師勝町立図書館が北名古屋市東図書館に、西春町立図書館が北名古屋市西図書館に改称した。どちらも1990年代前半の開館(師勝は1990年、西春は1992年)であり、3階建ての複合施設の一角という点も同じであるが、図書館に対する考え方は大きく違ったのだろう。

 師勝町立図書館/東図書館は、建物全体の延床面積5,800m2のうち3,000m2が図書館であり、収容能力は開架9万冊・閉架11万冊の計20万冊。一方の西春町立図書館/西図書館は、延床面積5,200m2のうち図書館部分は840m2だけ。収容能力は開架6.5万冊・閉架1.5万冊の計8万冊。師勝町立図書館/東図書館は建物の1階部分にあるが、西春町立図書館/西図書館はエレベーターで3階に上がる必要がある。

 東図書館と西図書館の規模には2倍以上の差があるものの、北名古屋市は明確な中央館を定めていない。事業年報の記述だけでははっきりしないものの、おそらく両館に館長がおり、両館の雰囲気はかなり異なっている。東図書館は充実した蔵書数や座席数を武器にして、展示や特設コーナーには無関心といった様子。一方の西図書館はにぎやかなポップ広告で図書の紹介に力を入れていることがはっきり伝わってくる。
 写真撮影に対する対応も異なっていた。東図書館では(正規職員の方に)「人が写らなければOK。職員が撮影に同行する。SNS等にはアップしないでほしい」という対応だったが、西図書館では(おそらく正規職員の方に)「写真撮影は禁止している」とはっきり言われた。このため本ブログには館内の写真を掲載していない。

 『広報北名古屋』は合併後の全号を、『図書館年報』は最新号を公式サイトで公開してくれているのだけれど、郷土資料が両館に分かれているのは悩ましい。例えば『広報にしはる』や『西春の教育』は西図書館にしかなく、『広報しかつ』や『師勝の教育』は東図書館にしかない。北名古屋市図書館についてざっくり調査したかったら2つの図書館を行き来しないといけない。

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(地図)北名古屋市における図書館の位置。OpenStreetMapより。作者 : OpenStreetMap contributor。

愛西市中央図書館を訪れる

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(写真)愛西市中央図書館。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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愛西市を訪れる

 愛知県でもっとも三重県よりにある海部・津島地域(旧・海部郡域)の中心都市は人口約6万人の津島市。その他は小規模な町村ばかりだったが、平成の大合併によって愛西市弥富市あま市が誕生した。 人口3万人の佐屋町、2万3000人の佐織町、8000人の立田村、5000人の八開村の2町2村が2005年に合併してできたのが、人口6万2000人の愛西市 - Wikipedia。現在は3館の図書館がある。旧・佐屋町佐屋町立図書館が愛西市中央図書館に移行したほか、旧・佐織町佐織町公民館図書室が愛西市佐織図書館に、旧・立田村立田村公民館図書室が愛西市立田図書館に昇格した。旧・八開村には図書館も図書室も存在しない。

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(地図)名古屋圏における愛西市の位置。OpenStreetMapより。作者 : OpenStreetMap contributor。

 

旧・佐屋町の図書館

 旧・佐屋町は合併時点で人口3万人の町だったとはいえ、1966年から独立館を有していた。この初代佐屋町立図書館は実業家の杉野繁一 - Wikipediaの寄付によって建てられたため、佐屋町立杉野図書館と命名された。杉野は建築家としても活動していたが、自ら杉野図書館の設計を担当したわけではないようだ。同じ1966年には尾張地方の中心都市である一宮市一宮市立豊島図書館が開館した。こちらも実業家の四代目豊島半七の寄付金によって建てられた図書館であり、2013年の現行館(一宮市立中央図書館)開館後も建物は現存している。

 1994年には杉野図書館が閉館し、1995年には旧館の東側に現行館(佐屋町立図書館)が開館した。杉野図書館はこの際に取り壊されたらしい。現行館の延床面積は2,000m2だが、人口3万人の町が1990年代に建設した図書館としては外観も内部も立派。建物中央部のドームは1991年開館の東浦町中央図書館に、上部の塔屋は1992年開館の長久手町中央図書館(現・長久手市中央図書館)に似ている。

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(写真)1966年の開館当時の佐屋町立杉野図書館。当時の『広報佐屋町だより』から。

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参考。(左・中)1991年開館の東浦町中央図書館。(右)1992年開館の長久手市中央図書館。

 

 

 2階(一般書)

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 東浦町中央図書館と同じように、中央部は天井まで吹き抜けており、図書館に入るとまず2階に上がりたくなる。赤い手すりやカーペット、吹き抜け壁面の黄色のせいもあって、吹き抜けの周囲はとても明るく感じる。この色づかいは開館から22年経った現在でも新鮮に感じる。

 東浦町中央図書館と同じく、大きなガラスで光を取り込んでいる窓際には座って本を読むための席が配置されているが、照明を落としていて薄暗いと感じるエリアもあった。2階の裏手には加藤高明と杉野繁一の常設コーナーがある。1924年普通選挙法と治安維持法を同時に成立させた加藤高明尾張国海東郡佐屋(現・愛西市)出身。佐屋駅の北西にある佐屋代官所址には「加藤高明懐恩碑」があるらしい。

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(写真)2階の吹き抜け付近。

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 (左)文芸書。横積みが多い。(右)236の定点観測。20冊も開架。

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 (左)加藤高明と杉野繁一コーナー。(右)学習室/会議室。

 

1階(地域資料・児童書・新聞雑誌)

 1階中央部は展示スペース。カウンターから展示スペースを挟んで対角には児童書エリアがある。入口から展示スペースを挟んで対角には新聞・雑誌やAVコーナーが。その脇、1階の最奥部には参考図書・地域資料室がある。

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(写真)雑誌コーナー。(右)CDコーナー。

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(写真)児童書。

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(写真)参考図書・地域資料室。

 

 この2017年4月には愛西市中央図書館に指定管理者制度が導入された。津島市立図書館 - Wikipediaでも指定管理者を務めているNPO法人まちづくり津島が指定管理者となり、まずは目に見える図書館サービスとして以下のことを行った。自治体としては経費を削減して利用者数を増やせればいいくらいに思っているのだろうけど、津島市立図書館における地域資料の収集・公開の取組みはすごい。愛西市中央図書館の変化も楽しみにしている。

・開館時間を「9時-17時(夏季は9時-18時)」から「9時-18時」に変更

・祝日を「休館」から「開館」に変更

・年末年始の休館日を「8日間」(12/28-1/4)から「6日間」(12/29-1/3)に短縮

・市外の名鉄津島駅返却ポストを設置

 

 指定管理者導入後の5月には歴史・文化講座「市内名所旧跡まち歩き」の第1弾として「佐屋街道を歩く」を開催したらしく、この11月19日には第2弾として「勝幡城址と津島上街道」を開催するらしい。いずれも講師を務めるのは「あいさいボランティアガイドの会」。定期的なまちあるきイベントを開催している団体ではないらしいが気になる。

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(写真)撮影許可証。申請書の記入は必要ない。

 

帰る

 往路は佐屋駅から愛西市中央図書館まで歩いたが、復路は図書館から日比野駅まで歩いた。図書館の東側にある愛西市役所は2016年に建て替えたばかりらしく、水田も多い旧・佐屋町域で異様な存在感を放っている。近くに置かれていたパトカーもどきには3体の人形が乗せられていて気味が悪かった。

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(写真)2016年竣工の愛西市役所。

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(写真)人形が不気味な「愛西パトロール号」。

 

 

 これまでに訪れた図書館の一覧はこちら。愛西市中央図書館は特に制限なく写真撮影が可能だったので、青色/黄色/赤色/灰色のうち青色でポイントし、「外観の写真」「内部の写真」の2枚を掲載しました。

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